新私訳:韓国の民法 その15<第767条~第843条>

  第4編 親族
   第1章 総則
 (親族の定義)0725
第767条 配偶者、血族及び姻族を親族とする。
 (血族の定義)
第768条 自己の直系尊属及び直系卑属を直系血族とし、自己の兄弟姉妹及びその直系卑属並びに自己の直系尊属の兄弟姉妹及びその直系卑属を傍系血族とする。
 (姻族の定義)
第769条 血族の配偶者、配偶者の血族及び配偶者の血族の配偶者を姻族とする。
 (血族の親等の計算)0726
第770条 直系血族については、自己から直系尊属に至り、又は自己から直系卑属に至る世代の数をもって、その親等を定める。
 傍系血族については、自己から共通の直系尊属に至る世代の数及びその直系尊属からその直系卑属に至る世代の数を通算して、その親等を定める。
 (姻族の親等の計算)0726
第771条 姻族の親等は、配偶者の血族については配偶者のその血族に対する親等により、血族の配偶者についてはその血族に対する親等による。
 (養子との親系と親等)0727
第772条 養子と養父母並びにその血族及び姻族の間の親族関係及び親等は、養子縁組をした時から嫡出子と同一であるものとみなす。
2 養子の配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者は、前項の規定による養子の親族関係を基準にして、親等を定める。
第773条及び第774条 削除
 (姻族関係等の消滅)0728:0749
第775条 姻族関係は、婚姻の取消し又は離婚によって終了する。
 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が再婚したときも、前項と同様とする。
 (養子縁組による親族関係の消滅)0729
第776条 養子縁組による親族関係は、養子縁組の取消し又は離縁によって終了する。
 (親族の範囲)0725
第777条 親族関係による法律上の効力は、この法又は他の法律に特別な規定がない限り、次に掲げる者に及ぶ。
 (1)8親等以内の血族
 (2)4親等以内の姻族
 (3) 配偶者
   第2章 家族の範囲並びに子の姓及び本
第778条 削除
 (家族の範囲)
第779条 次に掲げる者は、家族とする。
 (1) 配偶者、直系血族及び兄弟姉妹
 (2) 直系血族の配偶者、配偶者の直系血族及び配偶者の兄弟姉妹
 前項第2号に掲げる者については、生計を同じくする場合に限る。
第780条 削除
 (子の姓及び本)0790:0791
第781条 子は、父の姓及び本による。ただし、父母が婚姻の届出時に母の姓及び本による旨協議した場合には、母の姓及び本による。
 父が外国人である場合は、子は、母の姓及び本によることができる。
 父の知れない子は、母の姓及び本による。
 父母の知れない子は、裁判所の許可を得て、姓及び本を創設する。ただし、姓及び本を創設した後に父又は母が知れたときは、父又は母の姓及び本によることができる。
 嫡出でない子が認知された場合には、子は、父母の協議によって従前の姓及び本を引き続き使用することができる。 ただし、父母が協議をすることができず、又は協議が調わない場合には、子は、裁判所の許可を得て、従前の姓及び本を引き続き使用することができる。
 子の福利のために子の姓及び本を変更する必要があるときは、父、母又は子の請求により、裁判所の許可を得て、これを変更することができる。 ただし、子が未成年者であって、法定代理人が請求することができない場合は、第777条の規定による親族又は検事が請求することができる。
第782条から第799条まで 削除
   第3章 婚姻
    第1節 婚約
 (婚約の自由)
第800条 成年に達した者は、自由に婚約をすることができる。
 (婚約年齢)
第801条 18歳になった者は、父母又は未成年後見人の同意を得て、婚約をすることができる。この場合において、第808条の規定を準用する。
 成年後見と婚約)
第802条 成年被後見人は、父母又は成年後見人の同意を得て、婚約をすることができる。この場合において、第808条の規定を準用する。
 (婚約の強制履行の禁止)
第803条 婚約については、強制履行を請求することができない。
 (婚約の解除事由)
第804条 当事者の一方が次に掲げる場合には、相手方は、婚約を解除することができる。
 (1) 婚約後に資格停止以上の刑を宣告された場合
 (2) 婚約後に成年後見開始又は保佐開始の審判を受けた場合
 (3) 性病又は不治の精神病その他の不治の疾病がある場合
 (4) 婚約後に他の者と婚約又は婚姻をした場合
 (5) 婚約後に他の者と姦淫した場合
 (6) 婚約後1年以上生死が不明な場合
 (7) 正当な理由なく、婚姻を拒絶し、又はその時期を遅らせる場合
 (8) その他重大な事由がある場合
 (婚約の解除の方法)
第805条 婚約の解除は、相手方に対する意思表示によって行う。ただし、相手方に対して意思表示をすることができないときは、その解除の原因があることを知った時に解除されたものとみなす。
 (婚約の解除と損害賠償請求権)
第806条 婚約を解除したときは、当事者の一方は、過失のある相手方に対し、これによる損害の賠償を請求することができる。
 前項の場合には、財産上の損害のほか、精神上の苦痛に対しても損害賠償の責任を負う。
 精神上の苦痛に対する賠償請求権は、譲渡し、又は承継することができない。ただし、当事者間で既にその賠償に関する契約が成立し、又は訴えを提起した後においては、この限りでない。
    第2節 婚姻の成立
 (婚姻年齢)0731
第807条 18歳になった者は、婚姻をすることができる。
 (同意が必要な婚姻)0738
第808条 未成年者が婚姻をする場合には、父母の同意を得なければならず、この場合において、父母の一方が同意権を行使することができないときは他の一方の同意を得なければならず、父母双方が同意権を行使することができないときは未成年後見人の同意を得なければならない。
 成年被後見人は、父母又は成年後見人の同意を得て、婚姻をすることができる。
 (近親婚等の禁止)0734~0736
第809条 8親等以内の血族(特別養子の養子縁組前の血族を含む。)の間では、婚姻をすることができない。
 6親等以内の血族の配偶者、配偶者の6親等以内の血族若しくは配偶者の4親等以内の血族の配偶者である姻族であり、又はこれらの姻族であった者との間では、婚姻をすることができない。
 6親等以内の養父母系の血族であった者及び4親等以内の養父母系の姻族であった者との間では、婚姻をすることができない。
 (重婚の禁止)0732
第810条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
第811条 削除
 (婚姻の成立)0739
第812条 婚姻は、家族関係の登録等に関する法律の定めるところにより届出をすることによって、その効力を生じる。
 前項の届出は、当事者双方及び成年である証人2人が連署した書面で、しなければならない。
 (婚姻届の審査)0740
第813条 婚姻の届出は、その婚姻が第807条から第810条まで及び前条第2項の規定並びに他の法令に違反しないときは、受理しなければならない。
 (外国における婚姻の届出)0741
第814条 外国における本国民間の婚姻は、その外国に駐在する大使、公使又は領事に届出をすることができる。
 前項の届出を受理した大使、公使又は領事は、遅滞なくその届出書類を本国の在外国民家族関係登録事務所に送付しなければならない。
    第3節 婚姻の無効及び取消し
 (婚姻の無効)0742
第815条 婚姻は、次に掲げる場合には、無効とする。 
 (1) 当事者間に婚姻の合意がないとき。
 (2) 婚姻が第809条第1項の規定に違反したとき。
 (3) 当事者間に直系姻族関係があり、又はあったとき。
 (4) 当事者間に養父母系の直系血族関係があったとき。
 (婚姻の取消し)0743:0744:0747-01
第816条 婚姻は、次に掲げる場合には、裁判所にその取消しを請求することができる。
 (1) 婚姻が第807条から第809条(前条の規定により婚姻が無効となる部分を除く。次条及び第820条において同じ。)まで又は第810条の規定に違反したとき。
 (2) 婚姻の時に、当事者の一方に夫婦生活を継続することができない悪疾その他の重大な事由あることを知らなかったとき。
 (3) 詐欺又は強迫によって婚姻の意思表示をしたとき。
 (年齢違反の婚姻等の取消請求権者)0744:0745
第817条 婚姻が、第807条又は第808条の規定に違反したときは当事者又はその法定代理人がその取消しを請求することでき、第809条の規定に違反したときは当事者又はその直系尊属若しくは4親等以内の傍系血族がその取消しを請求することができる。
 (重婚の取消請求権者)0744
第818条 当事者、その配偶者、直系血族、4親等以内の傍系血族又は検事は、第810条の規定に違反した婚姻の取消しを請求することができる。
 (同意のない婚姻の取消請求権の消滅)
第819条 第808条の規定に違反した婚姻は、その当事者が19歳になった後若しくは成年後見終了の審判があった後3箇月が経過し、又は婚姻中に妊娠した場合は、その取消しを請求することができない。
 (近親婚等の取消請求権の消滅)0744-01
第820条 第809条の規定に違反した婚姻は、その当事者間で婚姻中に妊娠したときは、その取消しを請求することができない。
第821条 削除
 (悪疾等の事由による婚姻の取消請求権の消滅)
第822条 第816条第2号の規定に該当する事由のある婚姻は、相手方がその事由のあることを知った日から6月を経過したときは、その取消しを請求することができない。
 (詐欺又は強迫による婚姻の取消請求権の消滅)0747-02
第823条 詐欺又は強迫による婚姻は、詐欺であることを知った日又は強迫を免れた日から3月を経過したときは、その取消しを請求することができない。
 (婚姻の取消しの効力)0748-01
第824条 婚姻の取消しの効力は、既往に遡及しない。
 (婚姻の取消しと子の養育等)0749
第824条の2 第837条及び第837条の2の規定は、婚姻の取消しの場合における子の養育責任及び面接交渉権について準用する。
 (婚姻の無効及び取消しと損害賠償請求権)
第825条 第806条の規定は、婚姻の無効又は取消しの場合について準用する。
    第4節 婚姻の効力
     第1款 一般的効力
 (夫婦間の義務)0752
第826条 夫婦は、同居し、互いに扶養し、協力しなければならない。ただし、正当な理由によって一時的に同居しない場合については、互いに容認しなければならない。
 夫婦の同居場所は、夫婦の協議によって定める。ただし、協議が調わない場合は、当事者の請求により、家庭裁判所がこれを定める。
 (成年擬制
第826条の2 未成年者が婚姻をしたときは、成年者とみなす。
 (夫婦間の家事代理権)
第827条 夫婦は、日常の家事について、互いに代理権を有する。
 前項の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
第828条 削除
     第2款 財産上の効力
 (夫婦財産の約定及びその変更)0755:0758:0576:0759
第829条 夫婦が婚姻の成立前にその財産について別段の約定をしなかったときは、その財産関係は、次条から第833条までの規定に定めるところによる。
 夫婦が婚姻の成立前にその財産について約定をしたときは、婚姻中これを変更することができない。ただし、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、変更することができる。
 前項の約定により夫婦の一方が他の一方の財産を管理する場合において、不適当な管理によってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自ら管理することを裁判所に請求することができ、また、その財産が夫婦の共有であるときは、その分割を請求することができる。
 夫婦がその財産について別段の約定をしたときは、婚姻の成立までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人又は第三者に対抗することができない。
 第2項若しくは第3項の規定又は約定により、管理者を変更し、又は共有財産を分割したときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人又は第三者に対抗することができない。
 (特有財産及び帰属不明の財産)0762
第830条 夫婦の一方が婚姻前から有する固有財産及び婚姻中に自己の名で取得した財産は、その特有財産とする。
 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、夫婦の共有と推定する。
 (特有財産の管理等)
第831条 夫婦は、その特有財産を各自が管理し、使用し、及び収益する。
 (家事による債務の連帯責任)0761
第832条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによる債務について連帯責任を負う。ただし、あらかじめ第三者に対して他の一方が責任を負わない旨を明示したときは、この限りでない。
 (生活費用)0760
第833条 夫婦の共同生活に必要な費用については、当事者間に特別な約定がないときは、夫婦が共同で負担する。
    第5節 離婚
     第1款 協議上の離婚
 (協議上の離婚)0763
第834条 夫婦は、協議によって、離婚をすることができる。
 成年後見と協議上の離婚)0764
第835条 成年被後見人の協議上の離婚については、第808条第2項の規定を準用する。
 (離婚の成立及び届出の方式)0764
第836条 協議上の離婚は、家庭裁判所の確認を受けて、家族関係の登録等に関する法律の定めるところにより届出をすることによって、効力を生じる。  
 前項の届出は、当事者双方及び成年者である証人2人の連署した書面によって、しなければならな。 
 (離婚の手続)
第836条の2 協議上の離婚をしようとする者は、家庭裁判所が提供する離婚に関する案内を受けなければならず、家庭裁判所は、必要な場合には、当事者に対して、相談に関し専門的な知識経験を有する専門相談員の相談を受けるように、勧告することができる。
 家庭裁判所に離婚意思の確認を申請した当事者は、前項の案内を受けた日から次に定める期間が経過した後に、離婚意思の確認を受けることができる。
 (1) 養育しなければならない子(胎児を含む。以下この条において同じ。)がいる場合には、3箇月
 (2) 前号に該当しない場合には、1箇月

 家庭裁判所は、暴力によって当事者の一方に耐え難い苦痛が予想される等離婚をしなければならない急迫な事情がある場合には、前項の期間を短縮し、又は免除することができる。
 養育しなければならない子がいる場合には、当事者は、次条の規定による子の養育及び第909条第4項の規定による子の親権者の決定に関する協議書又は次条及び第909条第4項の規定による家庭裁判所の審判の正本を提出しなければならない。
 家庭裁判所は、当事者が協議した養育費の負担に関する内容を確認する養育費負担調書を作成しなければならない。 この場合において、養育費負担調書の効力については、家事訴訟法第41条の規定を準用する。
 (離婚と子の養育責任)0766
第837条 当事者は、その子の養育に関する事項を協議によって定める。
 前項の協議は、次に掲げる事項を含まなければならない。
 (1) 養育者の決定
 (2) 養育費用の負担
 (3) 面接交渉権の行使の可否及びその方法
 第1項の規定による協議が子の福利に反する場合には、家庭裁判所は、補正を命じ、又は職権で、その子の意思、年齢及び父母の財産状況その他の事情を考慮し、養育に必要な事項を定める。
 養育に関する事項の協議が調わず、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、職権で又は当事者の請求により、これについて決定する。この場合おいて、家庭裁判所は、前項の事情を考慮しなければならない。
 家庭裁判所は、子の福利のために必要と認める場合には、父、母、子及び検事の請求により又は職権で、子の養育に関する事項を変更し、又は他の適当な処分をすることができる。
 第3項から前項までの規定は、養育に関する事項以外では、父母の権利義務に変更を及ぼさない。
 (面接交渉権)
第837条の2 子を直接養育しない父母の一方と子は、互いに面接交渉をすることができる権利を有する。
 子を直接養育しない父母の一方の直系尊属は、その父母の一方が死亡し、又は疾病、外国居住その他のやむを得ない事情によって子と面接交渉をすることができない場合には、家庭裁判所に子との面接交渉を請求することができる。 この場合において、家庭裁判所は、子の意思、面接交渉を請求した者と子の関係、請求の動機その他の事情を考慮しなければならない。
3 家庭裁判所は、子の福利のために必要なときは、当事者の請求により又は職権で、面接交渉を制限し、排除し、又は変更することができる。
 (詐欺又は強迫による離婚の取消請求権)0764
第838条 詐欺又は強迫によって離婚の意思表示をした者は、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
 (準用規定)0764
第839条 第823条の規定は、協議上の離婚について準用する。
 (財産分与請求権)0768
第839条の2 協議上の離婚をした者の一方は、他の一方に対して財産の分与を請求することができる。
 前項の財産の分与について協議が調わず、又は協議することができないときは、家庭裁判所は、当事者の請求により、当事者双方の協力によって築いた財産の額その他の事情を考慮し、分与の額及び方法を定める。
 第1項の規定による財産分与請求権は、離婚した日から2年を経過したときは、消滅する。
 (財産分与請求権保全のための詐害行為取消権)
第839条の3 夫婦の一方が、他の一方の財産分与請求権の行使を害することを知りながら、財産権を目的とする法律行為をしたときは、他の一方は、第406条第1項の規定を準用して、その取消し及び原状回復を家庭裁判所に請求することができる。
 前項の規定による訴えは、第406条第2項に規定する期間内に提起しなければならない。
     第2款 裁判上の離婚
 (裁判上の離婚の原因)0770-01
第840条 夫婦の一方は、次に掲げる場合には、家庭裁判所に離婚を請求することができる。
 (1) 配偶者に不貞な行為があったとき。
 (2) 配偶者が悪意で他の一方を遺棄したとき。
 (3) 配偶者又はその直系尊属から著しく不当な待遇を受けたとき。
 (4) 自己の直系尊属が配偶者から著しく不当な待遇を受けたとき。
 (5) 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
 (6) その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
 (不貞による離婚請求権の消滅)
第841条 前条第1号に規定する事由については、他の一方が事前に同意をし、若しくは事後に宥恕をしたとき、又はこれを知った日から6月若しくはその事由があった日から2年を経過したときは、離婚を請求することができない。
 (その他の事由による離婚請求権の消滅)
第842条 第840条第6号の事由については、他の一方がこれを知った日から6月又はその事由があった日から2年を経過したときは、離婚を請求することができない。
 (準用規定)0771
第843条 裁判上の離婚による損害賠償責任については第806条の規定を準用し、裁判上の離婚による子の養育責任等については第837条の規定を準用し、裁判上の離婚による面接交渉権については第837条の2の規定を準用し、裁判上の離婚による財産分与請求権については第839条の2の規定を準用し、裁判上の離婚による財産分与請求権の保全のための詐害行為取消権については第839条の3の規定を準用する。