新私訳:韓国の民法 その9<第460条~第526条>

    第6節 債権の消滅
     第1款 弁済
 (弁済の提供の方法)0493
第460条 弁済は、債務の内容に従った現実の提供によってしなければならない。ただし、債権者があらかじめ弁済を受領することを拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要する場合は、弁済の準備が完了したことを通知して、その受領を催告すれば足りる。
 (弁済の提供の効果)0492
第461条 弁済の提供は、その時から債務の不履行の責任を免れさせる。
 (特定物の現状引渡し)0483
第462条 特定物の引渡しが債権の目的であるときは、債務者は、履行期の現状のままでその物を引き渡さなければならない。
 (弁済としての他人の物の引渡し)0475
第463条 債務の弁済として他人の物を引き渡した債務者は、更に有効な弁済をしなければ、その物の返還を請求することができない。
 (譲渡能力のない所有者の物の引渡し)
第464条 譲渡する能力のない所有者が債務の弁済として物を引き渡した場合において、その弁済が取り消されたときも、更に有効な弁済をしなければ、その物の返還を請求することができない。
 (債権者の善意の消費及び譲渡と求償権)0476
第465条 前2条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は他人に譲り渡したときは、その弁済は、効力を有する。
 前項の場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、債務者に対して求償権を行使することができる。
 (代物弁済)0482
第466条 債務者が債権者の承諾を得て本来の債務の履行に代えて他の給付をしたときは、弁済と同じ効力を有する。 
 (弁済の場所)0484-01:商法516
第467条 債務の性質又は当事者の意思表示により弁済の場所を定めなかったときは、特定物の引渡しは、債権の成立の時にその物が存在した場所においてしなければならない。
 前項に規定する場合において、特定物の引渡し以外の債務の弁済は、債権者の現在の住所においてしなければならない。ただし、営業に関する債務の弁済は、債権者の現在の営業所においてしなければならない。
 (弁済期前の弁済)
第468条 当事者の別段の意思表示がないときは、弁済期前であっても、 債務者は、弁済をすることができる。ただし、相手方の損害は、賠償しなければならない。
 (第三者の弁済)0474-01.02.04
第469条 債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、債務の性質又は当事者の意思表示により第三者の弁済を許さないときは、この限りでない。
 利害関係がない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。
 (債権の準占有者に対する弁済)0478
第470条 債権の準占有者に対する弁済は、弁済者が善意で、かつ、過失がないときに限り、効力を有する。
 (領収証の所持者に対する弁済)
第471条 領収証を所持した者に対する弁済は、その所持者が弁済を受領する権限を有しない場合においても、効力を有する。ただし、弁済者がその権限のないことを知り、又は知ることができた場合は、この限りでない。
 (権限のない者に対する弁済)0479
第472条 前2条の場合のほか、弁済を受領する権限のない者に対する弁済は、 債権者が利益を受けた限度において、効力を有する。
 (弁済の費用の負担)0485
第473条 弁済の費用は、別段の意思表示がないときは、債務者の負担とする。ただし、債権者の住所の移転その他の行為によって弁済の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。
 (領収証の請求権)0486
第474条 弁済者は、弁済を受領する者に対して領収証を請求することができる。
 (債権証書の返還請求権)0487
第475条 債権証書がある場合において、弁済者が債務の全部を弁済したときは、債権証書の返還を請求することができる。債権が弁済以外の事由によって全部が消滅したときも、同様とする。
 (指定弁済充当)0486-01~03
第476条 債務者が同一の債権者に対して同種のものを目的とした数個の債務を負担した場合において、弁済の提供がその債務の全部を消滅させることができないときは、弁済者は、その時に債務を指定してその弁済に充当することができる。
 弁済者が前項に規定する指定をしないときは、弁済を受領する者は、その時に債務を指定して弁済に充当することができる。ただし、弁済者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
 前2項の規定による弁済の充当は、相手方に対する意思表示によってする。
 (法定弁済充当)0486.04
第477条 当事者が弁済に充当する債務を指定しなかったときは、次に定めるところによる。
 (1) 債務の中に履行期が到来したものと到来していないものがあるときは、履行期が到来した債務の弁済に充当する。
 (2) 債務の全部の履行期が到来しているとき、又は到来していないときは、債務者のために弁済の利益が多い債務の弁済に充当する。
 (3) 債務者のために弁済の利益が同じときは、履行期が先に到来した債務又は先に到来すべき債務の弁済に充当する。
 (4) 前2号に掲げる事項が同じときは、その債務の額に応じて各債務の弁済に充当する。
 (不足弁済の充当)0491
第478条 1個の債務に数個の給付を要する場合において、弁済者がその債務の全部を消滅させることができない給付をしたときは、前2条の規定を準用する。
 (費用、利息及び元本に対する弁済の充当の順序)0489
第479条 債務者が1個又は数個の債務の費用及び利息を支払うべき場合において、弁済者がその全部を消滅させることができない給付をしたときは、費用、利息及び元本の順で弁済に充当しなければならない。
 前項の場合においては、第477条の規定を準用する。
 (弁済者の任意代位)0499:0500
第480条 債務者のために弁済した者は、弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。
 前項の場合において、第450条から第452条までの規定を準用する。
 (弁済者の法定代位)0499
第481条 弁済をする正当な利益を有する者は、弁済により当然に債権者に代位する。
 (弁済者の代位の効果及び代位者間の関係)0501
第482条 前2条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づき求償することができる範囲において、債権及びその担保に関する権利を行使することができる。
 前項の規定による権利の行使は、次に定めるところによらなければならない。
 (1) 保証人は、あらかじめ伝貰権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、伝貰物又は抵当物について権利を取得した第三者に対して債権者に代位することができない。
 (2) 第三取得者は、保証人に対して債権者に代位することができない。
 (3) 第三取得者の一人は、各不動産の価額に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
 (4) 自己の財産を他人の債務の担保として供した者が数人ある場合においては、前号の規定を準用する。
 (5) 自己の財産を他人の債務の担保として供した者と保証人との間においては、その人数に応じて債権者に代位する。ただし、自己の財産を他人の債務の担保として供した者が数人あるときは、保証人の負担部分を除き、その残額について各財産の価額に応じて代位する。 この場合において、その財産が不動産であるときは、第1号の規定を準用する。
 (一部の代位)0502-01.04
第483条 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する。
 前項の場合において、債務の不履行を原因とする契約の解約告知又は解除は、債権者のみがすることができ、債権者は、代位者に対してその弁済をした価額及び利息を償還しなければならない。
 (代位弁済と債権証書及び担保物)0503
第484条 債権の全部の代位弁済を受けた債権者は、その債権に関する証書及び占有する担保物を代位者に交付しなければならない。
 債権の一部について代位弁済があるときは、債権者は、債権証書にその代位を記入し、自己が占有する担保物の保存について、代位者の監督を受けなければならない。
 (債権者の担保の喪失及び減少行為と法定代位者の免責)0504-01
第485条 第481条の規定により代位する者がある場合において、債権者の故意又は過失によって担保が喪失し、又は減少したときは、代位する者は、その喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる。
 (弁済以外の方法による債務の消滅と代位)
第486条 第三者が供託その他自己の財産をもって債務者の債務を免れさせた場合においても、第480条から前条までの規定を準用する。
     第2款 供託
 (弁済供託の要件及び効果)0494
第487条 債権者が弁済を受領せず、又は受領することができないときは、弁済者は、債権者のために弁済の目的物を供託して、その債務を免れることができる。 弁済者が過失なく債権者を知ることができない場合も、同様とする。
 (供託の方法)0495
第488条 供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。
 供託所について法律に特別な定めがないときは、裁判所は、弁済者の請求により、供託所を指定し、供託物の保管者を選任しなければならない。
 供託者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。
 (供託物の取戻し)0496
第489条 債権者が供託を承認し、若しくは供託所に対して供託物を受領する旨を通知し、又は供託有効の判決が確定するまでは、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす。
 前項の規定は、質権又は抵当権が供託によって消滅したときには、適用しない。
 (自助売却金の供託)0497
第490条 弁済の目的物が供託に適さず、若しくは滅失し、若しくは毀損するおそれがあり、又は供託に過分な費用を要する場合においては、弁済者は、裁判所の許可を得て、その物を競売し、又は市価で売却して代金を供託することができる。
 (供託物の受領と反対義務の履行0498-02
第491条 債務者が債権者の反対義務の履行と同時に弁済をすべき場合には、債権者は、その義務の履行をしなければ、供託物を受領することができない。
     第3款 相殺
 (相殺の要件)0505
第492条 双方が互いに同種のものを目的とした債務を負担した場合において、その双方の債務の履行期が到来したときは、各債務者は、対等額について相殺することができる。ただし、債務の性質が相殺を許さないときは、この限りでない。
 前項の規定は、当事者が別段の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示をもって善意の第三者に対抗することができない。
 (相殺の方法及び効果)0506
第493条 相殺は、相手方に対する意思表示をもってする。 この意思表示には、条件又は期限を付することができない。
 相殺の意思表示があるときは、各債務が相殺をすることができる時に対等額について消滅したものとみなす。
 (履行地を異にする債務の相殺)0507
第494条 各債務の履行地が異なる場合であっても、相殺をすることができる。ただし、相殺をする当事者は、相手方に対し、相殺による損害を賠償しなければならない。
 (消滅時効の完成した債権による相殺)0508
第495条 消滅時効が完成した債権がその完成前に相殺をすることができたものであるときは、その債権者は、相殺をすることができる。
 (不法行為債権を受働債権とする相殺の禁止)0509(新0509)
第496条 債務が故意の不法行為によるものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
 (差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)0510
第497条 債権が差押えをすることができないものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
 (支払禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)0511-01
第498条 支払を禁止する命令を受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって、その命令を申し立てた債権者に対抗することができない。
 (準用規定)0512:0512の2
第499条 第476条から第479条までの規定は、相殺について準用する。
     第4款 更改 
 (更改の要件及び効果)0513
第500条 当事者が債務の重要な部分を変更する契約をしたときは、従前の債務は、更改により消滅する。
 (債務者の交替による更改)0514-01
第501条 債務者の交替による更改は、債権者と更新後の債務者との契約によってすることができる。ただし、更新前の債務者の意思に反してすることができない。
 (債権者の交替による更改)0515-02
第502条 債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、これをもって第三者に対抗することができない。
 (債権者の交替による更改と債務者の承諾の効果)
第503条 第451条第1項の規定は、債権者の交替による更改について準用する。
 (従前の債務が消滅しない場合)
第504条 更改による新たな債務が原因の不法又は当事者の知ることができない事由によって成立せず、又は取り消されたときは、従前の債務は、消滅しない。
 (新たな債務への担保の移転)0518-01
第505条 更改の当事者は、従前の債務の担保を、その目的の限度において、新たな債務の担保とすることができる。ただし、第三者が供した担保は、その承諾を得なければならない。
     第5款 免除
 (免除の要件及び効果)0519
第506条 債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、債権は、消滅する。ただし、免除をもって正当な利益を有する第三者に対抗することができない。
     第6款 混同
 (混同の要件及び効果)0520
第507条 債権と債務が同一の主体に帰属したときは、債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
    第7節 指図債権
 (指図債権の譲渡の方式)0520の2
第508条 指図債権は、その証書に裏書をして譲受人に交付する方式によって譲り渡すことができる。
 (戻り裏書)0520の3→手形法11-3
第509条 指図債権は、その債務者に対しても、裏書をして譲り渡すことができる。
 裏書により指図債権を譲り受けた債務者は、更に裏書をしてこれを譲り渡すことができる。
 (裏書の方式)0520の3→手形法13
第510条 裏書は、証書又はその補充紙にその意思を記載し、裏書人が署名若又は記名押印することによってする。
 裏書は、被裏書人を指定しないですることができ、又は裏書人の署名若しくは記名押印のみとすることができる。
 (白地式裏書の処理の方式)0520の3→手形法14-2
第511条 裏書が前条第2項の規定による白地式によるときは、所持人は、次に掲げる方式によって処理することができる。
 (1) 自己又は他人の名称を被裏書人として記載することができる。
 (2) 白地式によって又は他人を被裏書人として表示して、更に証書に裏書をすることができる。
 (3) 被裏書人を記載しないで、裏書のない証書を第三者に交付して譲り渡すことができる。
 (所持人払いの裏書の効力)
第512条 所持人払いの裏書は、白地式裏書と同じ効力を有する。
 (裏書の資格授与力)0520の4:手形法16
第513条 証書の占有者が裏書の連続によりその権利を証明するときは、適法な所持人とみなす。 最後の裏書が白地式である場合も、同じ。
 白地式裏書の次に他の裏書があるときは、その裏書人は、白地式裏書によって証書を取得したものとみなす。
 抹消された裏書は、裏書の連続については、その記載がないものとみなす。
 (同前-善意取得)0520の5
第514条 何人も、証書の適法な所持人に対して、その返還を請求することができない。ただし、所持人が取得した時に譲渡人が権利を有しないことを知り、又は重大な過失により知らなかったときは、この限りでない。
 (移転の裏書と人的抗弁)0520の6
第515条 指図債権の債務者は、所持人の前者に対する人的関係の抗弁をもって、所持人に対抗することができない。ただし、所持人がその債務者を害することを知って指図債権を取得したときは、この限りでない。
 (弁済の場所)0520の8
第516条 証書に弁済の場所を定めなかったときは、債務者の現在の営業所を弁済の場所とする。 営業所がないときは、現在の住所を弁済の場所とする。
 (証書の提示と履行遅滞0520の9
第517条 証書に弁済の期限の記載がある場合であっても、その期限が到来した後に所持人が証書を提示して履行を請求した時から、債務者は、遅滞の責任を負う。
 (債務者の調査の権利義務)0520の10
第518条 債務者は、裏書の連続の存否を調査すべき義務があるとともに、裏書人の署名又は押印の真偽及び所持人の真偽を調査する権利はあるが、義務はない。ただし、債務者が弁済する時に、所持人が権利者でないことを知り、又は重大な過失によって知ることができなかったときは、その弁済は、無効とする。
 (弁済と証書の交付)
第519条 債務者は、証書と交換してのみ弁済すべき義務を負う. 
 (領収の記載の請求権)
第520条 債務者は、弁済する時に、所持人に対して、証書に領収を証明する記載をすることを請求することができる。
 一部の弁済の場合において、債務者の請求があったときは、債権者は、証書にその旨を記載しなければならない。
 (公示催告手続による証書の失効)0520の11
第521条 滅失した証書又は所持人の占有を離れた証書は、公示催告の手続によって無効とすることができる。
 (公示催告手続による供託及び弁済)0520の12
第522条 公示催告の申立てがあったときは、債務者に債務の目的物を供託させることができ、又は所持人が相当な担保を供して弁済をさせることができる。
    第8節 無記名債権
 (無記名債権の譲渡の方式)0520の20
第523条 無記名債権は、譲受人にその証書を交付することによって、譲渡の効力を有する。
 (準用規定)0520の15:0520の16:0520の18:0520の20
第524条 第514条から第522条までの規定は、無記名債権について準用する。
 (記名式所持人払債権)
第525条 債権者を指定して、所持人に対しても弁済すべきことを付記した証書は、無記名債権と同じ効力を有する。
 (免責証書)
第526条 第516条、第517条及び第520条の規定は、債務者が証書の所持人に弁済して、その責任を免れる目的で発行した証書について準用する。