新私訳:韓国の民法 その3<第98条~第161条>

   第4章 物
 (物の定義)0085
第98条 この法律において「物」とは、有体物及び電気その他の管理することができる自然力をいう。
 (不動産及び動産)0086
第99条 土地及びその定着物は、不動産とする。
 不動産以外の物は、動産とする。
 (主物及び従物)0087
第100条 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物は、従物とする。
 従物は、主物の処分に従う。
 天然果実及び法定果実0088
第101条  物の用法に従い収取する産出物は、天然果実とする。
 物の使用の対価として受ける金銭その他の物は、法定果実とする。
 (果実の取得)0089
第102条 天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に属する。
 法定果実は、これを収取する権利の存続期間の日数の割合に応じて、取得する。
   第5章 法律行為
    第1節 総則
 (公の秩序に反する法律行為0090
第103条 善良な風俗その他公の秩序に反する事項を内容とする法律行為は、無効とする。 
 (不公正な法律行為)
第104条 当事者の窮迫、軽率又は無経験により著しく公正を欠く法律行為は、無効とする。
 (任意規定0091
第105条 法律行為の当事者が法令中の善良な風俗その他公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思による。
 (事実たる慣習)0092
第106条 法律行為の当事者が法令中の善良な風俗その他公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、当事者の意思が明らかでないときは、その慣習による。
    第2節 意思表示
 (心裡留保0093
第107条 意思表示は、表意者が真意でないことを知ってしたものであっても、その効力を有する。ただし、相手方が表意者の真意でないことを知り、又は知ることができた場合は、無効とする。
 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
 (虚偽表示)0094
第108条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
 (錯誤による意思表示)0095
第109条 意思表示は、法律行為の内容の重要な部分に錯誤があるときは、取り消すことができる。ただし、その錯誤が表意者の重大な過失によるときは、取り消すことができない。
 前項の規定による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。
 (詐欺又は強迫による意思表示)0096
第110条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
 相手方のある意思表示について第三者が詐欺又は強迫を行った場合において、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
 前2項の規定による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。
 (意思表示の効力発生時期)0097
第111条 相手方のある意思表示は、相手方に到達した時にその効力を生じる。
 表意者がその通知を発した後に死亡し、又は制限行為能力者になっても、意思表示の効力に影響を及ぼさない。
 (制限行為能力者に対する意思表示の効力)0098の2
第112条 意思表示の相手方が意思表示を受けた時に制限行為能力者であった場合には、表意者は、その意思表示をもって対抗することができない。 ただし、その相手方の法定代理人が意思表示の到達した事実を知った後は、この限りでない。
 (意思表示の公示送達)0098
第113条 表意者が過失なく 相手方を知ることができず、又は相手方の所在を知ることができない場合には、意思表示は、民事訴訟法の公示送達の規定により送達することができる。
    第3節 代理
 (代理行為の効力)0099
第114条 代理人がその権限内において本人のためである旨を示してした意思表示は、直接本人に対して効力を生じる。
 前項の規定は、代理人に対する第三者の意思表示について準用する。
 (本人のためである旨を示さなかった行為)0100
第115条 代理人が本人のためである旨を示さなかったときには、その意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が代理人としてしたものであることを知り、又は知ることができたときは、前条第1項の規定を準用する。
 (代理行為の瑕疵)0101
第116条 意思表示の効力が意思の欠缺、詐欺、強迫又はある事情を知り、若しくは過失により知らなかったことにより影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人を基準にして決定する。
 特定の法律行為を委任した場合において、代理人が本人の指示に従いその行為をしたときには、本人は、自己が知っていた事情又は過失により知らなかった事情について、代理人が知らなかったことを主張することができない。
 (代理人の行為能力)0102
第117条 代理人は、行為能力者であることを要しない。
 (代理権の範囲)0103
第118条 権限の定めのない代理人は、 次に掲げる行為のみをすることができる。
 (1) 保存行為
 (2) 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲において、それの利用又は改良をする行為
 (各自代理)
第119条 代理人が数人あるときは、各自が本人を代理する。ただし、法律又は授権行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
 (任意代理人の復任権)0104
第120条 代理権が法律行為により授与された場合には、代理人は、本人の承諾があり、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
 (任意代理人の復代理人の選任に伴う責任)
第121条 前条の規定により代理人が復代理人を選任したときは、本人に対して、その選任及び監督についての責任を負う。
 代理人が本人の指名により復代理人を選任した場合においては、その不適任であること又は不誠実であることを知りながら 本人に対する通知又はその解任を怠ったときでなければ、責任を負わない。
 (法定代理人の復任権及びその責任)0105
第122条 法定代理人は、その責任で復代理人を選任することができる。ただし、やむを得ない事由によるときは、前条第1項に規定する責任のみを負う。
 (復代理人の権限)0106
第123条 復代理人は、その権限内において、本人を代理する。
 復代理人は、本人又は第三者に対して、代理人と同一の権利義務を有する。
 (自己契約及び双方代理)0108
第124条 代理人は、本人の許諾がなければ、本人のために自己と法律行為をし、又は同一の法律行為について当事者双方を代理することができない。ただし、債務の履行については、これをすることができる。
 (代理権授与の表示による表見代理0109
第125条 第三者に対して他人に代理権を授与する旨を表示した者は、その 代理権の範囲内においてしたその他人とその第三者との間の法律行為について、責任を負う。ただし、第三者が、代理権を有しないことを知り、又は知ることができたときは、この限りでない。
 (権限外の表見代理0110
第126条 代理人がその権限外の法律行為をした場合において、第三者がその権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人は、その行為について、責任を負う。
 (代理権の消滅事由)0111-01
第127条 代理権は、次に掲げる事由があるときに、消滅する。
 (1) 本人の死亡
 (2) 代理人の死亡、成年後見の開始又は破産

 (任意代理の終了)0111-02
第128条 法律行為により授与された代理権は、前条の場合のほか、その原因となる法律関係の終了により消滅する。 法律関係の終了前に本人が授権行為を撤回した場合も、同様とする。
 (代理権消滅後の表見代理0112
第129条 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。 ただし、第三者が過失によりその事実を知らなかったときは、この限りでない。
 (無権代理0113-01
第130条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人が追認しなければ、本人に対して効力を生じない。
 (相手方の催告権)0114
第131条 代理権を有しない者が他人の代理人として契約をした場合において、相手方は、相当の期間を定めて、本人に対し、その追認をするかどうかの確答を催告することができる。 本人がその期間内に確答を発しないときは、追認を拒絶したものとみなす。
 (追認及び拒絶の相手方)0113-02
第132条 追認又は拒絶の意思表示は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
 (追認の効力)0116
第133条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生じる。 ただし、第三者の権利を害することはできない。
 (相手方の撤回権)0115
第134条 代理権を有しない者がした契約については、本人の追認があるまでは、相手方は、本人又はその代理人に対して撤回することができる。ただし、契約の時に相手方が代理権を有しないことを知っていたときは、この限りでない。
 (相手方に対する無権代理人の責任)0117
第135条 他人の代理人として契約を締結した者は、その代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができない場合は、相手方の選択に従い、契約を履行する責任又は損害を賠償する責任を負う。
 代理人として契約を締結した者に代理権がない事実を相手方が知り、若しくは知ることができたとき又は代理人として契約を締結した者が制限行為能力者であるときは、前項の規定を適用しない。
 (単独行為と無権代理0118
第136条 単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者の代理権を有しない行為に同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第130条から前条までの規定を準用する。 代理権を有しない者に対してその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。
    第4節 無効及び取消し
 (法律行為の一部の無効)
第137条 法律行為の一部分が無効であるときは、その全部を無効とする。ただし、その無効な部分がなくても法律行為をしたものと認められるときは、残余の部分は、無効とならない。
 (無効な法律行為の転換)
第138条 無効な法律行為が他の法律行為の要件を備え、かつ、当事者がその無効であることを知っていたとすれば他の法律行為をすることを欲したと認められるときは、他の法律行為として効力を有する。
 (無効な法律行為の追認)0119
第139条 無効な法律行為は、追認しても、その効力を生じない。ただし、当事者がその無効であることを知って追認したときは、新たな法律行為とみなす。
 (法律行為の取消権者)0120
第140条 取り消すことができる法律行為は、制限行為能力者、錯誤により若しくは詐欺若しくは強迫により意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
 (取消しの効果)0121:0121の2-03
第141条 取り消された法律行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為により受けた利益が現存している限度において、償還する責任を負う。
 (取消しの相手方)0123
第142条 取り消すことができる法律行為の相手方が確定している場合には、その取消しは、その相手方に対する意思表示によりしなければならない。
 (追認の方法及び効果)0122:0123
第143条 取り消すことができる法律行為は、第140条に規定する者が追認することができ、追認後には取り消すことができない。
 前条の規定は、前項の場合について準用する。
 (追認の要件)0124
第144条 追認は、取消しの原因が消滅した後にすることによって、その効力を生じる。
2 前項の規定は、法定代理人又は後見人<訳注:保佐人及び補助人を含む。>が追認する場合については、適用しない。
 (法定追認)0125
第145条 取り消すことができる法律行為について、前条の規定により追認することができる時以後に、次に掲げる事由があったときは、追認したものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
 (1) 全部又は一部の履行
 (2) 履行の請求
 (3) 更改
 (4) 担保の供与
 (5) 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡 
 (6) 強制執行
 (取消権の消滅)0126
第146条 取消権は、追認することができる日から3年内に、法律行為をした日から10年内に 行使しなければならない。
    第5節 条件及び期限
 (条件の成就の効果)0127
第147条 停止条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力を生じる。
 解除条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力を失う。
 当事者が条件成就の効力をその成就前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思による。
 (条件付権利の侵害の禁止)0128
第148条 条件付法律行為の当事者は、条件の成否が未定な間に、条件の成就により生ずべき相手方の利益を害することができない。
 (条件付権利の処分等)0129
第149条 条件の成就が未定な権利義務は、一般の規定により、処分し、相続し、保存し、又は担保とすることができる。
 (条件の成就及び不成就に対する信義に反する行為)0130
第150条 条件の成就により不利益を受ける当事者が信義誠實に反して条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものと主張することができる。
 条件の成就により利益を受けるべき当事者が信義誠實に反して条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就していないものと主張することができる。
 (不法条件及び既成条件)0132:0131
第151条 条件が善良な風俗その他公の秩序に反したものであるときは、その法律行為は、無効とする。
 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときは無条件の法律行為とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
 条件が法律行為の時に既に成就することができないものであった場合において、その条件が解除条件であるときは無条件の法律行為とし、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とする。
 (期限の到来の効果)0135
第152条 始期付法律行為は、期限が到来した時から効力を生じる。
 終期付法律行為は、期限が到来した時から効力を失う。
 (期限の利益とその放棄)0136
第153条 期限は、債務者の利益のためのものと推定する。
 期限の利益は、これを放棄することができる。ただし、相手方の利益を害することができない。
 (期限付権利と準用規定)
第154条 148条及び第149条の規定は、期限付法律行為について準用する。
   第6章 期間
 (この章の規定の適用範囲)0138
第155条 期間の計算は、法令、裁判上の処分又は法律行為に別段の定めがないときは、この章の規定による。
 (期間の起算点)0139
第156条 期間を時、分、秒によって定めたときは、即時から起算する。
 (期間の起算点)0140
第157条 期間を日、週、月又は年によって定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
 (年齢の計算及び表示)年齢計算に関する法律
第158条 年齢は、出生日を算入して満年齢で計算して、年数で表示する。ただし、1歳に達しない場合は、月数で表示することができる。
 (期間の満了点)0141
第159条 期間を日、週、月又は年によって定めたときは、期間の末日の終了をもって期間が満了する。
 (暦による計算)0143
第160条 期間を週、月又は年によって定めたときは、暦により計算する。
 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に期間が満了する。
 月又は年によって定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に期間が満了する。
 (公休日等と期間の満了点)0142
第161条 期間の末日が土曜日又は公休日に当たるときは、その期間は、その末日の翌日をもって満了する。