新私訳:韓国の民法 その8<第373条~第459条>

  第3編 債権
   第1章 総則  
    第1節 債権の目的  
 (債権の目的)0399
第373条 金銭で価額を算定することができないものであっても、 債権の目的とすることができる。  
 (特定物の引渡しの債務者の善管義務)0400
第374条 特定物の引渡しが債権の目的であるときは、債務者は、その物を引き渡すまで、善良な管理者の注意をもって保存しなければならない。 
 (種類債権)0401
第375条 債権の目的を種類でのみ指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によって品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質の物で履行しなければならない。
 前項の場合において、債務者が履行に必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得て履行する物を指定したときは、その時からその物を債権の目的物とする。   
 (金銭債権)0402-02
第376条 債権の目的がある種類の通貨で支払うべきものである場合において、その通貨が弁済期に强制通用力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済しなければならない。
 (外貨債権)0402-03→0402-01.02
第377条 債権の目的が外国の通貨で支払うべきものである場合には、債務者は、自己が選択したその国の各種の通貨で弁済することができる。
 債権の目的がある種類の外国の通貨で支払うべきものである場合において、その通貨が弁済期に强制通用力を失っているときは、その国の他の通貨で弁済しなければならない。  
       0403
第378条 債権額が外国の通貨で指定されたときは、債務者は、支払うべき時における履行地の為替相場により、我が国の通貨で弁済することができる。  
 (法定利率)0404
第379条 利息付の債権の利率は、他の法律の規定又は当事者の約定がないときは、年5分とする。   
 (選択債権)0406
第380条 債権の目的が数個の行為の中から選択によって定まる場合において、他の法律の規定又は当事者の約定がないときは、選択権は、債務者に属する。 
 (選択権の移転)0408
第381条 選択権の行使期間がある場合において、選択権者がその期間内に選択権を行使しないときは、相手方は相当の期間を定めてその選択を催告することができ、選択権者がその期間内に選択をしないときは、選択権は、相手方に移転する。
 選択権の行使期間がない場合において、債権の期限が到来した後に相手方が相当の期間を定めてその選択を催告しても、選択権者がその期間内に選択をしないときは、前項と同様とする。
 (当事者の選択権の行使)0407
第382条 債権者又は債務者が選択をする場合には、その選択は、相手方に対する意思表示によって行使する。
 前項の意思表示は、相手方の同意がなければ、撤回することができない。  
 (第三者の選択権の行使)0409-01
第383条 第三者が選択をする場合には、その選択は、債務者及び債権者に対する意思表示によって行使する。
 前項の意思表示は、債権者及び債務者の同意がなければ、撤回することができない。
 (第三者の選択権の移転)0409-02
第384条 選択をすべき第三者が選択をすることができない場合には、選択権は、債務者に移転する。
 第三者が選択をしない場合には、債権者又は債務者は、相当の期間を定めてその選択を催告することができ、第三者がその期間内に選択しないときは、選択権は、債務者に移転する。
 (不能による選択債権の特定)0410
第385条 債権の目的として選択すべき数個の行為の中に当初から不能のもの又は後に履行が不能となったものがあるときは、債権の目的は、残存するものについて存在する。
 選択権のない当事者の過失により履行が不能となったときは、前項の規定を適用しない。  
 (選択の遡及効0411
第386条 選択の効力は、その債権が発生した時に遡及する。 ただし、第三者の権利を害することはできない。
    第2節 債権の効力 
 (履行期と履行遅滞0412
第387条 債務の履行について確定期限がある場合には、債務者は、期限の到来した時から遅滞の責任を負う。 債務の履行について不確定期限がある場合には、債務者は、期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
 債務の履行について期限がない場合には、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
 (期限の利益の喪失)0137
第388条 債務者は、次に掲げる場合には、期限の利益を主張することができない。
 (1) 債務者が担保を損傷させ、減少させ、又は滅失させたとき。
 (2) 債務者が担保の供与の義務を履行しないとき。  
 (強制履行)0414
第389条 債務者が任意に債務を履行しないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質が強制履行を許さないものであるときは、この限りでない。
 前項の債務が法律行為を目的とするときは債務者の意思表示に代わるべき裁判を請求することができ、債務者の一身に専属しない作為を目的とするときは債務者の費用で第三者にこれを行わせることを裁判所に請求することができる。
 その債務が不作為を目的とする場合において、債務者がこれに違反したときは、債務者の費用で、その違反したものの除却及び将来のための適当な処分を裁判所に請求することができる。
 前3項の規定は、損害賠償の請求に影響を及ぼさない。 
 (債務不履行と損害賠償)0415-01
第390条 債務者が債務の内容に従った履行をしないときは、債権者は、損害の賠償を請求することができる。ただし、債務者の故意及び過失なく履行することができなくなったときは、この限りでない。  
 (履行補助者の故意及び過失) 
第391条 債務者の法定代理人が債務者のために履行し、又は債務者が他人を使用して履行する場合には、法定代理人又は被用者の故意又は過失は、債務者の故意又は過失とみなす。
 (履行遅滞中の損害の賠償)413の2-01 
第392条 債務者は、自己に過失がない場合であっても、その履行の遅滞中に生じた損害を賠償しなければならない。ただし、債務者が履行期に履行しても損害を免れられない場合は、この限りでない。
 (損害賠償の範囲)0416
第393条 債務の不履行による損害賠償は、通常の損害をその限度とする。
 特別な事情による損害は、債務者がその事情を知り、又は知ることができたときに限り、賠償の責任を負う。 
 (損害賠償の方法)0417
第394条 別段の意思表示がないときは、損害は、金銭をもって賠償する。  
 (履行遅滞と填補賠償)
第395条 債務者が債務の履行を遅滞した場合において、債権者が相当の期間を定めて履行を催告してもその期間内に履行せず、又は遅滞後の履行が債権者にとって利益のないときは、債権者は、受領を拒絶し、又は履行に代わる損害賠償を請求することができる。
 (過失相殺)0418
第396条 債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定める際に、これを考慮しなければならない。  
 (金銭債務の不履行についての特則)0419 
第397条 金銭債務の不履行の損害賠償の額は、法定利率による。ただし、法令の制限に反しない約定利率があるときは、その利率による。
 前項の損害賠償については、債権者は損害の証明を要しないし、債務者は過失がないことを抗弁とすることができない。
 (賠償額の予定)0420:0421
第398条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
 損害賠償の予定額が不当に過大な場合には、裁判所は、適当な額に減額することができる。
 損害賠償額の予定は、履行の請求又は契約の解除に影響を及ぼさない。
 違約金の定めは、損害賠償の額の予定と推定する。
 当事者が金銭でないものを損害の賠償に充当するべき旨を予定した場合についても、前各項の規定を準用する。 
 (損害賠償者の代位)0422
第399条 債権者がその債権の目的である物又は権利の価額の全部を損害賠償として受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。 
 (受領遅滞) 
第400条 債権者は、履行を受けることができず、又は受けることを拒むときは、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う。
 (受領遅滞と債務者の責任)
第401条 受領遅滞中においては、債務者は、故意又は重大な過失がなければ、不履行によるすべての責任を負わない。 
第402条 受領遅滞中においては、利息を生じる債権であっても、 債務者は、利息を支払う義務を負わない。 
 (受領遅滞と債権者の責任)0413
第403条 受領遅滞によってその目的物の保管又は弁済の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。  
 (債権者代位権0423-01.02
第404条 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、一身に専属する権利は、この限りでない。
 債権者は、その債権の期限が到来する前においては、裁判所の許可なく、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
 (債権者代位権の行使の通知)
第405条 債権者が前条第1項の規定により保存行為以外の権利を行使したときは、債務者に通知しなければならない。
 債務者が前項に規定する通知を受けた後にその権利を処分しても、これをもって債権者に対抗することができない。 
 (詐害行為取消権)0424:0424の5:0426
第406条 債務者が債権者を害することを知って財産権を目的とする法律行為をしたときは、債権者は、その取消し及び原状の回復を裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得した者がその行為又は転得の時に債権者を害することを知ることができなかった場合は、この限りでない。
 前項の規定による訴えは、債権者が取消の原因を知った日から1年内、法律行為があった日から5年内に提起しなければならない。
 (詐害行為の取消しの効力0425
第407条 前条の規定による取消し及び原状の回復は、全ての債権者の利益のためにその効力を有する。
    第3節 数人の債権者及び債務者
     第1款 総則
 (分割債権関係)0427
第408条 債権者又は債務者が数人ある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
     第2款 不可分債権及び不可分債務
 (不可分債権)0428→432
第409条 債権の目的がその性質又は当事者の意思表示により不可分である場合において、債権者が数人あるときは、各債権者は全ての債権者のために履行を請求することができ、債務者は全ての債権者のために各債権者に対して履行することができる。
 (一人の債権者に生じた事由の効力)0428→0435の2:0429
第410条 前条の規定によりすべての債権者に効力を有する事由を除き、不可分債権者の一人の行為又は一人に関する事由は、他の債権者に対して効力を有しない。
 不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合において、債務の全部の履行を受けた他の債権者は、その一人が権利を失なわなければその者に分与すべき利益を債務者に償還しなければならない。
 (不可分債務と準用規定)0430
第411条 数人が不可分債務を負担した場合については、前条、第413条から第415条まで、第422条及び第424条から第427条までの規定を準用する。
 (可分債権又は可分債務への変更)0431
第412条 不可分債権又は不可分債務が可分債権又は可分債務に変更されたときは、各債権者は自己の部分のみの履行を請求する権利を有し、各債務者は自己の負担部分のみを履行する義務を負う.
     第3款 連帯債務
 (連帯債務の内容)
第413条 数人の債務者が債務の全部を各自履行すべき義務を負い、債務者の一人の履行によって他の債務者もその義務を免れるときは、その債務は、連帯債務とする。
 (一人の連帯債務者に対する履行の請求)0436
第414条 債権者は、一人の連帯債務者に対し、又は同時に若しくは 順次に全ての連帯債務者に対し、債務の全部又は一部の履行を請求することができる。
 (債務者に生じた無効及び取消し)0437
第415条 一人の連帯債務者についての法律行為の無効又は取消しの原因は、他の連帯債務者の債務に影響を及ぼさない。
 (履行の請求の絶対的効力)
第416条 一人の連帯債務者に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、効力を有する。
 (更改の絶対的効力)0438
第417条 一人の連帯債務者と債権者との間に債務の更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
 (相殺の絶対的効力)0439
第418条 一人の連帯債務者が債権者に対して債権を有する場合において、その債務者が相殺したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
 相殺する債権を有する連帯債務者が相殺をしていないときは、その債務者の負担部分に限り、他の連帯債務者は、相殺することができる。
 (免除の絶対的効力)
第419条 一人の連帯債務者に対する債務の免除は、その債務者の負担部分に限り、他の連帯債務者の利益のために効力を有する。
 (混同の絶対的効力)0440
第420条 一人の連帯債務者と債権者との間に混同があったときは、その債務者の負担部分に限り、他の連帯債務者も、義務を免れる。
 (消滅時効の絶対的効力)
第421条 一人の連帯債務者について消滅時効が完成したときは、その負担部分に限り、他の連帯債務者も、義務を免れる。
 (受領遅滞の絶対的効力)
第422条 一人の連帯債務者に対する受領遅滞は、他の連帯債務者に対しても、効力を有する。
 (効力の相対性の原則)0441
第423条 第416条から前条までに規定する事由を除き、一人の連帯債務者に関する事由は、他の連帯債務者に対して効力を有しない。
 (負担部分の平等)
第424条 連帯債務者の負担部分は、平等なものと推定する。
 (出捐債務者の求償権)0442
第425条 一人の連帯債務者が弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、他の連帯債務者の負担部分について求償権を行使することができる。
 前項の求償権は、免責された日以後の法定利息及び避けることができない費用その他の損害の賠償を含む。
 (求償要件としての通知)0443
第426条 一人の連帯債務者が他の連帯債務者に通知しないで弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者が債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分に限り、この事由をもって免責行為をした連帯債務者に対抗することができ、その対抗事由が相殺であるときは、相殺によって消滅すべき債権は、その連帯債務者に移転する。
 一人の連帯債務者が弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得たことを他の連帯債務者に通知しない場合において、他の連帯債務者が善意で債権者に弁済その他の有償の免責行為をしたときは、その連帯債務者は、自己の免責行為の有効であることを主張することができる。
 (償還をする資力のない者の負担部分)0444
第427条 連帯債務者の中に償還する資力のない者があるときは、その債務者の負担部分は、求償権者及び他の資力のある債務者がその負担部分に応じて分担する。ただし、求償権者に過失があるときは、他の連帯債務者に分担を請求することができない。
 前項の場合において、償還する資力のない債務者の負担部分を分担する他の債務者が債権者から連帯の免除を受けたときは、その債務者の分担すべき部分は、債権者の負担とする。
     第4款 保証債務
 (保証債務の内容)0446-01
第428条 保証人は、主たる債務者が履行しない債務を履行する義務を負う.
 保証は、将来の債務についても、することができる。
 (保証の方式)0446-02.03
第428条の2 保証は、その意思が保証人の記名押印又は署名のある書面で表示されることによって、効力を生じる。 ただし、保証の意思が電子的形態によって表示された場合は、効力を有しない。
 保証債務を保証人に不利に変更する場合も、前項と同様とする。
 保証人が保証債務を履行した場合は、その限度において、第1項及び前項の規定による方式の瑕疵を理由として、保証の無効を主張することができない。
 (根保証)0465の2
第428条の3 保証は、不確定な多数の債務についても、することができる。 この場合において、保証する債務の極度額を書面によって定めなければならない。
 前項の場合において、債務の極度額を前条第1項本文の規定による書面によって定めない保証契約は、 効力を有しない。
 (保証債務の範囲)0447
第429条 保証債務は、主たる債務の利息、違約金、損害賠償その他主たる債務に従たる債務を包含する。
 保証人は、その保証債務に関する違約金その他損害賠償の額を予定することができる。
 (目的又は態様上の付従性)0448-01
第430条 保証人の負担が主たる債務の目的又は態様より重いときは、主たる債務の限度に減縮する。
 (保証人の条件)0450
第431条 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、行為能力及び弁済の資力を有する者でなければならない。
 保証人が弁済の資力を欠くに至ったときは、債権者は、保証人の変更を請求することができる。
 債権者が保証人を指名した場合には、前2項の規定は、適用しない。
 (他の担保の供与)0451
第432条 債務者は、他の相当の担保を供することをもって、保証人を立てる義務を免れることができる。
 (保証人と主たる債務者の抗弁権)0457-02
第433条 保証人は、主たる債務者の抗弁をもって、債権者に対抗することができる。
2 主たる債務者の抗弁の放棄は、保証人に対して効力を生じない。
 (保証人と主たる債務者の相殺権)0457-03
第434条 保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって、債権者に対抗することができる。
 (保証人と主たる債務者の取消権等)0457-03
第435条 主たる債務者が債権者に対して取消権又は解除権若しくは解約告知権を有する間は、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
第436条 削除
 (債権者の情報提供義務及び通知義務等)0458の2:0458の3
第436条の2 債権者は、保証契約を締結する場合において、保証契約を締結するかどうか又はその内容に影響を及ぼし得る主たる債務者の債務に関連する信用情報を保有し、又は知っているときは、保証人にその情報を知らせなければならない。 保証契約を更新するときも、また同じ。
 債権者は、保証契約を締結した後に次に掲げる事由がある場合には、遅滞なく、保証人にその事実を知らせなければならない。
 (1) 主たる債務者が元本、利息、違約金、損害賠償又はその他主たる債務に従たる債務を3箇月以上履行しない場合
 (2) 主たる債務者が履行期に履行することができないことをあらかじめ知った場合
 (3) 主たる債務者の債務関連信用情報に重大な変化が生じたことを知った場合
 債権者は、保証人の請求があるときは、主たる債務の内容及びその履行の有無を知らせなければならない。
 債権者が前項の規定による義務に違反して、保証人に損害を負わせた場合には、裁判所は、その内容及び程度等を考慮し、保証債務を軽減し、又は免除することができる。
 (保証人の催告の抗弁及び検索の抗弁)0452~0454
第437条 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、主たる債務者が弁済の資力を有する事実及びその執行が容易であることを証明して、まず主たる債務者に請求すべき旨及びその財産について執行すべき旨を抗弁することができる。ただし、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、この限りでない。
 (催告及び検索の懈怠の効果)0455
第438条 前条の規定による保証人の抗弁にかかわらず、債権者が怠ったために債務者から全部又は一部の弁済を受けることができなかった場合は、債権者が怠らなければ弁済を受けることができた限度において、保証人は、その義務を免れる。
 (共同保証の分別の利益)0456
第439条 数人の保証人が各別の行為により保証債務を負担した場合であっても、第408条の規定を適用する。
 (時効の完成猶予等の保証人に対する効力)0457-01
第440条 主たる債務者に対する時効の完成猶予及び更新は、保証人に対して、その効力を有する。
 (委託を受けた保証人の求償権)0459
第441条 主たる債務者の委託を受けて保証人となった者が過失なく弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務を消滅させたときは、主たる債務者に対して求償権を有する。
 第425条第2項の規定は、前項の場合について準用する。
 (委託を受けた保証人の事前求償権)0460
第442条 主たる債務者の委託を受けて保証人となった者は、次に掲げる場合には、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。
 (1) 保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判を受けたとき。
 (2) 主たる債務者が破産宣告を受けた場合において、債権者が破産財団に加入しないとき。
 (3) 債務の履行期が確定せず、その最長期も確定することができない場合において、保証契約後5年を経過したとき。
 (4) 債務の履行期が到来したとき。
 前項第4号の場合には、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限をもって、保証人に対抗することができない。
 (主たる債務者の免責請求)0461
第443条 前条の規定により主たる債務者が保証人に対して賠償する場合において、主たる債務者は、自己を免責させ、若しくは自己に担保を供すべきことを保証人に請求することができ、又は賠償すべき金額を供託し、担保を供し、若しくは保証人を免責させることによって、その賠償義務を免れることができる。
 (委託を受けない保証人の求償権)0462-01.02
第444条 主たる債務者の委託を受けないで保証人となった者が弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務を消滅させたときは、主たる債務者は、その当時利益を受けた限度において賠償しなければならない。
 主たる債務者の意思に反して保証人となった者が弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務を消滅させたときは、主たる債務者は、現に利益を受けている限度において賠償しなければならない。
 前項の場合において、主たる債務者が求償した日以前に相殺の原因を有していたことを主張したときは、その相殺によって消滅すべき債権は、保証人に移転する。
 (求償要件としての通知)0463-01.03
第445条 保証人が主たる債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務を消滅させた場合において、主たる債務者が債権者に対抗することができる事由を有していたときは、この事由をもって保証人に対抗することができ、その対抗事由が相殺であるときは、相殺によって消滅すべき債権は、保証人に移転する。
 保証人が弁済をし、その他自己の財産をもって免責したことを主たる債務者に通知しない場合において、主たる債務者が善意で債権者に弁済その他有償の免責行為をしたときは、主たる債務者は、自己の免責行為が有効であることを主張することができる。
 (主たる債務者の保証人に対する免責の通知義務)0463-02
第446条 主たる債務者が自己の行為により免責したことをその委託を受けて保証人となった者に通知していない場合において、保証人が善意で債権者に弁済その他有償の免責行為をしたときは、保証人は、自己の免責行為が有効であることを主張することができる。
 (連帯債務又は不可分債務の保証人の求償権)0464
第447条 連帯債務者又は不可分債務者の一人のために保証人となった者は、他の連帯債務者又は他の不可分債務者に対し、その負担部分に限り、求償権を有する。
 (共同保証人間の求償権)0465
第448条 数人の保証人がある場合において、一人の保証人が自己の負担部分を超える弁済をしたときは、第444条の規定を準用する。
 主たる債務が不可分であり、又は各保証人が相互に連帯し、若しくは主たる債務者と連帯して債務を負担した場合において、一人の保証人が自己の負担部分を超える弁済をしたときは、第425条から第427条までの規定を準用する。
    第4節 債権の譲渡
 (債権の譲渡性)0466-01.02
第449条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、債権の性質が譲渡を許さないときは、この限りでない。
 債権は、当事者が反対の意思を表示した場合には、譲渡をすることができない。ただし、その意思表示をもって善意の第三者に対抗することができない。
 (指名債権の譲渡の対抗要件0467
第450条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
 前項の通知及び承諾は、確定日付のある証書によらないときは、債務者以外の第三者に対抗することができない。
 (承諾及び通知の効果)0468
第451条 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由をもって譲受人に対抗することができない。ただし、債務者が債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻すことができ、譲渡人に対して負担した債務があるときはそれが成立しないことを主張することができる。
 譲渡人が譲渡の通知のみをしたときは、債務者は、その通知を受ける時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
 (譲渡の通知と禁反言)
第452条 譲渡人が債務者に債権の譲渡の通知をした場合において、まだ譲渡をしていなかったとき又はその譲渡が無効なときであっても、善意の債務者は、譲受人に対抗することができる事由をもって譲渡人に対抗することができる。
 前項の通知は、譲受人の同意がなければ、撤回することができない。
    第5節 債務の引受け
 (債権者との契約による債務の引受け)0472-01.02
第453条 第三者は、債権者との契約によって債務を引き受けて、債務者の債務を免れさせることができる。ただし、債務の性質が引受けを許さないときは、この限りでない。
 利害関係がない第三者は、債務者の意思に反して債務を引き受けることができない。
 (債務者との契約による債務引受)0472-03
第454条 第三者が債務者との契約によって債務を引き受けた場合は、債権者の承諾によって、その効力を生じる。
 債権者の承諾又は拒絶の相手方は、 債務者又は第三者とする。
 (諾否の催告)
第455条 前条の場合において、第三者又は債務者は、相当な期間を定めて諾否についての確答を債権者に催告することができる。
 債権者がその期間内に確答を発しないときは、拒絶したものとみなす。
 (債務引受の撤回及び変更)
第456条 第三者と債務者との間の契約による債務引受は、債権者の承諾がある時まで、当事者は、これを撤回し、又は変更することができる。
 (債務引受の遡及効
第457条 債権者の債務引受に対する承諾は、別段の意思表示がなければ、債務を引き受けた時に遡及してその効力を生じる。 ただし、第三者の権利を侵害することができない。
 (従前の債務者の抗弁事由)0472の2-01
第458条 引受人は、従前の債務者が抗弁をすることができる事由をもって債権者に対抗することができる。
 (債務引受と保証及び担保の消滅)0472の4-01.03
第459条 従前の債務者の債務に対する保証又は第三者の供した担保は、債務引受により消滅する。ただし、保証人又は第三者が債務引受に同意した場合は、この限りでない。