韓国民法の私訳18(第928条~第996条)

 今回は、韓国の民法第4編親族のうち「第5章 後見」及び「第7章 扶養」にある第928条から第959条の20まで及び974条から第979条までの条文が私訳の対象です。なお、第6章(第960条から第973条まで)及び第8章(第980条から第996条まで)は、すべて削除となっています。

 なお、第5章後見では、未成年後見成年後見、限定後見(≒保佐)及び特定後見(≒補助)の制度のほか、日本では「任意後見契約に関する法律」(対応条文を掲げるときは「任意後見法」と略称)という特別法で定められている後見契約も民法上の制度として規定されています。

 

    第5章 後見

     第1節 未成年後見及び成年後見

      第1款 後見人

 (未成年者に対する後見の開始)0838
第928条 未成年者に親権者がない場合又は第924条、第924条の2、第925条又は第927条第1項の規定により親権の全部又は一部を行使することができない場合は、未成年後見人を置かなければならない。
 (成年後見審判による後見の開始)0838
第929条 家庭裁判所成年後見開始の審判がある場合は、その審判を受けた者の成年後見人を置かなければならない。
 (後見人の数と資格)
第930条 未成年後見人の数は、1人とする。
2 成年後見人は、被成年後見人の身上及び財産に関するすべての事情を考慮して、数名を置くことができる。
3 法人も、成年後見人になることができる。 
 (遺言による未成年後見人の指定等)0839
第931条 未成年者に親権を行使する父母は、遺言で未成年後見人を指定することができる。ただし、法律行為の代理権及び財産の管理権がない親権者は、この限りでない。
2 家庭裁判所は、前項の規定により未成年後見人が指定された場合であっても、未成年者の福利のために必要なときは、生存する父若しくは母又は未成年者の請求により、後見を終了し、生存する父又は母を親権者に指定することができる。
 (未成年後見人の選任)0840:0841
第932条 家庭裁判所は、前条の規定により指定された未成年後見人がない場合は、職権で又は未成年者、親族、利害関係人、検察官若しくは地方自治団体の長の請求により、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けた場合も、同様とする。
2 家庭裁判所は、第924条、第924条の2及び第925条の規定による親権の喪失、停止若しくは制限の宣告又は法律行為の代理権及び財産の管理権の喪失の宣告により未成年後見人を選任する必要がある場合は、職権で未成年後見人を選任する。
3 親権者が代理権及び財産の管理権を辞退した場合は、遅滞なく、家庭裁判所に、未成年後見人の選任を請求しなければならない。

第933条から第935条まで 削除

 成年後見人の選任)0843
第936条 第929条の規定による成年後見人は、家庭裁判所が職権で選任する。
2 家庭裁判所は、成年後見人が死亡、欠格その他の事由により欠けた場合も、職権で又は被成年後見人、親族、利害関係人、検察官若しくは地方自治団体の長の請求により、成年後見人を選任する。
3 家庭裁判所は、成年後見人が選任されている場合においても、必要があると認めるときは、職権で又は前項の規定による請求権者若しくは成年後見人の請求により、更に成年後見人を選任することができる。
4 家庭裁判所成年後見人を選任するときは、被成年後見人の意思を尊重しなければならず、また、被成年後見人の健康、生活関係及び財産状況、成年後見人になる者の職業及び経験並びに被成年後見人との利害関係の有無(法人が成年後見人になるときは、事業の種類及び内容並びに法人又はその代表者と被成年後見人との間の利害関係の有無をいう。)等の事情も考慮しなければならない。
 (後見人の欠格事由)0847
第937条 次のいずれかに該当する者は、後見人になることができない。
 (1)未成年者
 (2)被成年後見人、被限定後見人、被特定後見人、被任意後見人
 (3)更生手続開始の決定又は破産宣告を受けた者
 (4)資格停止以上の刑の宣告を受け、その刑期中にある者
 (5)裁判所で解任された法定代理人
 (6)裁判所で解任された成年後見人、限定後見人、特定後見人、任意後見人及びそれらの監督人
 (7)行方が知れない者
 (8)被後見人を相手方に訴訟をしたことのある者又は訴訟をしている者
 (9)前号に定める者の配偶者及び直系血族。ただし、被後見人の直系卑属は、除く。
 (後見人の代理権等)
第938条 後見人は、被後見人の法定代理人になる。
2 家庭裁判所は、成年後見人が前項の規定により有する法定代理権の範囲を定めることができる。
3 家庭裁判所は、成年後見人が被成年後見人の身上に関して決定することができる権限の範囲を定めることができる。
4 第2項及び前項の規定による法定代理人の権限の範囲が適切でなくなった場合において、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等以内の親族、成年後見人、成年後見監督人、検察官又は地方自治団体の長の請求により、その範囲を変更することができる。
 (後見人の辞任)0844:0845
第939条 後見人は、正当な事由がある場合は、家庭裁判所の許可を得て、辞任することができる。この場合において、その後見人は、辞任の請求と同時に家庭裁判所に新しい後見人の選任を請求しなければならない。
 (後見人の変更)0846
第940条 家庭裁判所は、被後見人の福利のために後見人を変更する必要があると認めるときは、職権で又は被後見人、親族、後見監督人、検察官若しくは地方自治団体の長の請求により、後見人を変更することができる。

      第2款 後見監督人

 (未成年後見監督人の指定)0848
第940条の2 未成年後見人を指定することができる者は、遺言で未成年後見監督人を指定することができる。 
 (未成年後見監督人の選任)0849
第940条の3 家庭裁判所は、前条の規定により指定された未成年後見監督人が欠けた場合において必要と認めるときは、職権で又は未成年者、親族、未成年後見人、検察官若しくは地方自治団体の長の請求により、未成年後見監督人を選任することができる。
2 家庭裁判所は、未成年後見監督人が死亡、欠格その他の事由により欠けた場合は、職権で又は未成年者、親族、未成年後見人、検察官若しくは地方自治団体の長の請求により、未成年後見監督人を選任する。
 (成年後見監督人の選任)0849
第940条の4 家庭裁判所は、必要と認めるときは、職権で又は被成年後見人、親族、成年後見人、検察官若しくは地方自治団体の長の請求により、成年後見監督人を選任することができる。
2 家庭裁判所は、成年後見監督人が死亡、欠格その他の事由により欠けるに至った場合は、職権で又は被成年後見人者、親族、成年後見人、検察官若しくは地方自治団体の長の請求により、成年後見監督人を選任する。
 (後見監督人の欠格事由)0850
第940条の5 第799条の規定による後見人の家族は、後見監督人になることができない。
 (後見監督人の職務)0851
第940条の6 後見監督人は、後見人の事務を監督し、後見人が欠けた場合には、遅滞なく家庭裁判所に後見人の選任を請求しなければならない。
2 後見監督人は、被後見人の身上又は財産について急迫な事情がある場合は、その保護のために必要な行為又は処分をすることができる。
3 後見人と被後見人との間に利益が相反する行為については、後見監督人が被後見人を代理する。
 (委任及び後見人の規定の準用)0852
第940条の7 後見監督人ついては、第681条、第691条、第692条、第930条第2項及び第3項、第936条第3項及び第4項、第937条、第939条、第940条、第947条の2第3項から第5項まで、第949条の2、第955条並びに第955条の2の規定を準用する。

      第3款 後見人の任務

 (財産の調査及び目録の作成)0853
第941条 後見人は、遅滞なく被後見人の財産を調査し、2箇月内にその目録を作成しなければならない。ただし、正当な事由がある場合は、裁判所の許可を得て、その期間を延長することができる。
2 後見監督人がある場合において、前項の規定による財産の調査及び目録の作成は、後見監督人の参与がなければ、効力を有しない。
 (後見人の債権債務の提示)0855
第942条 後見人と被後見人との間に債権債務の関係がある場合において、後見監督人があるときは、後見人は、財産の目録の作成を完了する前に、その内容を後見監督人に提示しなければならない。
2 後見人が、被後見人に対して債権を有することを知りながら、前項の規定による提示を怠った場合は、その債権を放棄したものとみなす。
 (目録の作成前の権限)0854
第943条 後見人は、財産の調査及び目録の作成を完了するまでは、緊急に必要な場合でなければ、その財産に関する権限を行使することができない。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
 (被後見人が取得した包括的財産の調査等)0856
第944条 前3条の規定は、後見人の就任後に被後見人が包括的財産を取得した場合について準用する。
 (未成年者の身分に関する後見人の権利義務)0857
第945条 未成年後見人は、第913条から第915条までに規定する事項について、親権者と同一の権利及び義務を有する。ただし、次のいずれかに該当する場合において、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。
 (1)親権者が定めた教育の方法、養育の方法又は居所を変更する場合
 (2)未成年者を感化機関又は矯正機関に委託する場合
 (3)親権者が許可した営業を取り消し、又は制限する場合
 (親権の一部に限定された後見)0868
第946条 未成年者の親権者が第924条の2、第925条又は第927条第1項の規定により親権の一部を行使することができない場合は、未成年後見人の任務は、制限された親権の範囲に属する行為に限定される。
 (被成年後見人の福利及び意思の尊重)0858
第947条 成年後見人は、被成年後見人の財産の管理及び身上の保護をするときは、諸事情を考慮し、その福利に合致する方法で事務を処理しなければならない。この場合において、成年後見人は、被成年後見人の福利に反しないときは、被成年後見人の意思を尊重しなければならない。
 (被成年後見人の身上の決定等)0859の3
第947条の2 被成年後見人は、自身の身上について、その状態が許す範囲において、単独で決定する。
2 成年後見人は、被成年後見人を治療等の目的で精神病院その他の場所に隔離しようとする場合は、家庭裁判所の許可を得なければならない。
3 被成年後見人の身体を侵害する医療行為について被成年後見人が同意することができない場合は、成年後見人がそれに代わって同意することができる。
4 前項の場合において、被成年後見人が医療行為の直接的な結果として死亡し、又は相当な障害を負う危険があるときは、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、許可の手続により医療行為が遅滞して、被成人後見人の生命に危険を招き、又は心身に重大な障害を招くときは、事後に許可を請求することができる。
5 成年後見人は、被成年後見人を代理して被成年後見人が居住している建物又はその敷地について、売渡、賃貸、伝貰権の設定、抵当権の設定、賃貸借の解除、伝貰権の消滅その他これらに準じる行為をする場合は、家庭裁判所の許可を得なければならない。
 (未成年者の親権の代行)0867
第948条 未成年後見人は、未成年者に代わって、未成年者の子に対する親権を行使する。
2 前項の規定による親権の行使については、未成年後見人の任務に関する規定を準用する。
 (財産の管理権及び代理権)0859
第949条 後見人は、被後見人の財産を管理し、その財産に関する法律行為について被後見人を代理する。
2 第920条ただし書の規定は、前項の法律行為について準用する。
 (成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)0859の2-01.02
第949条の2 家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が共同して、又は事務を分掌してその権限を行使できるように定めることができる。
2 家庭裁判所は、職権で、前項の規定による決定を変更し、又は取り消すことができる。
3 数人の成年後見人が共同で権限を行使しなければならない場合において、他の成年後見人が、被成年後見人の利益が侵害されるおそれがあるにもかかわらず、法律行為の代理等必要な権限の行使に協力しないときは、家庭裁判所は、被成年後見人、成年後見人、後見監督人又は利害関係人の請求により、その成年後見人の意思表示に代わる裁判をすることができる。
 (利益相反行為0860
第949条の3 後見人については、第921条の規定を準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。
 (後見監督人の同意を要する行為)0864:0865
第950条 後見人は、被後見人を代理して次のいずれかに該当する行為をし、又は未成年者の次のいずれかに該当する行為について同意をする場合において、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。
 (1)営業に関する行為
 (2)金銭を借りる行為
 (3)義務のみを負担する行為
 (4)不動産又は重要な財産に関する権利の得喪変更を目的とする行為
 (5)訴訟行為
 (6)相続の承認、限定承認若しくは放棄又は相続財産の分割に関する協議
2 後見監督人の同意を要する行為について、被後見人の利益が侵害されるおそれがあるにもかかわらず、後見監督人が同意をしない場合にあっては、家庭裁判所は、後見人の請求により、後見監督人の同意に代わる許可をすることができる。
3 後見監督人の同意を要する法律行為を後見人が後見監督人の同意なく行ったときは、被後見人又は後見監督人は、その行為を取り消すことができる。
 (被後見人の財産等の譲受けに対する取消し)0866-01前段
第951条 後見人が被後見人に対する第三者の権利を譲り受ける場合は、被後見人は、これを取り消すことができる。
2 前項の規定による権利の譲受けの場合において、後見監督人があるときは、後見人は、後見監督人の同意を得なければならず、その同意がないときは、被後見人又は後見監督人は、これを取り消すことができる。
 (相手方の追認の可否の催告)0865-01後段:0866-01後段
第952条 第950条及び前条の場合については、第15条の規定を準用する。
 (後見監督人の後見事務の監督)0863-01
第953条 後見監督人は、いつでも、後見人に対しその任務の遂行に関する報告及び財産の目録の提出を要求し、又は被後見人の財産状況を調査することができる。
 (家庭裁判所の後見事務に関する処分)0863-02
第954条 家庭裁判所は、職権で又は被後見人、後見監督人、第777条の規定による親族その他の利害関係人、検察官若しくは地方自治団体の長の請求により、被後見人の財産状況を調査し、又は財産の管理等の後見の任務の遂行について後見人に必要な処分を命じることができる。
 (後見人の報酬)0862
第955条 裁判所は、後見人の請求により、被後見人の財産状態その他の事情を参酌して、被後見人の財産の中から相当な報酬を後見人に与えることができる。
 (支出金額の予定及び事務費用)0861-02
第955条の2 後見人が後見の事務を遂行するために必要な費用は、被後見人の財産の中から支払う。 
 (委任及び親権の規定の準用)0869
第956条 第681条及び第918条の規定は、後見人について準用する。

      第4款 後見の終了

 (後見事務の終了及び管理の計算)0870:0871
第957条 後見人の任務が終了したときは、後見人又はその相続人は、1箇月内に被後見人の財産に関する計算をしなければならい。ただし、正当な事由がある場合は、裁判所の許可を得て、その期間を延長することができる。
2 前項の規定による計算は、後見監督人がある場合はその参与がなければ、効力を有しない。

 (利子の付加及び金銭消費に対する責任)0873
第958条 後見人が被後見人に支払うべき金額又は被後見人が後見人に支払うべき金額については、計算の終了の日から利息を付さなければならない。
2 後見人は、自己のために被後見人の金銭を消費したときは、その消費した日から利息を付し、なお被後見人に損害があるときは、これを賠償しなければならい。
 (委任規定の準用)0874
第959条 第691条、第692条の規定は、後見の終了について準用する。

     第2節 限定後見及び特定後見

 (限定後見の開始)0876の2-01
第959条の2 家庭裁判所の限定後見開始の審判がある場合は、その審判を受けた者の限定後見人を置かなければならない。
 (限定後見人の選任等)0876の2-02.03
第959条の3 前条の規定による限定後見人は、家庭裁判所が職権で選任する。
2 限定後見人については、第930条第2項及び第3項、第936条第2項から第4項まで、第937条、第939条、第940条並びに第949条の3の規定を準用する。
 (限定後見人の代理権等)0876の4-01.03
第959条の4 家庭裁判所は、限定後見人に代理権を与える審判をすることができる。
2 限定後見人の代理権等については、第938条第3項及び第4項の規定を準用する。
 (限定後見監督人)0876の3
第959条の5 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、職権で又は被限定後見人、親族、限定後見人、検察官若しくは地方自治団体の長の請求により、限定後見監督人を選任することができる。
2 限定後見監督人については、第681条、第691条、第692条、第930条第2項及び第3項、第936条第3項及び第4項、第937条、第939条、第940条、第940条の3第2項、第940条の5、第940条の6、第947条の2第3項から第5項まで、第949条の2、第955条並びに第955条の2の規定を準用する。この場合において、第940条の6第3項中「被後見人を代理する」とあるのは、「被限定後見人を代理し、又は被限定後見人がその行為をすることに同意する」と読み替えるものとする。
 (限定後見の事務)0876の5-01.02
第959条の6 限定後見の事務については、第681条、第920条ただし書、第947条、第947条の2、第949条、第949条の2、第949条の3及び第950条から第955条の2までの規定を準用する。
 (限定後見人の任務の終了等)0876の5-03
第959条の7 限定後見人の任務が終了した場合については、第691条、第692条、第957条及び第958条の規定を準用する。
 (特定後見による保護措置)
第959条の8 家庭裁判所は、被特定後見人の援助のために必要な処分を命じることができる。
 (特定後見人の選任等)0876の7-01
第959条の9 家庭裁判所は、前条の処分により被特定後見人を援助し、又は代理するための特定後見人を選任することができる。
2 特定後見人については、第930条第2項及び第3項、第936条第2項から第4項まで、第937条、第939条並びに第940条の規定を準用する。
 (特定後見監督人)0876の8
第959条の10 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、職権で又は被特定後見人、親族、特定後見人、検察官若しくは地方自治団体の長の請求により、特定後見監督人を選任することができる。
2 特定後見監督人については、第681条、第691条、第692条、第930条第2項及び第3項、第936条第3項及び第4項、第937条、第939条、第940条、第940条の5、第940条の6、第949条の2、第955条並びに第955条の2の規定を準用する。
 (特定後見人の代理権)0876の9
第959条の11 被特定後見人の援助のために必要と認めるときは、家庭裁判所は、期間又は範囲を定めて、特定後見人に代理権を与える審判をすることができる。
2 前項の場合において、家庭裁判所は、特定後見人の代理権の行使について家庭裁判所又は特定後見監督人の同意を得るように命じることができる。
 (特定後見の事務)0876の10-01
第959条の12 特定後見の事務については、第681条、第920条ただし書、第947条、第949条の2、第953条から第955条まで及び第955条の2の規定を準用する。
 (特定後見人の任務の終了等)0876の10-02
第959条の13 特定後見人の任務が終了した場合については、第691条、第692条、第957条及び第958条の規定を準用する。

     第3節 後見契約

 (後見契約の意義と締結方法等)任意後見法2条:3条:6条
第959条の14 後見契約は、疾病、障害、老齢その他の事由による精神的制約により事務を処理する能力が不足する状況にあり、又は不足するに至る状況に備え、自身の財産の管理及び身上の保護に関する事務の全部又は一部を他の者に委託し、その委託事務について代理権を与えることを内容とする。
2 後見契約は、公正証書により締結しなければならない。
3 後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が発生する。
4 家庭裁判所、任意後見人、任意後見監督人等は、後見契約を履行し、及び運用するに際しては、本人の意思を最大限に尊重しなければならない。
 (任意後見監督人の選任)任意後見法4条:5条
第959条の15 家庭裁判所は、後見契約が登記されている場合において、本人の事務を処理する能力が不足する状況にあると認めるときは、本人、配偶者、4親等以内の親族、任意後見人、検察官又は地方自治団体の長の請求により、任意後見監督人を選任する。
2 前項の場合において、本人でない者の請求により家庭裁判所が任意後見監督人を選任するときは、あらかじめ本人の同意を得なければならない。ただし、本人が意思を表示することができないときは、この限りでない。
3 家庭裁判所は、任意後見監督人が欠けた場合は、職権で又は本人、親族、任意後見人、検察官若しくは地方自治団体の長の請求により、任意後見監督人を選任する。
4 家庭裁判所は、任意後見監督人が選任された場合において必要と認めるときは、職権で又は前項の請求権者の請求により、任意後見監督人を更に選任することができる。
5 任意後見監督人については、第940条の5の規定を準用する。
 (任意後見監督人の職務等)任意後見法7条
第959条の16 任意後見監督人は、任意後見人の事務を監督し、その事務について家庭裁判所に定期的に報告しなければならない。
2 家庭裁判所は、必要と認めるときは、任意後見監督人に対し、監督事務について報告を要求することができ、任意後見人の事務又は本人の財産状況について調査を命じ、その他任意後見監督人の職務について必要な処分を命じることができる。
3 任意後見監督人については、第940条の6第2項及び第3項、第940条の7並びに第953条の規定を準用する。 
 (任意後見開始の制限等)任意後見法8条
第959条の17 任意後見人が、第937条各号に該当する者又はその他に著しい非行をし、若しくは後見契約で定めた任務に適合しない事由がある者である場合は、家庭裁判所は、任意後見監督人を選任しない。
2 任意後見監督人を選任した以後において、任意後見人が著しい非行をし、その他その任務に適合しない事由が生じた場合は、家庭裁判所は、任意後見監督人、本人、親族、検察官又は地方自治団体の長の請求により、任意後見人を解任することができる。
 (後見契約の終了)任意後見法9条
第959条の18 任意後見監督人の選任前においては、本人又は任意後見人は、いつでも公証人の認証を得た書面により後見契約の意思表示を撤回することができる。
2 任意後見監督人の選任以後においては、本人又は任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、後見契約を終了することができる。
 (任意後見人の代理権の消滅と第三者との関係)任意後見法11条
第959条の19 任意後見人の代理権の消滅は、登記をしなければ、善意の第三者に対抗することができない。
 (後見契約と成年後見、限定後見及び特定後見との関係)任意後見法10条
第959条の20 後見契約が登記されている場合は、家庭裁判所は、本人の利益のために特に必要なときに限り、任意後見人又は任意後見監督人の請求により、成年後見、限定後見又は特定後見の開始の審判をすることができる。この場合において、後見契約は、本人が成年後見又は限定後見の開始の審判を受けたときに終了する。
2 本人が被成年後見人、被限定後見人又は被特定後見人である場合において、家庭裁判所が任意後見監督人を選任するときは、従前の成年後見、限定後見又は特定後見の終了の審判をしなければならない。ただし、成年後見又は限定後見の措置の継続が本人の利益のために特に必要と認めるときは、家庭裁判所は、任意後見監督人を選任しない。

    第6章 削除

第960条から第973条まで 削除

    第7章 扶養

 (扶養義務)0877
第974条 次の親族は、互いに扶養の義務がある。
 (1)直系卑属とその配偶者との間
 (2)削除
 (3)その他の親族間(生計を同じくしている場合に限る。)
 (扶養の義務と生活能力)
第975条 扶養の義務は、扶養を受ける者が自己の資力又は勤労により生活を維持することができない場合に限り、これを履行する責任がある。
 (扶養の順位)0878
第976条 扶養の義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順位について当事者間に協定がないときは、裁判所は、当事者の請求により、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養の義務のある者の資力がその全員を扶養することができないときも、同様とする。
2 前項の場合において、裁判所は、数人の扶養の義務のある者又は扶養の権利のある者を選定することができる。
 (扶養の程度及び方法)0879
第977条 扶養の程度又は方法について当事者間に協定がないときは、裁判所は、当事者の請求により、扶養を受ける者の生活の程度、扶養義務者の資力その他諸般の事情を参酌して、これを定める。
 (扶養関係の変更又は取消し)0880
第978条 扶養をすべき者又は扶養を受ける者の順位、扶養の程度又は方法に関する当事者の協定又は裁判所の判決があった後これに関する事情の変更があるときは、裁判所は、当事者の請求により、その協定又は判決を取り消し、又は変更することができる。
 (扶養請求権の処分の禁止)0881
第979条 扶養を受ける権利は、処分をすることができない。

    第8章 削除

第980条から第996条まで 削除