新私訳:韓国の民法 その7<第279条~第372条>

    第4章 地上権  
 (地上権の内容)0265
第279条 地上権者は、他人の土地において建物その他の工作物又は樹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。  
 (存続期間を定めた地上権)参照:借地借家法03
第280条 契約で地上権の存続期間を定める場合には、その期間は、次に定める期間より短縮することができない。 
 (1) 石造、石灰造、煉瓦造若しくはこれらと類似する堅固な建物又は樹木の所有を目的とするときは、30年
 (2) 前号以外の建物の所有を目的とするときは、15年
 (3) 建物以外の工作物の所有を目的とするときは、5年
 前項各号に定める期間より短い期間を定めたときは、同項各号に定める期間まで延長する 
 (存続期間を定めなかった地上権)0268、参照:借地借家法03
第281条 契約で地上権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、前条第1項各号に定める最短存続期間とする。
 地上権の設定時に工作物の種類及び構造を定めなかったときは、地上権は、前条第1項第2号の建物の所有を目的としたものとみなす。  
 (地上権の譲渡及び土地の賃貸)
第282条 地上権者は、他人にその権利を譲渡し、又はその権利の存続期間内においてその土地を賃貸することができる。   
 (地上権者の更新請求権及び買取請求権)参照:借地借家法05:13
第283条 地上権が消滅した場合において、建物その他の工作物又は樹木が現存していたときは、地上権者は、契約の更新を請求することができる。
 地上権設定者が契約の更新を望まないときは、地上権者は、相当な価額で前項の工作物又は樹木の買取りを請求することができる。 
 (更新と存続期間)参照:借地借家法04
第284条 当事者が契約を更新する場合においては、地上権の存続期間は、更新した日から第280条第1項各号に定める最短存続期間より短縮することができない。ただし、当事者は、これより長い期間を定めることができる。  
 (収去義務及び買受請求権)0269
第285条 地上権が消滅したときは、地上権者は、建物その他の工作物又は樹木を収去して、土地を原状に回復しなければならない。
 前項の場合において、地上権設定者が相当な価額を提供してその工作物又は樹木の買受けを請求したときは、地上権者は、正当な理由なく、これを拒むことができない。
 (地代増減請求権)参照:借地借家法11
第286条 地代が土地に対する租税その他の負担の増減又は地価の変動により相当でなくなったときは、当事者は、その増減を請求することができる。  
 (地上権の消滅請求権)0266→0276
第287条 地上権者が2年以上の地代を支払わないときは、地上権設定者は、地上権の消滅を請求することができる。 
 (地上権の消滅請求と抵当権者に対する通知)
第288条 地上権が抵当権の目的であるとき又はその土地にある建物及び樹木が抵当権の目的になっているときは、前条の規定による請求は、抵当権者に通知した後相当な期間が経過することによって、その効力を生じる。  
 (強行規定参照:借地借家法09:16
第289条 第280条から第287条までの規定に反する契約で地上権者に不利なものは、その効力を生じない。  
 (区分地上権)0269の2
第289条の2 地下又は地上の空間は、上下の範囲を定めて、建物その他の工作物を所有するための地上権の目的とすることができる。この場合において、設定行為で、地上権の行使のために土地の使用を制限することができる。
 前項の規定による区分地上権は、第三者が土地を使用し、又は収益する権利を有する場合であっても、その権利者及びその権利を目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地を使用し、又は収益する権利を有する第三者は、その地上権の行使を妨げてはならない。  
 (準用規定)0267 
第290条 第213条、第214条及び第216条から第244条までの規定は、地上権者間又は地上権者と隣地の所有者との間について準用する。
 第280条から第289条まで及び前項の規定は、第289条の2の規定による区分地上権について準用する。
   第5章 地役権  
 (地役権の内容)0280
第291条 地役権者は、一定の目的のため、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。 
 (付従性)0281
第292条 地役権は、要役地の所有権に付従して移転し、又は要役地についての所有権以外の権利の目的となる。ただし、別段の定めがあるときは、その定めによる。
 地役権は、要役地と分離して譲渡し、又は他の権利の目的とすることができない。 
 (共有関係及び一部譲渡と不可分性)0282 
第293条 土地の共有者の一人は、持分について、その土地のための地役権又はその土地に存する地役権を消滅させることができない。
 土地の分割又は土地の一部の譲渡の場合には、地役権は、要役地の各部のために又はその承役地の各部について存続する。ただし、地役権が土地の一部のみ関するものであるときは、 他の部分については、この限りでない。  
 (地役権の取得時効)0283
第294条 地役権は、継続され、かつ、表現されているものに限り、第245条の規定を準用する。  
 (地役権の取得と不可分性)0284
第295条 共有者の一人が地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。
2 占有による地役権の取得時効の完成猶予は、地役権を行使するすべての共有者についてその事由がなければ、その効力を生じない。  
 (消滅時効の完成猶予及び更新と不可分性)0292
第296条 要役地が数人の共有である場合において、その一人による地役権の消滅時効の完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも効力を有する。  
 (用水地役権)0285
第297条 用水地役権の承役地における水量が要役地及び承役地の需要に比し不足するときは、その需要の程度に応じて、まず家用に供給してから、他の用途に供給しなければならない。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、その定めによる。
 承役地に数個の用水地役権が設定されたときは、後順位の地役権者は、先順位の地役権者の用水を妨げることができない。
 (承役地の所有者の義務及びその承継)0286 
第298条 契約により承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物の設置又は修繕の義務を負担したときは、承役地の所有者の特別承継人も、その義務を負担する。 
 (所有権の委棄による負担の免除)0287
第299条 承役地の所有者は、地役権に必要な部分の土地の所有権を地役権者に委棄し、前条の負担を免れることができる。  
 (工作物の共同使用)0288
第300条 承役地の所有者は、地役権の行使を妨げない範囲内において、地役権者が地役権の行使のために承役地に設置した工作物を使用することができる。
 前項の場合には、承役地の所有者は、受益の程度に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。  
 (準用規定)
第301条 第214条の規定は、地役権について準用する。 
 (特殊の地役権)0294
第302条 ある地域の住民が社団を組織して、各自が他人の土地において草木、野生物及び土砂を採取し、放牧し、又はその他の方法により収益をする権利を有する場合には、慣習によるほか、この章の規定を準用する。  
   第6章 伝貰権 
 (伝貰権の内容) 
第303条 伝貰権者は、伝貰金を支払って他人の不動産を占有してその不動産の用途に従い使用及び収益をし、その不動産の全部について後順位の権利者その他の債権者より優先して伝貰金の弁済を受ける権利を有する。
 農耕地は、伝貰権の目的とすることができない。
 (建物の伝貰権の地上権及び賃借権に対する効力)
第304条 他人の土地にある建物に伝貰権を設定したときは、その伝貰権の効力は、その建物の所有を目的とした地上権又は賃借権に及ぶ。
 前項の場合において、伝貰権設定者は、伝貰権者の同意なく、地上権又は賃借権を消滅させる行為をすることができない。 
 (建物の伝貰権と法定地上権
第305条 敷地及び建物が同一の所有者に属する場合において、建物に伝貰権を設定したときは、その敷地の所有権の特別承継人は、伝貰権設定者に対して地上権を設定したものとみなす。ただし、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
 前項の場合において、敷地の所有者は、他人にその敷地を賃貸し、又はこれを目的とする地上権若しくは伝貰権を設定することができない。  
 (伝貰権の譲渡、賃貸等) 
第306条 伝貰権者は、伝貰権を他人に譲渡し、又は担保に供することができ、その存続期間内においてその目的物を他人に転伝貰し、又は賃貸することができる。ただし、設定行為でこれを禁止したときは、この限りでない。
 (伝貰権の譲渡の効力)
第307条 伝貰権の譲受人は、伝貰権設定者に対して伝貰権の譲渡人と同一の権利義務を有する。 
 (転伝貰等の場合の責任)
第308条 伝貰権の目的物を転伝貰し、又は賃貸した場合においては、伝貰権者は、転伝貰し、又は賃貸しなければ免れることができた不可抗力による損害についても、責任を負担する。 
 (伝貰権者の維持及び修繕の義務)
第309条 伝貰権者は、目的物の現状を維持し、その通常の管理に属する修繕をしなければならない。 
 (伝貰権者の償還請求権)
第310条 伝貰権者が目的物を改良するために支出した金額その他の有益費については、その価額の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出額又は増加額の償還を請求することができる。 
 前項の場合において、裁判所は、所有者の請求により、相当な償還期間を許与することができる。
 (伝貰権の消滅請求)
第311条 伝貰権者が伝貰権設定契約又はその目的物の性質により定まった用法に従い、これを使用し、又は収益しない場合には、伝貰権設定者は、伝貰権の消滅を請求することができる。
 前項の場合においては、伝貰権設定者は、伝貰権者に対して原状の回復又は損害の賠償を請求することができる。 
 (伝貰権の存続期間)
第312条 伝貰権の存続期間は、10年を超えることができない。当事者の約定期間が10年を超えるときは、これを10年に短縮する。
 建物の伝貰権の存続期間を1年未満と定めたときは、これを1年とする。 
 伝貰権の設定は、更新することができる。その期間は、更新した日から 10年を超えることができない。
 建物の伝貰権設定者が、伝貰権の存続期間の満了前6月から1月までの間に伝貰権者に対して更新の拒絶の通知又は条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなかった場合には、その期間が満了した時に従前の伝貰権と同一の条件で更に伝貰権を設定したものとみなす。 この場合において、伝貰権の存続期間ついては、定めがないものとみなす。 
 (伝貰金増減請求権) 
第312条の2 伝貰金が目的不動産に関する租税、公課金その他の負担の増減又は経済事情の変動により相当でなくなったときは、当事者は、将来について、その増減を請求することができる。ただし、増額の場合には、大統領令が定める基準による割合を超えることができない。 
 (伝貰権の消滅通告)
第313条 伝貰権の存続期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも相手方に対して伝貰権の消滅を通告することができ、相手方がこの通告を受けた日から6月を経過した時は、伝貰権は、消滅する。
 (不可抗力による滅失) 
第314条 伝貰権の目的物の全部又は一部が不可抗力により滅失したときは、その滅失した部分の伝貰権は、消滅する。
 前項に規定する一部の滅失の場合において、伝貰権者は、その残存部分では伝貰権の目的を達することができないときは、伝貰権設定者に伝貰権の全部の消滅を通告して、伝貰金の返還を請求することができる。 
 (伝貰権者の損害賠償責任) 
第315条 伝貰権の目的物の全部又は一部が伝貰権者の責めに帰すべき事由により滅失したときは、伝貰権者は、損害を賠償する責任を負う。
 前項の場合において、伝貰権設定者は、伝貰権が消滅した後に伝貰金を損害の賠償に充当し、剰余があるときは返還しなければならず、不足があるときは更に請求することができる。
 (原状回復義務及び買受請求権)
第316条 伝貰権がその存続期間の満了により消滅したときは、伝貰権者は、その目的物を原状に回復しなければならず、その目的物に附属させた物を収去することができる。ただし、伝貰権設定者がその附属物の買受けを請求したときは、伝貰権者は、正当な理由なく拒むことができない。
 前項の場合において、その附属物が伝貰権設定者の同意を得て附属させたものであるときは、 伝貰権者は、伝貰権設定者にその附属物の買受けを請求することができる。その附属物が伝貰権設定者から買い受けたものであるときも、同様とする。  
 (伝貰権の消滅と同時履行) 
第317条 伝貰権が消滅したときは、伝貰権設定者は、伝貰権者からその目的物の引渡し及び伝貰権設定登記の抹消登記に必要な書類の交付を受ける時に、伝貰金を返還しなければならない。
 (伝貰権者の競売請求権) 
第318条 伝貰権設定者が伝貰金の返還を遅滞したときは、伝貰権者は、民事執行法の定めるところにより、伝貰権の目的物の競売を請求することができる。
 (準用規定) 
第319条 第213条、第214条及び第216条から第244条までの規定は、伝貰権者間又は伝貰権者と隣地の所有者及び地上権者との間について準用する。 

    第7章 留置権  
 (留置権の内容)0295
第320条 他人の物又は有価証券を占有している者は、その物又は有価証券に関して生じた債権が弁済期にある場合には、その債権の弁済を受ける時まで、その物又は有価証券を留置する権利を有する。
 前項の規定は、その占有が不法行為による場合には、適用しない。  
 (留置権の不可分性)0296
第321条 留置権者は、債権の全部の弁済を受ける時まで、留置物の全部についてその権利を行使することができる。  
 (競売及び簡易弁済充当)
第322条 留置権者は、債権の弁済を受けるため、留置物を競売することができる。
 正当な理由があるときは、留置権者は、鑑定人の評価により留置物をもって直ちに弁済に充当することを裁判所に請求することができる。この場合において、留置権者は、あらかじめ債務者にその旨を通知しなければならない。  
 (果実収取権)0297
第323条 留置権者は、留置物の果実を収取し、他の債権に先立って、その債権の弁済に充当することができる。ただし、その果実が金銭でないときは、競売しなければならない。 
 前項の果実は、まず債権の利息に充当し、剰余があるときは元本に充当する。 
 (留置権者の善管義務)0298
第324条 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
 留置権者は、債務者の承諾なしに、留置物の使用、貸与又は担保供与をすることができない。ただし、留置物の保存に必要な使用については、この限りでない。
 留置権者が前2項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。 
 (留置権者の償還請求権)0299
第325条 留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還を請求することができる。
 留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、その価額の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増加額の償還を請求することができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、相当の償還期間を許与することができる。  
 (被担保債権の消滅時効0300
第326条 留置権の行使は、債権の消滅時効の進行に影響を及ぼさない。  
 (他の担保の供与による留置権の消滅)0301
第327条 債務者は、相当の担保を供与して、留置権の消滅を請求することができる。  
 (占有の喪失と留置権の消滅)0302
第328条 留置権は、占有の喪失により消滅する。  
   第8章 質権  
    第1節 動産質権  
 (動産質権の内容)0342
第329条 動産質権者は、債権の担保として債務者又は第三者が供与した動産を占有し、かつ、その動産について他の債権者より優先して自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 
 (設定契約の要物性)0344 
第330条 質権の設定は、質権者に目的物を引き渡すことにより、その効力を生じる。 
 (質権の目的物)0343
第331条 質権は、譲渡することができない物を目的とすることができない。 
 (設定者による代理占有の禁止)0345
第332条 質権者は、設定者に質物の占有をさせることができない。
 (動産質権の順位)0355
第333条 数個の債権を担保するために同一の動産について数個の質権を設定したときは、その順位は、設定の先後による。
 (被担保債権の範囲)0346
第334条 質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の瑕疵による損害の賠償の債権を担保する。ただし、別段の定めがあるときは、その定めによる。  
 (留置的効力)0347
第335条 質権者は、前条の債権の弁済を受ける時までは、質物を留置することができる。ただし、自己より優先権を有する債権者に対抗することができない。  
 (転質権)0348
第336条 質権者は、その権利の範囲内において、自己の責任で、質物を転質することができる。この場合においては、転質をしなければ免れることができた不可抗力による損害についても、責任を負担する。  
 (転質の対抗要件
第337条 前条の場合において、質権者が債務者に転質の事実を通知せず、又は債務者がこれを承諾しなければ、転質をもって債務者、保証人、質権設定者及びその承継人に対抗することができない。
 債務者が前項の通知を受け、又は承諾をしたときは、転質権者の同意なく、質権者に債務を弁済しても、これをもって転質権者に対抗することができない。 
 (競売及び簡易弁済充当)0354
第338条 質権者は、債権の弁済を受けるため、質物を競売することができる。
 正当な理由があるときは、質権者は、鑑定人の評価により質物をもって直ちに弁済に充当することを裁判所に請求することができる。この場合においては、質権者は、あらかじめ債務者及び質権設定者に通知しなければならない。  
 (流質契約の禁止)0349
第339条 質権設定者は、債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済に代えて質物の所有権を取得させ、又は法律で定める方法によらないで質物を処分することを約することができない。  
 (質物以外の財産からの弁済)
第340条 質権者は、質物により弁済を受けることができない部分の債権に限り、債務者の他の財産から弁済を受けることができる。
 前項の規定は、質物より先に他の財産について配当を実施すべき場合には、適用しない。ただし、他の債権者は、質権者にその配当金額の供託を請求することができる。 
 (物上保証人の求償権)0351
第341条 他人の債務を担保するための質権の設定者は、その債務を弁済し、又は質権の実行により質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定により、債務者に対する求償権を有する。  
 (物上代位)0350→0304
第342条 質権は、質物の滅失、毀損又は公用徴収により質権設定者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。この場合においては、その支払い又は引渡しの前に差し押えなければならない。 
 (準用規定)0350→0256~0299:0163:0192~0194
第343条 第249条から第251条まで及び第321条から第325条までの規定は、動産質権について準用する。  
 (他の法律による動産質権)
第344条 この節の規定は、他の法律の規定により設定された質権について準用する。  
     第2節 権利質権  
 (権利質権の目的)0362
第345条 質権は、財産権をその目的とすることができる。ただし、不動産の使用又は収益を目的とする権利については、この限りでない。 
 (権利質権の設定方法)
第346条 権利質権の設定は、法律に別段の定めがないときは、その権利の譲渡に係る方法によらなければならない。  
 (設定契約の要物性)0520の17→0520の13
第347条 債権を質権の目的とする場合において、債権証書があるときは、質権の設定は、その証書を質権者に交付することにより、その効力を生じる。 
 (抵当債権に対する質権の付記登記)
第348条 抵当権で担保した債権を質権の目的としたときは、その抵当権の登記に質権の付記登記をすることにより、その効力が抵当権に及ぶ。  
 (指名債権に対する質権の対抗要件0364
第349条 指名債権を目的とする質権の設定は、設定者が第450条の規定により、第三債務者に質権の設定の事実を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。
 第451条の規定は、前項の場合について準用する。  
 (指図債権に対する質権の設定方法)0520の7→0520の2
第350条 指図債権を質権の目的とする質権の設定は、証書に裏書して質権者に交付することにより、その効力を生じる。 
 (無記名債権に対する質権の設定方法)0520の20→0520の13
第351条 無記名債権を目的とする質権の設定は、証書を質権者に交付することにより、その効力を生じる。 
 (質権設定者の権利の処分制限)
第352条 質権設定者は、質権者の同意なく、質権の目的とされる権利を消滅させ、又は質権者の利益を害する変更をすることができない。 
 (質権の目的となった債権の実行方法)0366
第353条 質権者は、質権の目的となった債権を直接に請求することができる。
 債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権の限度において、直接に請求することができる。
 前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期より前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済金額の供託を請求することができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
 債権の目的物が金銭以外の物であるときは、質権者は、その弁済を受けた物について質権を行使することができる。
 (同前)
第354条 質権者は、前条の規定によるほか、民事執行法に定める執行方法により、質権を実行することができる。 
 (準用規定)0362-02→0342_0355
第355条 権利質権については、この節の規定のほか、動産質権に関する規定を準用する。  
   第9章 抵当権 
 (抵当権の内容)0369-01
第356条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者より優先して自己の債権の弁済を受ける権利を有する。   
 (根抵当)0398の2-01:0398の3-01 
第357条 抵当権は、その担保する債務の極度額のみを定めて、債務の確定を将来に保留し、設定することができる。この場合においては、その確定される時までの債務の消滅又は移転は、抵当権に影響を及ぼさない。
 前項の場合においては、債務の利息は、極度額に含まれるものとみなす。
 (抵当権の効力の範囲)0370
第358条 抵当権の効力は、抵当不動産に付合された物及び従物に及ぶ。ただし、法律に特別な規定又は設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。  
 (果実に対する効力)0371
第359条 抵当権の効力は、抵当不動産について差押えがあった後に、抵当権設定者がその不動産から収取した果実又は収取することができる果実に及ぶ。ただし、抵当権者がその不動産に対する所有権、 地上権又は伝貰権を取得した第三者に対して差し押えた事実を通知した後でなければ、これをもって対抗することができない。  
 (被担保債権の範囲)0375
第360条 抵当権は、元本、利息、違約金、債務不履行による損害賠償及び抵当権の実行費用を担保する。ただし、遅延賠償については、元本の履行期日を経過した後の1年分に限り、抵当権を行使することができる。  
 (抵当権の処分の制限)0376
第361条 抵当権は、その担保した債権と分離して、他人に譲渡し、又は他の債権の担保とすることができない。 
 (抵当不動産の補充)
第362条 抵当権設定者の責めに帰すべき事由により抵当物の価額が著しく減少したときは、抵当権者は、抵当権設定者に対し、その原状の回復又は相当の担保の供与を請求することができる。  
 (抵当権者の競売請求権及び買受人)0390
第363条 抵当権者は、その債権の弁済を受けるために、抵当物の競売を請求することができる。
 抵当物の所有権を取得した第三者も、買受人となることができる。
 (第三取得者の弁済)0379
第364条 抵当不動産について所有権、地上権又は伝貰権を取得した第三者は、抵当権者にその不動産で担保された債権を弁済して、抵当権の消滅を請求することができる。
 (抵当地上の建物の競売請求権)0389-01 
第365条 土地を目的に抵当権を設定した後にその設定者がその土地に建物を築造したときは、抵当権者は、土地とともにその建物も競売を請求することができる。ただし、その建物の競売代価については、優先弁済を受ける権利を有しない。
 (法定地上権0388
第366条 抵当物の競売により、土地とその地上の建物が異なる所有者に属した場合には、土地の所有者は、建物の所有者に対して地上権を設定したものとみなす。ただし、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。  
 (第三取得者の費用の償還請求権)0391
第367条 抵当物の第三取得者がその不動産の保存又は改良のために必要費又は有益費を支出したときは、第203条第1項及び第2項の規定により、抵当物の競売代価から優先して償還を受けることができる。 
 (共同抵当と代価の配当及び次順位者の代位)0392 
第368条 同一の債権の担保として数個の不動産に抵当権を設定した場合において、その不動産の競売代価を同時に配当するときは、各不動産の競売代価に応じて、その債権の分担を定める。
 前項の抵当不動産のうち一部の競売代価を先に配当する場合は、その代価からその債権全部の弁済を受けることができる。この場合において、その競売した不動産の次順位の抵当権者は、先順位の抵当権者が同項の規定により他の不動産の競売代価から弁済を受けることができる金額の限度で、先順位者に代位して抵当権を行使することができる。 
 (付従性) 
第369条 抵当権で担保された債権が時効の完成その他の事由により消滅したときは、抵当権も消滅する。  
 (準用規定)0372
第370条 第214条、第321条、第333条、第340条、第341条及び第342条の規定は、抵当権について準用する。  
 (地上権又は伝貰権を目的とする抵当権)0369-02:0398 
第371条 この章の規定は、地上権又は伝貰権を抵当権の目的とする場合について準用する。
 地上権又は伝貰権を目的に抵当権を設定した者は、抵当権者の同意なく、地上権又は伝貰権を消滅させる行為をすることができない。
 (他の法律による抵当権)
第372条 この章の規定は、他の法律により設定された抵当権について準用する。