新私訳:韓国の民法 その12<第598条~第654条)

    第5節 消費貸借
 (消費貸借の意義)0587の2-01
第598条 消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の代替物の所有権を相手方に移転することを約し、相手方がそれと同じ種類、品質及び数量の物をもって返還することを約することによって、その効力を生じる。
 (破産と消費貸借の失効)0587の2-03
第599条 貸主が目的物を借主に引き渡す前に当事者の一方が破産宣告を受けたときは、消費貸借は、その効力を失う。
 (利息計算の始期)0589-02
第600条 利息付きの消費貸借は、借主が目的物の引渡しを受けた時から利息を計算しなければならず、借主がその責めに帰すべき事由によって受領を遅滞したときは、貸主が履行の提供をした時から利息を計算しなければならない。
 (無利息の消費貸借と解除権)0587の2-02
第601条 無利息の消費貸借の当事者は、目的物の引渡しがあるまでは、いつでも契約を解除することができる。ただし、相手方に生じた損害があるときは、これを賠償しなければならない。
 (貸主の担保責任)0559(0562~0564):0590
第602条 利息付きの消費貸借の目的物に瑕疵がある場合には、第580条から第582条までの規定を準用する。
 無利息の消費貸借の場合には、借主は、瑕疵がある物の価額を返還することができる。ただし、貸主がその瑕疵を知りながら借主に告げなかったときは、前項と同様とする。
 (返還の時期)0591-01.02
第603条 借主は、約定した時期に借用物と同じ種類、品質及び数量の物を返還しなければならない。
 返還の時期の定めがないときは、貸主は、相当の期間を定めて返還を催告しなければならない。ただし、借主は、いつでも返還することができる。
 (返還不能による時価の償還)0592
第604条 借主が借用物と同じ種類、品質及び数量の物を返還することができないときは、その時の時価を償還しなければならない。ただし、第376条及び第377条第2項の場合は、この限りでない。
 (準消費貸借)0588
第605条 当事者双方が消費貸借によらないで金銭その他の代替物を給付する義務を負う場合において、当事者がその目的物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借の効力を生じる。
 (代物による貸借)
第606条 金銭の貸借の場合において、借主が金銭に代えて有価証券その他の物の引渡しを受けたときは、その引渡しの時の価額を借用額とする。
 (代物による返還の予約)
第607条 借用物の返還について借主が借用物に代えて他の財産権を移転することを予約した場合には、その財産の予約の時の価額は、借用額及びこれに付した利息の合算額を超えることができない。
 (借主に不利益な約定の禁止)
第608条 前2条の規定に違反した当事者の約定で借主に不利なものは、買戻しその他いかなる名目であっても、その効力を有しない。
    第6節 使用貸借
 (使用貸借の意義)0593
第609条 使用貸借は、当事者の一方が相手方に無償で使用及び収益をさせるために目的物を引き渡すことを約し、相手方がその使用及び収益をした後にその物を返還することを約することによって、その効力を生じる。
 (借主の使用及び収益)0594
第610条 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その使用及び収益をしなければならない。
 借主は、貸主の承諾がなければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
 借主が前2項の規定に違反したときは、貸主は、契約を解約告知することができる。
 (費用の負担)0595
第611条 借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
 その他の費用については、第594条第2項の規定を準用する。
 (準用規定)0596:0593の2
第612条 第559条及び第601条の規定は、使用貸借について準用する。
 (借用物の返還の時期)0597-01.02:0598-01.02
第613条 借主は、約定した時期に借用物を返還しなければならない。
 時期の定めがない場合には、借主は、契約又は目的物の性質による使用及び収益が終了したときに返還しなければならない。ただし、使用及び収益に足る期間が経過したときは、貸主は、いつでも契約を解約告知することができる。
 (借主の死亡及び破産と解約告知)0597-03
第614条 借主が死亡し、又は破産宣告を受けたときは、貸主は、契約を解約告知することができる。
 (借主の原状回復義務と収去権)0599
第615条 借主が借用物を返還するときは、これを原状に回復しなければならない。これに附属させた物は、収去することができる。
 (共同借主の連帯義務)
第616条 数人が共同して物を借用したときは、連帯して義務を負う。
 (損害の賠償及び費用の償還の請求期間)0600-01
第617条 契約又は目的物の性質に反する使用及び収益によって生じた損害の賠償の請求及び借主が支出した費用の償還の請求は、貸主が物の返還を受けた日から6月内にしなければならない。
    第7節 賃貸借 
 (賃貸借の意義)0601
第618条 賃貸借は、当事者の一方が相手方に目的物の使用及び収益をさせることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うことを約することによって、その効力を生じる。
 (処分の能力又は権限のない者ができる短期賃貸借)0602
第619条 処分の能力又は権限のない者が賃貸借をする場合には、その賃貸借は、次に定める期間を超えることができない。
 (1) 樹木の栽植、塩の採取又は石造、石灰造、煉瓦造及びこれらに類する構造の建築を目的とする土地の賃貸借は、10年
 (2) その他の土地の賃貸借は、5年
 (3) 建物その他の工作物の賃貸借は、3年
 (4) 動産の賃貸借は、6月
 (短期賃貸借の更新)0603
第620条 前条の期間は、更新することができる。ただし、その期間の満了前、土地については1年内、建物その他工作物については3月内、動産については1月内に、更新しなければならない。
 (賃貸借の登記)0605
第621条 不動産の賃借人は、当事者間に反対の約定がないときは、賃貸人に対し、その賃貸借の登記手続に協力するように請求することができる。
 不動産の賃貸借を登記したときは、その時から第三者に対して効力を生じる。
 (建物の登記のある借地権の対抗力)0616の2:参照:借地借家法10
第622条 建物の所有を目的とした土地の賃貸借は、これを登記しなかった場合においても、賃借人がその土地上にある建物を登記したときは、第三者に対して賃貸借の効力を生じる。
 建物が賃貸借期間の満了前に滅失し、又は朽廃したときは、前項の効力を失う。 
 (賃貸人の義務)0606-01
第623条 賃貸人は、目的物を賃借人に引き渡し、契約の存続中その使用及び収益に必要な状態を維持する義務を負う。
 (賃貸人の保存行為と忍容義務)0606-02
第624条 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をするときは、賃借人は、 これを拒むことができない。
 (賃借人の意思に反する保存行為と解約告知権)0607
第625条 賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をする場合において、賃借人がこれにより賃借の目的を達することができないときは、契約を解約告知することができる。
 (賃借人の償還請求権)0608
第626条 賃借人が賃借物の保存に係る必要費を支出したときは、賃貸人に対し、その償還を請求することができる。
 賃借人が有益費を支出した場合には、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、その価額の増加が現存するときに限り、賃借人の支出した金額又はその増加額を償還しなければならない。この場合において、裁判所は、賃貸人の請求により、相当の償還期間を許与することができる。
 (一部滅失等と減額請求権及び解約告知権)0611
第627条 賃借物の一部が賃借人の過失なく滅失その他の事由により使用及び収益をすることができないときは、賃借人は、その部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
 前項の場合において、その残存部分では賃借の目的を達することができないときは、賃借人は、契約を解約告知することができる。
 (賃料の増減請求権)参照:借地借家法11-01:32-01
第628条 賃貸物に対する公課負担の増減その他経済事情の変動により、約定した賃料が相当でなくなったときは、当事者は、将来に向かって賃料の増減を請求することができる。
 (賃借権の譲渡及び転貸の制限)0612
第629条 賃借人は、賃貸人の同意なく、その権利を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
 賃借人が前項の規定に違反したときは、賃貸人は、契約を解約告知することができる。
 (転貸の効果)0613-01.02
第630条 賃借人が賃貸人の同意を得て賃借物を転貸したときは、転借人は、直接、賃貸人に対して義務を負う。 この場合において、転借人は、転貸人に対する賃料の支払をもって賃貸人に対抗することができない。
 前項の規定は、賃貸人の賃借人に対する権利の行使に影響を及ぼさない。
 (転借人の権利の存続)0613-03
第631条 賃借人が賃貸人の同意を得て賃借物を転貸した場合には、賃貸人と賃借人の合意によって契約が終了したときであっても、転借人の権利は、消滅しない。
 (賃借建物の小部分を他人に使用させる場合)
第632条 前3条の規定は、建物の賃借人がその建物の小部分を他人に使用させる場合には、適用しない。
 (賃料の支払時期)0614
第633条 賃料は、動産、建物又は宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫期があるものについては、その収穫後に遅滞なく支払わなければならない。
 (賃借人の通知義務)0615
第634条 賃借物の修理を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なく賃貸人にこれを通知しなければならない。ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。
 (期間の定めのない賃貸借の解約告知の申入れ)0617-01
第635条 賃貸借の期間の定めがないときは、当事者は、いつでも契約の解約告知の申入れをすることができる。
 相手方が前項の申入れを受けた日から次に定める期間が経過したときは、解約告知の効力を生じる。
 (1) 土地及び建物その他の工作物については、賃貸人が解約告知の申入れをした場合は6月、賃借人が解約告知の申入れをした場合は1月
 (2) 動産については、5月
 (期間の定めのある賃貸借の解約告知の申入れ)0618
第636条 賃貸借の期間の定めがある場合であっても、当事者の一方又は双方がその期間内に解約告知をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
 (賃借人の破産と解約告知の申入れ)
第637条 賃借人が破産宣告を受けた場合には、賃貸借の期間の定めがあるときであっても、賃貸人又は破産管財人は、第635条の規定により契約の解約告知の申入れをすることができる。
 前項の場合において、各当事者は、相手方に対し、契約の解約告知によって生じた損害の賠償を請求することができない。
 (解約告知の申入れの転借人に対する通知)
第638条 賃貸借契約が解約告知の申入れによって終了した場合において、その賃貸物が適法に転貸されていたときは、賃貸人は、転借人に対してその事由を通知しなければ、解約告知をもって転借人に対抗することができない。
 転借人が前項の通知を受けたときは、第635条第2項の規定を準用する。
 (黙示の更新)0619
第639条 賃貸借の期間が満了した後に賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人が相当の期間内に異議を述べなかったときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものとみなす。ただし、当事者は、第635条の規定により解約告知の申入れをすることができる。
 前項の場合において、従前の賃貸借について第三者が供した担保は、期間の満了によって消滅する。
 (賃料の延滞と解約告知)
第640条 建物その他の工作物の賃貸借において、賃借人の賃料の延滞額が2期分の賃料の額に達するときは、賃貸人は、契約を解約告知することができる。
第641条 建物その他の工作物の所有又は樹木の植栽、塩の採取若しくは牧畜を目的とした土地の賃貸借の場合についても、前条の規定を準用する。
 (土地の賃貸借の解約告知と地上建物等の担保物権者への通知)
第642条 前条の場合において、その地上にある建物その他の工作物が担保物権の目的になっていたときは、第288条の規定を準用する。
 (賃借人の更新請求権及び買取請求権)
第643条 建物その他の工作物の所有又は樹木の植栽、塩の採取若しくは牧畜を目的とした土地の賃貸借の期間が満了した場合において、建物、樹木その他の地上施設が現存していたときは、第283条の規定を準用する。
 (転借人の賃貸請求権及び買取請求権)
第644条 建物その他の工作物の所有又は樹木の植栽、塩の採取若しくは牧畜を目的とした土地の賃借人が適法にその土地を転貸した場合において、賃貸借及び転貸借の期間が同時に満了し、かつ、建物、樹木その他の地上施設が現存していたときは、転借人は、賃貸人に対し、従前の転貸借と同一の条件で賃貸するように請求することができる。
 前項の場合において、賃貸人が賃貸することを望まないときは、第283条第2項の規定を準用する。
 (地上権の目的である土地の賃借人の賃貸請求権及び買取請求権)
第645条 前条の規定は、地上権者がその土地を賃貸した場合について準用する。
 (賃借人の附属物買取請求権)参照:借地借家法33-01
第646条 建物その他の工作物の賃借人がその使用の便益のために賃貸人の同意を得てこれに附属した物があるときは、賃貸借の終了の時に、賃貸人に対し、その附属物の買取りを請求することができる。
 賃貸人から買い受けた附属物についても、前項と同様とする。
 (転借人の附属物買取請求権)参照:借地借家法33-02
第647条 建物その他の工作物の賃借人が適法に転貸した場合において、転借人がその使用の便益のために賃貸人の同意を得てこれに附属した物があるときは、転貸借の終了の時に、賃貸人に対し、その附属物の買取りを請求することができる。
 賃貸人から買い受け、又はその同意を得て賃借人から買い受けた附属物についても、前項と同様とする。
 (賃借地の附属物、果実等に対する法定質権)
第648条 土地の賃貸人が、賃貸借に係る債権に基づき、賃借地に附属し、又はその使用の便益に供した賃借人所有の動産及びその土地の果実を差し押えたときは、質権と同一の効力を有する。
 (賃借地上の建物に対する法定抵当権)
第649条 土地の賃貸人が、弁済期を経過した最後の2年分の賃料債権に基づき、その土地にある賃借人所有の建物を差し押えたときは、抵当権と同一の効力を有する。
 (賃借建物等の附属物に対する法定質権)
第650条 建物その他の工作物の賃貸人が、賃貸借に係る債権に基づき、その建物その他の工作物に附属した賃借人所有の動産を差し押えたときは、質権と同一の効力を有する。
第651条 削除
 (強行規定
第652条 第627条、第628条、第631条、第635条、第638条、第640条、第641条及び第643条から第647条までの規定に違反する約定で、賃借人又は転借人に不利なものは、その効力を有しない。
 (一時使用のための賃貸借の特例)
第653条 第628条、第638条、第640条、第646条から第648条まで、第650条及び前条の規定は、一時使用をするための賃貸借又は転貸借であることが明らかな場合には、適用しない。
 (準用規定)0616:0622
第654条 第610条第1項及び第615条から第617条までの規定は、賃貸借について準用する。