新私訳:韓国の民法 その14<第734条~第766条>

   第3章 事務管理
 (事務管理の内容)0697
第734条 義務なく他人のために事務を管理する者は、その事務の性質に従い、最も 本人に利益となる方法によって、これを管理しなければならない。
 管理者は、本人の意思を知り、又は知ることができるときは、その意思に適合するように管理しなければならない。
 管理者は、前2項の規定に違反して事務を管理した場合には、過失がないときでも、これによる損害を賠償する責任を負う。ただし、その管理行為が公共の利益に適合したときは、重大な過失がなければ、賠償する責任を負わない。
 (緊急事務管理0698
第735条 管理者は、他人の生命、身体、名誉又は財産に対する急迫な危害を免れさせるためにその事務を管理したときは、故意又は重大な過失がなければ、これによる損害を賠償する責任を負わない。
 (管理者の通知義務)0699
第736条 管理者は、管理を開始したときは、遅滞なく本人に通知しなければならない。ただし、本人が既にこれを知っていたときは、この限りでない。
 (管理者の管理の継続義務)0700
第737条 管理者は、本人又はその相続人若しくは法定代理人がその事務を管理する時まで、管理を継続しなければならない。ただし、管理の継続が本人の意思に反し、又は本人に不利であることが明らかなときは、この限りでない。
 (準用規定)0701
第738条 第683条から第685条までの規定は、事務管理について準用する。
 (管理者の費用償還請求権)0702
第739条 管理者は、本人のために必要費又は有益費を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
 管理者が本人のために必要又は有益な債務を負担したときは、第688条第2項の規定を準用する。
 管理者が本人の意思に反して管理したときは、本人が現に利益を受けている限度において、前2項の規定を準用する。
 (管理者の無過失損害補償請求権)
第740条 管理者は、事務管理を行うに当たって過失なく損害を受けたときは、本人が現に利益を受けている限度において、その損害の補償を請求することができる。
   第4章 不当利得
 (不当利得の内容)0703
第741条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、これによって他人に損害を加えた者は、その利益を返還しなければならない。
 (非債弁済)0705
第742条 債務がないことを知りながらこれを弁済したときは、その返還を請求することができない。
 (期限前の弁済)0706
第743条 弁済期にない債務を弁済したときは、その返還を請求することができない。ただし、債務者が錯誤によって弁済したときは、債権者は、これによって得た利益を返還しなければならない。
 (道義観念に適する非債弁済)
第744条 債務のない者が錯誤によって弁済した場合において、その弁済が道義観念に適するときは、その返還を請求することができない。
 (他人の債務の弁済)0707
第745条 債務者でない者が錯誤によって他人の債務を弁済した場合において、債権者が善意で証書を毀滅し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、弁済者は、その返還を請求することができない。
 前項の場合において、弁済者は、債務者に対して求償権を行使することができる。
 (不法原因給付)0708
第746条 不法な原因によって財産を給付し、又は労務を提供したときは、その利益の返還を請求することができない。ただし、その不法な原因が受益者についてのみ存するときは、この限りでない。
 (原物の返還が不能な場合と価額の返還及び転得者の責任)
第747条 受益者が受領した目的物を返還することができないときは、その価額を返還しなければならない。
 受益者がその利益を返還することができない場合には、受益者から無償でその利益に係る目的物を譲り受けた悪意の第三者は、前項の規定により返還する責任を負う。
 (受益者の返還の範囲)0703:0704
第748条 善意の受益者は、その得た利益が存する限度において、前条に規定する責任を負う。
 悪意の受益者は、その得た利益に利息を付して返還し、なお、損害があるときは、これを賠償しなければならない。
 (受益者の悪意の認定)
第749条 受益者は、利益を得た後に法律上の原因がないことを知ったときは、その時から悪意の受益者として利益の返還責任を負う。
 善意の受益者が敗訴したときは、その訴えを提起した時から悪意の受益者とみなす。
   第5章 不法行為
 (不法行為の内容)0709
第750条 故意又は過失による違法行為によって他人に損害を加えた者は、その損害を賠償する責任を負う。
 (財産以外の損害の賠償)0710
第751条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した者又はその他の精神上の苦痛を加えた者は、財産以外の損害についても賠償する責任を負う。
 裁判所は、前項の規定による損害賠償を定期金債務として支払うことを命じることができるほか、その履行を確保するために相当の担保の供与を命じることができる。
 (生命侵害による慰謝料)0711
第752条 他人の生命を侵害した者は、被害者の直系尊属直系卑属及び配偶者に対しては、財産上の損害がない場合でも、損害賠償の責任を負う。
 (未成年者の責任能力0712
第753条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、その行為の責任を弁識する知能を備えていないときは、賠償の責任を負わない。
 (心身喪失者の責任能力0713
第754条 心神喪失中に他人に損害を加えた者は、賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって心神喪失を招いたときは、この限りでない。
 (監督者の責任)0714
第755条 他人に損害を加えた者が前2条の規定により責任を負わない場合には、その者を監督する法定の義務を負う者がその損害を賠償する責任を負う。 ただし、監督義務を怠らなかった場合は、この限りでない。
 監督義務者に代わって前2条の規定により責任を負わない者を監督する者も、前項の責任を負う。
 (使用者の賠償責任)0715
第756条 他人を使用してある事務に従事させた者は、被用者がその事務の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事務の監督について相当の注意をした場合又は相当の注意をしても損害が生ずべき場合は、この限りでない。
 使用者に代わってその事務を監督する者も、前項の責任を負う。 
 前2項の場合において、使用者又は監督者は、被用者に対して求償権を行使することができる。
 (注文者の責任)0716
第757条 注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指示について注文者に重大な過失があるときは、この限りでない。
 (工作物等の占有者及び所有者の責任)0717
第758条 工作物の設置又は保存の瑕疵によって他人に損害を加えたときは、工作物の占有者は、損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の防止に必要な注意を怠らなかったときは、その所有者が損害を賠償する責任を負う。
 前項の規定は、樹木の栽植又は保存に瑕疵がある場合について準用する。
 前2項の場合において、占有者又は所有者は、その損害の原因について責任のある者に対して求償権を行使することができる。
 (動物の占有者の責任)0718
第759条 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従ってその保管に相当の注意を怠らなかったときは、この限りでない。
 占有者に代わって動物を保管した者も、前項の責任を負う。 
 (共同不法行為者の責任)0719
第760条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、連帯してその損害を賠償する責任を負う。
 共同でない数人の行為のうちいずれの者の行為がその損害を加えたかを知ることができないときも、前項と同様とする。
 教唆者及び幇助者は、共同行為者とみなす。
 (正当防衛及び緊急避難)0720
第761条 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の利益を防衛するため、やむを得ず他人に損害を加えた者は、賠償する責任を負わない。ただし、被害者は、不法行為について損害の賠償を請求することができる。
 前項の規定は、急迫な危難を避けるためやむを得ず他人に損害を加えた場合について準用する。
 (損害賠償請求権における胎児の地位)0721
第762条 胎児は、損害賠償の請求権については、既に出生したものとみなす。
 (準用規定)0722
第763条 第393条、第394条、第396条及び第399条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
 (名誉毀損の場合の特則)0723
第764条 他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉の回復のために適当な処分を命じることができる。
 (賠償額の軽減請求)
第765条 この章の規定による賠償義務者は、その損害が故意又は重大な過失によるものでなく、かつ、その賠償によって賠償者の生計に重大な影響を及ぼすことになる場合には、裁判所にその賠償額の軽減を請求することができる。
 裁判所は、前項の規定による請求があるときは、債権者及び債務者の経済状態並びに損害の原因等を考慮し、賠償額を軽減することができる。
 (損害賠償請求権の消滅時効0724
第766条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人がその損害及び加害者を知った日から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
 不法行為をした日から10年を経過したときも、前項と同様とする。
 未成年者が性暴力、性醜行、性戯弄その他の性的侵害を受けた場合において、これによる損害賠償請求権の消滅時効は、その者が成年になるときまで進行しない。