新私訳:韓国の民法 その6<第211条~第278条>

   第3章 所有権  
    第1節 所有権の限界 
 (所有権の内容)0206
第211条 所有者は、法律の範囲内において、その所有物を使用し、 収益し、及び処分する権利を有する。  
 (土地所有権の範囲)0207
第212条 土地の所有権は、正当な利益のある範囲内において、土地の上下に及ぶ。
 (所有物の返還請求権)
第213条 所有者は、その所有に属する物を占有する者に対して返還を請求することができる。ただし、占有者は、その物を占有する権利を有するときは、返還を拒否することができる。
 (所有物の妨害除去請求権及び妨害予防請求権)
第214条 所有者は、所有権を妨害する者に対して妨害の除去を請求することができ、所有権を妨害するおそれがある行為をする者に対してその予防又は損害賠償の担保を請求することができる。 
 (建物の区分所有)建物の区分所有等に関する法律2条4項:11条:19条
第215条 数人が1棟の建物を区分して各々その一部分を所有するときは、建物及びその附属物のうち共用する部分は、それらの者の共有と推定する。
 共用部分の保存に要する費用その他の負担は、各自の所有する部分の価額に応じて分担する。 
 (隣地の使用請求権)0209-01.04
第216条  土地の所有者は、土地の境界又はその付近において障壁又は建物を築造し、又は修繕するために必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住居に立ち入ることはできない。
 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、補償を請求することができる。
 (煤煙等による隣地への妨害の禁止) 
第217条 土地の所有者は、煤煙、蒸気、液体、音響、振動その他これらに類するものにより隣地の使用を妨害し、又は隣家の居住者の生活に苦痛を与えないように、適当な措置をする義務を負う。
 隣家の居住者は、前項に規定する事態が隣地の通常の用途に照らし適当なものであるときは、これを忍容する義務を負う。
 (水道等の設置権)0213の2
218 土地の所有者は、他人の土地を通過しなければ必要な水道、排水管、ガス管、電線等を設置することができず、又はその設置に過分な費用を要する場合には、他人の土地を通過して設置することができる。ただし、これによる損害が最も少ない場所及び方法を選んで設置し、通過する土地の所有者の請求によりその損害を補償しなければならない。
 前項の規定による施設を設置した後に事情の変更があったときは、他の土地の所有者は、その施設の変更を請求することができる。その施設の変更の費用は、土地の所有者が負担する。
 (周囲の土地の通行権)0210-1:0211:0212 
第219条 ある土地と公道との間にその土地の用途に必要な通路がない場合において、その土地の所有者は、周囲の土地を通行し、又は通路としなければ公道に出入りすることができず、又は公道に出入りするために過分な費用を要するときは周囲の土地を通行することができ、必要なときは周囲の土地に通路を開設することができる。ただし、これによる損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。
 前項の規定による通行権者は、周囲の土地の所有者の損害を補償しなければならない。 
 (分割及び一部譲渡と周囲通行権)0213 
第220条 分割により公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、 公道に出入りするために他の分割者の土地を通行することができる。この場合においては、補償の義務を負わない。
 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲渡した場合について準用する。 
 (自然流水に関する義務及び権利)0214 
第221条 土地の所有者は、隣地から自然に流入する水を塞ぐことができない。
 高地の所有者は、低い隣地に自然に流れ下るその隣地で必要な水を、自己の正当な使用の範囲を超えて、塞ぐことができない。 
 (疎通工事権)0215
第222条  流水が低地において閉塞したときは、高地の所有者は、自己の費用で、疏通に必要な工事をすることができる。 
 (貯水、排水又は引水のための工作物の工事請求権)0216
第223条 土地の所有者が貯水し、排水し、又は引水するために工作物を設置した場合において、工作物の破損又は閉塞により他人の土地に損害を加え、又は加えるおそれがあるときは、その他人は、その工作物の補修又は閉塞の疏通若しくは予防に必要な請求をすることができる。
 (慣習による費用の負担)0217
第224条 前2条の場合において、費用の負担に関する慣習があるときは、その慣習による。
 (軒からの落水に対する施設義務)0218
第225条 土地の所有者は、軒からの落水が隣地に直接に注がないように適当な施設を設けなければならない。
 (余水の疎通権)0220
226 高地の所有者は、浸水地を乾燥するため、又は家用若しくは農工業用の余水を疏通するために、公道、公流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。
 前項の場合においては、低地の損害が最も少ない場所及び方法を選ぶとともに、その損害を補償しなければならない。
 (流水用工作物の使用権)0221
第227条 土地の所有者は、その所有地の水を疏通するために、隣地の所有者が設置した工作物を使用することができる。
2 前項の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。
 (余水の供給請求権) 
第228条 土地の所有者は、過分な費用又は労力をかけなければ自家用又は土地利用に必要な水を得ることが困難なときは、隣地の所有者に補償を行って、余水の供給を請求することができる。
 (水流の変更)0219
第229条 溝渠その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有であるときは、その水路又は水流の幅員を変更することができない。
 両岸の土地が水流地の所有者の所有であるときは、所有者は、水路及び水流の幅員を変更することができる。ただし、下流においては、自然の水路と一致するようにしなければならない。
 前2項の規定は、異なる慣習があるときは、その慣習による。 
 (堰の設置及び利用権)0222
第230条 水流地の所有者は、堰を設置する必要があるときは、その堰を対岸に付着させることができる。ただし、これによる損害は、補償しなければならない。
 対岸の所有者は、水流地の一部が自己の所有であるときは、前項の堰を使用することができる。ただし、その利益を受ける割合に応じて、堰の設置及び保存の費用を分担しなければならない。 
 (公有河川の用水権)
第231条 公有河川の沿岸で農工業を経営する者は、これに利用するため、他の人の用水を妨害しない範囲内で、必要な引水をすることができる。
 前項の場合においては、引水をするために必要な工作物を設置することができる。
 下流沿岸の用水権の保護) 
第232条 前条第1項の引水又は同条第2項の工作物により下流沿岸の用水権を妨害したときは、その用水権者は、妨害の除去及び損害の賠償を請求することができる。
 (用水権の承継)
第233条 農工業の経営に利用する水路その他の工作物の所有者又は利用者の特別承継人は、その用水に関する従前の所有者又は利用者の権利義務を承継する。  
 (用水権に関する異なる慣習)
第234条 前3条の規定は、異なる慣習があるときは、その慣習による。
 (共用水の用水権)
第235条 相隣者は、その共用に属する源泉又は水道について、各需要の程度に応じ、かつ、他人の用水を妨害しない範囲内で、それぞれ用水する権利を有する。
 (用水を障害する工事と損害賠償及び原状回復)
第236条 必要な用途又は収益のある源泉又は水道について他人の建築その他の工事により断水し、減水し、その他に用途に障害が生じたときは、用水権者は、損害賠償を請求することができる。
 前項の工事により飲料水その他の生活上必要な用水に障害が生じたときは、原状回復を請求することができる。
 (境界標及び障壁の設置権)0223~0226:0228
第237条 隣接して土地を所有する者は、共同の費用で、通常の境界標又は障壁を設置することができる。
 前項の費用は、双方が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、土地の面積に応じて負担する。
 前2項の規定は、異なる慣習があるときは、その慣習による。
 (障壁の特殊施設権)0227:0231-01
第238条 隣地の所有者は、自己の費用で、障壁の材料を通常より良好なものとし、その高さを通常より高くし、又は防火壁その他の特殊施設を設けることができる。
 (境界標等の共有の推定)0229:0230:0231-02
第239条 境界に設置された境界標、障壁、溝渠等は、相隣者の共有と推定する。ただし、境界標、障壁、溝渠等が相隣者の一方のみの費用で設置された場合又は障壁が建物の一部である場合については、この限りでない。
 (樹木の枝及び根の除去権)0233
第240条 隣地の樹木の枝が境界を越えるときは、その所有者に対して、枝の除去を請求することができる。
 前項に規定する請求に応じないときは、請求者は、その枝を除去することができる。
 隣地の樹木の根が境界を越えるときは、自由に除去することができる。
 (土地の深掘の禁止)
第241条 土地の所有者は、隣地の地盤が崩れる程度まで、自己の土地を深く堀ることができない。ただし、十分な防禦工事をしたときは、この限りでない。
 (境界線付近の建築)0234
第242条 建物を築造する場合において、特別な慣習がないときは、境界から0.5メートル以上の距離を保たなければならない。
 隣地の所有者は、前項の規定に違反した者に対して、建物の変更又は撤去を請求することができる。ただし、建築に着手した後1年を経過し、又は建物が完成した後は、損害賠償のみを請求することができる。
 (目隠しの施設義務)0235
第243条 境界から2メートル以内の距離において隣の住宅の内部を観望することができる窓又は縁側を設置する場合は、適当な目隠しを設けなければならない。
 (地下施設等に対する制限)0237:0238
第244条 井戸を掘り、又は用水、下水若しくは汚物等を貯める地下施設を設けるときは境界から2メートル以上、貯水池、溝渠又は地下室の工事をするときは境界からその深さの2分の1以上の距離を保たなければならない。
 前項の工事をするには、土砂が崩れ、又は下水若しくは汚液が隣地に流れないよう適当な措置をしなければならない。 
    第2節 所有権の取得
 (不動産の所有権の取得時効)0162
第245条 20年間所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と不動産を占有する者は、登記することによりその所有権を取得する。
 不動産の所有者として登記した者が10年間所有の意思をもって、平穏に、公然と、善意で、かつ、過失なくその不動産を占有したときは、所有権を取得する。 
 (動産の所有権の取得時効)0162
第246条 10年間所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と動産を占有した者は、その所有権を取得する。
 前項に規定する占有が善意で、かつ、過失なく開始された場合は、5年を経過することによりその所有権を取得する。
 (所有権の取得時効の遡及効及び中断事由)0144:0147~0161
第247条 前2条の規定による所有権の取得の効力は、占有を開始した時に遡る。
 消滅時効の中断に関する規定は、前2条の規定による所有権の取得時効について準用する。
 (所有権以外の財産権の取得時効)0163
第248条 前3条の規定は、所有権以外の財産権の取得について準用する。
 (善意取得)0192
第249条 平穏に、かつ、公然と動産を譲り受けた者は、善意で、かつ、過失なくその動産を占有した場合には、 譲渡人が正当な所有者でないときであっても、直ちにその動産の所有権を取得する。
 (盗品及び遺失物についての特例)0193
第250条 前条の場合において、その動産が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難に遭い、又は遺失をした日から2年内はその物の返還を請求することができる。ただし、盗品又は遺失物が金銭であるときは、この限りでない。  
                 0194
第251条 譲受人が盗品又は遺失物を競売若しくは公開の市場において又は同種の物を販売する商人から善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、譲受人が支払った代価を弁償して、その物の返還を請求することができる。  
 (無主物の帰属)0239:0195
第252条 無主の動産を所有の意思をもって占有した者は、その所有権を取得する。
 無主の不動産は、国有とする。
 野生する動物は、無主物とし、飼養する野生動物も野生状態に戻ったときは、無主物とする。   
 (遺失物の所有権の取得)0240
第253条 遺失物は、法律に定めるところにより公告した後6箇月内にその所有者が権利を主張しないときは、拾得者がその所有権を取得する。 
 (埋蔵物の所有権の取得)0241
第254条 埋蔵物は、法律に定めたところにより公告した後1年内にその所有者が権利を主張しないときは、発見者がその所有権を取得する。ただし、他人の土地その他の物から発見した埋蔵物は、その土地その他の物の所有者と発見者が等しい割合で取得する。
 文化財の国有)
第255条 学術、技芸又は考古の重要な資料になる物については、第252条第1項及び前2条の規定によらず、国有とする。
 前項の場合において、拾得者、発見者及び埋蔵物が発見された土地その他の物の所有者は、国に対して適当な報償を請求することができる。  
 (不動産への付合)0242
第256条 不動産の所有者は、その不動産に付合した物の所有権を取得する。ただし、他の人が権原により附属された物は、この限りでない。  
 (動産間の付合)0243:0244 
第257条 動産と動産が付合して、毀損しなければ分離することができず、又はその分離に過分な費用を要する場合には、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に属する。付合した動産の主従を区別することができないときは、動産の所有者は、付合の時の価額に応じて、合成物を共有する。 
 (混和)0245
第258条 前条の規定は、動産と動産が混和して識別することができない場合について準用する。  
 (加工)0246
第259条 他人の動産に加工したときは、その物の所有権は、原材料の所有者に属する。ただし、加工による価額の増加が原材料の価額より著しく多額であるときは、加工者の所有とする。
 加工者が材料の一部を提供したときは、その価額は、前項ただし書に規定する増加額に加算する。
 (添付の効果)0247 
第260条 第256条から前条までの規定により動産の所有権が消滅したときは、その動産を目的とする他の権利も、消滅する。
 前項の権利は、動産の所有者が、合成物、混和物又は加工物の単独所有者となったときはその合成物、混和物又は加工物について、合成物、混和物又は加工物の共有者となったときはその合成物、混和物又は加工物の持分について存続する。 
 (添付による求償権)0248
第261条 第256条から前条までの場合において損害を受けた者は、不当利得に関する規定により補償を請求することができる。  
    第3節 共同所有  
 (物の共有)0250
第262条 物が持分によって数人の所有となったときは、共有とする。
 共有者の持分は、相等しいものと推定する。  
 (共有持分の処分並びに共有物の使用及び収益)0249-01 
第263条 共有者は、その持分を処分することができ、共有物の全部を持分に応じて使用し、及び収益することができる。
 (共有物の処分及び変更)0251-01
第264条 共有者は、他の共有者の同意なく、共有物を処分し、又は変更することができない。 
 (共有物の管理及び保存)0252-01.05
第265条 共有物の管理に関する事項は、共有者の持分の過半数で決する。ただし、保存行為は、各自が行うことができる。  
 (共有物の負担)0253
第266条 共有者は、その持分に応じて共有物の管理の費用の負担その他の義務を負う。
 共有者が1年以上前項の義務の履行を遅滞したときは、他の共有者は、相当な価額で持分を買い受けることができる。  
 (持分の放棄等の場合の帰属)0255
第267条 共有者がその持分を放棄し、又は相続人がなく死亡したときは、その持分は、他の共有者に各持分に応じて帰属する。 
 (共有物の分割請求)0256:0257
第268条 共有者は、共有物の分割を請求することができる。ただし、5年内の期間を定めて分割しない旨を約定することができる。
 前項に規定する約定を更新するときは、その期間は、更新した日から5年を超えることができない。
 前2項の規定は、第215条及び第239条に規定する共有物については、適用しない。  
 (分割の方法)0258 
第269条 分割の方法について協議が成立しないときは、共有者は、裁判所にその分割を請求することができる。
 現物で分割することができず、又は分割により著しくその価額が減少するおそれがあるときは、裁判所は、物の競売を命じることができる。 
 (分割による担保責任)0261
第270条 共有者は、他の共有者が分割により取得した物について、その持分に応じて売主と同じ担保の責任を負う。 
 (物の合有)
第271条 法律の規定又は契約により数人が組合として物を所有するときは、合有とする。 合有者の権利は、合有物の全部に及ぶ。
 合有については、前項の規定又は契約によるほか、次条から第274条までの規定による。  
 (合有物の処分、変更及び保存)
第272条 合有物を処分し、又は変更するには、合有者全員の同意がなければならない。ただし、保存行為は、各自が行うことができる。  
 (合有持分の処分及び合有物の分割の禁止)
第273条 合有者は、全員の同意がなければ、合有物についての持分を処分することができない。
 合有者は、合有物の分割を請求することができない。  
 (合有の終了)
第274条 合有は、組合の解散又は合有物の譲渡により終了する。
 前項の場合において、合有物の分割については、共有物の分割に関する規定を準用する。  
 (物の総有)
第275条 法人格なき社団の社員が社団として物を所有するときは、総有とする。
 総有については、社団の定款その他契約によるほか、次条及び第277条の規定による。
 (総有物の管理及び処分並びに使用及び収益)
第276条 総有物の管理及び処分は、社員総会の決議による。
 各社員は、定款その他の規約に従い、総有物を使用し、及び収益することができる。 
 (総有物に関する権利義務の得喪
第277条 総有物に関する社員の権利義務は、社員の地位を取得し、又は喪失することにより、取得し、又は喪失する。  
 (準共同所有)0263
第278条 この節の規定は、所有権以外の財産権について準用する。ただし、他の法律に特別の定めがあるときは、それによる。