新私訳:韓国の民法 その6<第211条~第278条>

   第3章 所有権  
    第1節 所有権の限界 
 (所有権の内容)0206
第211条 所有者は、法律の範囲内において、その所有物を使用し、 収益し、及び処分する権利を有する。  
 (土地所有権の範囲)0207
第212条 土地の所有権は、正当な利益のある範囲内において、土地の上下に及ぶ。
 (所有物の返還請求権)
第213条 所有者は、その所有に属する物を占有する者に対して返還を請求することができる。ただし、占有者は、その物を占有する権利を有するときは、返還を拒否することができる。
 (所有物の妨害除去請求権及び妨害予防請求権)
第214条 所有者は、所有権を妨害する者に対して妨害の除去を請求することができ、所有権を妨害するおそれがある行為をする者に対してその予防又は損害賠償の担保を請求することができる。 
 (建物の区分所有)建物の区分所有等に関する法律2条4項:11条:19条
第215条 数人が1棟の建物を区分して各々その一部分を所有するときは、建物及びその附属物のうち共用する部分は、それらの者の共有と推定する。
 共用部分の保存に要する費用その他の負担は、各自の所有する部分の価額に応じて分担する。 
 (隣地の使用請求権)0209-01.04
第216条  土地の所有者は、土地の境界又はその付近において障壁又は建物を築造し、又は修繕するために必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住居に立ち入ることはできない。
 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、補償を請求することができる。
 (煤煙等による隣地への妨害の禁止) 
第217条 土地の所有者は、煤煙、蒸気、液体、音響、振動その他これらに類するものにより隣地の使用を妨害し、又は隣家の居住者の生活に苦痛を与えないように、適当な措置をする義務を負う。
 隣家の居住者は、前項に規定する事態が隣地の通常の用途に照らし適当なものであるときは、これを忍容する義務を負う。
 (水道等の設置権)0213の2
218 土地の所有者は、他人の土地を通過しなければ必要な水道、排水管、ガス管、電線等を設置することができず、又はその設置に過分な費用を要する場合には、他人の土地を通過して設置することができる。ただし、これによる損害が最も少ない場所及び方法を選んで設置し、通過する土地の所有者の請求によりその損害を補償しなければならない。
 前項の規定による施設を設置した後に事情の変更があったときは、他の土地の所有者は、その施設の変更を請求することができる。その施設の変更の費用は、土地の所有者が負担する。
 (周囲の土地の通行権)0210-1:0211:0212 
第219条 ある土地と公道との間にその土地の用途に必要な通路がない場合において、その土地の所有者は、周囲の土地を通行し、又は通路としなければ公道に出入りすることができず、又は公道に出入りするために過分な費用を要するときは周囲の土地を通行することができ、必要なときは周囲の土地に通路を開設することができる。ただし、これによる損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。
 前項の規定による通行権者は、周囲の土地の所有者の損害を補償しなければならない。 
 (分割及び一部譲渡と周囲通行権)0213 
第220条 分割により公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、 公道に出入りするために他の分割者の土地を通行することができる。この場合においては、補償の義務を負わない。
 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲渡した場合について準用する。 
 (自然流水に関する義務及び権利)0214 
第221条 土地の所有者は、隣地から自然に流入する水を塞ぐことができない。
 高地の所有者は、低い隣地に自然に流れ下るその隣地で必要な水を、自己の正当な使用の範囲を超えて、塞ぐことができない。 
 (疎通工事権)0215
第222条  流水が低地において閉塞したときは、高地の所有者は、自己の費用で、疏通に必要な工事をすることができる。 
 (貯水、排水又は引水のための工作物の工事請求権)0216
第223条 土地の所有者が貯水し、排水し、又は引水するために工作物を設置した場合において、工作物の破損又は閉塞により他人の土地に損害を加え、又は加えるおそれがあるときは、その他人は、その工作物の補修又は閉塞の疏通若しくは予防に必要な請求をすることができる。
 (慣習による費用の負担)0217
第224条 前2条の場合において、費用の負担に関する慣習があるときは、その慣習による。
 (軒からの落水に対する施設義務)0218
第225条 土地の所有者は、軒からの落水が隣地に直接に注がないように適当な施設を設けなければならない。
 (余水の疎通権)0220
226 高地の所有者は、浸水地を乾燥するため、又は家用若しくは農工業用の余水を疏通するために、公道、公流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。
 前項の場合においては、低地の損害が最も少ない場所及び方法を選ぶとともに、その損害を補償しなければならない。
 (流水用工作物の使用権)0221
第227条 土地の所有者は、その所有地の水を疏通するために、隣地の所有者が設置した工作物を使用することができる。
2 前項の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。
 (余水の供給請求権) 
第228条 土地の所有者は、過分な費用又は労力をかけなければ自家用又は土地利用に必要な水を得ることが困難なときは、隣地の所有者に補償を行って、余水の供給を請求することができる。
 (水流の変更)0219
第229条 溝渠その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有であるときは、その水路又は水流の幅員を変更することができない。
 両岸の土地が水流地の所有者の所有であるときは、所有者は、水路及び水流の幅員を変更することができる。ただし、下流においては、自然の水路と一致するようにしなければならない。
 前2項の規定は、異なる慣習があるときは、その慣習による。 
 (堰の設置及び利用権)0222
第230条 水流地の所有者は、堰を設置する必要があるときは、その堰を対岸に付着させることができる。ただし、これによる損害は、補償しなければならない。
 対岸の所有者は、水流地の一部が自己の所有であるときは、前項の堰を使用することができる。ただし、その利益を受ける割合に応じて、堰の設置及び保存の費用を分担しなければならない。 
 (公有河川の用水権)
第231条 公有河川の沿岸で農工業を経営する者は、これに利用するため、他の人の用水を妨害しない範囲内で、必要な引水をすることができる。
 前項の場合においては、引水をするために必要な工作物を設置することができる。
 下流沿岸の用水権の保護) 
第232条 前条第1項の引水又は同条第2項の工作物により下流沿岸の用水権を妨害したときは、その用水権者は、妨害の除去及び損害の賠償を請求することができる。
 (用水権の承継)
第233条 農工業の経営に利用する水路その他の工作物の所有者又は利用者の特別承継人は、その用水に関する従前の所有者又は利用者の権利義務を承継する。  
 (用水権に関する異なる慣習)
第234条 前3条の規定は、異なる慣習があるときは、その慣習による。
 (共用水の用水権)
第235条 相隣者は、その共用に属する源泉又は水道について、各需要の程度に応じ、かつ、他人の用水を妨害しない範囲内で、それぞれ用水する権利を有する。
 (用水を障害する工事と損害賠償及び原状回復)
第236条 必要な用途又は収益のある源泉又は水道について他人の建築その他の工事により断水し、減水し、その他に用途に障害が生じたときは、用水権者は、損害賠償を請求することができる。
 前項の工事により飲料水その他の生活上必要な用水に障害が生じたときは、原状回復を請求することができる。
 (境界標及び障壁の設置権)0223~0226:0228
第237条 隣接して土地を所有する者は、共同の費用で、通常の境界標又は障壁を設置することができる。
 前項の費用は、双方が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、土地の面積に応じて負担する。
 前2項の規定は、異なる慣習があるときは、その慣習による。
 (障壁の特殊施設権)0227:0231-01
第238条 隣地の所有者は、自己の費用で、障壁の材料を通常より良好なものとし、その高さを通常より高くし、又は防火壁その他の特殊施設を設けることができる。
 (境界標等の共有の推定)0229:0230:0231-02
第239条 境界に設置された境界標、障壁、溝渠等は、相隣者の共有と推定する。ただし、境界標、障壁、溝渠等が相隣者の一方のみの費用で設置された場合又は障壁が建物の一部である場合については、この限りでない。
 (樹木の枝及び根の除去権)0233
第240条 隣地の樹木の枝が境界を越えるときは、その所有者に対して、枝の除去を請求することができる。
 前項に規定する請求に応じないときは、請求者は、その枝を除去することができる。
 隣地の樹木の根が境界を越えるときは、自由に除去することができる。
 (土地の深掘の禁止)
第241条 土地の所有者は、隣地の地盤が崩れる程度まで、自己の土地を深く堀ることができない。ただし、十分な防禦工事をしたときは、この限りでない。
 (境界線付近の建築)0234
第242条 建物を築造する場合において、特別な慣習がないときは、境界から0.5メートル以上の距離を保たなければならない。
 隣地の所有者は、前項の規定に違反した者に対して、建物の変更又は撤去を請求することができる。ただし、建築に着手した後1年を経過し、又は建物が完成した後は、損害賠償のみを請求することができる。
 (目隠しの施設義務)0235
第243条 境界から2メートル以内の距離において隣の住宅の内部を観望することができる窓又は縁側を設置する場合は、適当な目隠しを設けなければならない。
 (地下施設等に対する制限)0237:0238
第244条 井戸を掘り、又は用水、下水若しくは汚物等を貯める地下施設を設けるときは境界から2メートル以上、貯水池、溝渠又は地下室の工事をするときは境界からその深さの2分の1以上の距離を保たなければならない。
 前項の工事をするには、土砂が崩れ、又は下水若しくは汚液が隣地に流れないよう適当な措置をしなければならない。 
    第2節 所有権の取得
 (不動産の所有権の取得時効)0162
第245条 20年間所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と不動産を占有する者は、登記することによりその所有権を取得する。
 不動産の所有者として登記した者が10年間所有の意思をもって、平穏に、公然と、善意で、かつ、過失なくその不動産を占有したときは、所有権を取得する。 
 (動産の所有権の取得時効)0162
第246条 10年間所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と動産を占有した者は、その所有権を取得する。
 前項に規定する占有が善意で、かつ、過失なく開始された場合は、5年を経過することによりその所有権を取得する。
 (所有権の取得時効の遡及効及び中断事由)0144:0147~0161
第247条 前2条の規定による所有権の取得の効力は、占有を開始した時に遡る。
 消滅時効の中断に関する規定は、前2条の規定による所有権の取得時効について準用する。
 (所有権以外の財産権の取得時効)0163
第248条 前3条の規定は、所有権以外の財産権の取得について準用する。
 (善意取得)0192
第249条 平穏に、かつ、公然と動産を譲り受けた者は、善意で、かつ、過失なくその動産を占有した場合には、 譲渡人が正当な所有者でないときであっても、直ちにその動産の所有権を取得する。
 (盗品及び遺失物についての特例)0193
第250条 前条の場合において、その動産が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難に遭い、又は遺失をした日から2年内はその物の返還を請求することができる。ただし、盗品又は遺失物が金銭であるときは、この限りでない。  
                 0194
第251条 譲受人が盗品又は遺失物を競売若しくは公開の市場において又は同種の物を販売する商人から善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、譲受人が支払った代価を弁償して、その物の返還を請求することができる。  
 (無主物の帰属)0239:0195
第252条 無主の動産を所有の意思をもって占有した者は、その所有権を取得する。
 無主の不動産は、国有とする。
 野生する動物は、無主物とし、飼養する野生動物も野生状態に戻ったときは、無主物とする。   
 (遺失物の所有権の取得)0240
第253条 遺失物は、法律に定めるところにより公告した後6箇月内にその所有者が権利を主張しないときは、拾得者がその所有権を取得する。 
 (埋蔵物の所有権の取得)0241
第254条 埋蔵物は、法律に定めたところにより公告した後1年内にその所有者が権利を主張しないときは、発見者がその所有権を取得する。ただし、他人の土地その他の物から発見した埋蔵物は、その土地その他の物の所有者と発見者が等しい割合で取得する。
 文化財の国有)
第255条 学術、技芸又は考古の重要な資料になる物については、第252条第1項及び前2条の規定によらず、国有とする。
 前項の場合において、拾得者、発見者及び埋蔵物が発見された土地その他の物の所有者は、国に対して適当な報償を請求することができる。  
 (不動産への付合)0242
第256条 不動産の所有者は、その不動産に付合した物の所有権を取得する。ただし、他の人が権原により附属された物は、この限りでない。  
 (動産間の付合)0243:0244 
第257条 動産と動産が付合して、毀損しなければ分離することができず、又はその分離に過分な費用を要する場合には、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に属する。付合した動産の主従を区別することができないときは、動産の所有者は、付合の時の価額に応じて、合成物を共有する。 
 (混和)0245
第258条 前条の規定は、動産と動産が混和して識別することができない場合について準用する。  
 (加工)0246
第259条 他人の動産に加工したときは、その物の所有権は、原材料の所有者に属する。ただし、加工による価額の増加が原材料の価額より著しく多額であるときは、加工者の所有とする。
 加工者が材料の一部を提供したときは、その価額は、前項ただし書に規定する増加額に加算する。
 (添付の効果)0247 
第260条 第256条から前条までの規定により動産の所有権が消滅したときは、その動産を目的とする他の権利も、消滅する。
 前項の権利は、動産の所有者が、合成物、混和物又は加工物の単独所有者となったときはその合成物、混和物又は加工物について、合成物、混和物又は加工物の共有者となったときはその合成物、混和物又は加工物の持分について存続する。 
 (添付による求償権)0248
第261条 第256条から前条までの場合において損害を受けた者は、不当利得に関する規定により補償を請求することができる。  
    第3節 共同所有  
 (物の共有)0250
第262条 物が持分によって数人の所有となったときは、共有とする。
 共有者の持分は、相等しいものと推定する。  
 (共有持分の処分並びに共有物の使用及び収益)0249-01 
第263条 共有者は、その持分を処分することができ、共有物の全部を持分に応じて使用し、及び収益することができる。
 (共有物の処分及び変更)0251-01
第264条 共有者は、他の共有者の同意なく、共有物を処分し、又は変更することができない。 
 (共有物の管理及び保存)0252-01.05
第265条 共有物の管理に関する事項は、共有者の持分の過半数で決する。ただし、保存行為は、各自が行うことができる。  
 (共有物の負担)0253
第266条 共有者は、その持分に応じて共有物の管理の費用の負担その他の義務を負う。
 共有者が1年以上前項の義務の履行を遅滞したときは、他の共有者は、相当な価額で持分を買い受けることができる。  
 (持分の放棄等の場合の帰属)0255
第267条 共有者がその持分を放棄し、又は相続人がなく死亡したときは、その持分は、他の共有者に各持分に応じて帰属する。 
 (共有物の分割請求)0256:0257
第268条 共有者は、共有物の分割を請求することができる。ただし、5年内の期間を定めて分割しない旨を約定することができる。
 前項に規定する約定を更新するときは、その期間は、更新した日から5年を超えることができない。
 前2項の規定は、第215条及び第239条に規定する共有物については、適用しない。  
 (分割の方法)0258 
第269条 分割の方法について協議が成立しないときは、共有者は、裁判所にその分割を請求することができる。
 現物で分割することができず、又は分割により著しくその価額が減少するおそれがあるときは、裁判所は、物の競売を命じることができる。 
 (分割による担保責任)0261
第270条 共有者は、他の共有者が分割により取得した物について、その持分に応じて売主と同じ担保の責任を負う。 
 (物の合有)
第271条 法律の規定又は契約により数人が組合として物を所有するときは、合有とする。 合有者の権利は、合有物の全部に及ぶ。
 合有については、前項の規定又は契約によるほか、次条から第274条までの規定による。  
 (合有物の処分、変更及び保存)
第272条 合有物を処分し、又は変更するには、合有者全員の同意がなければならない。ただし、保存行為は、各自が行うことができる。  
 (合有持分の処分及び合有物の分割の禁止)
第273条 合有者は、全員の同意がなければ、合有物についての持分を処分することができない。
 合有者は、合有物の分割を請求することができない。  
 (合有の終了)
第274条 合有は、組合の解散又は合有物の譲渡により終了する。
 前項の場合において、合有物の分割については、共有物の分割に関する規定を準用する。  
 (物の総有)
第275条 法人格なき社団の社員が社団として物を所有するときは、総有とする。
 総有については、社団の定款その他契約によるほか、次条及び第277条の規定による。
 (総有物の管理及び処分並びに使用及び収益)
第276条 総有物の管理及び処分は、社員総会の決議による。
 各社員は、定款その他の規約に従い、総有物を使用し、及び収益することができる。 
 (総有物に関する権利義務の得喪
第277条 総有物に関する社員の権利義務は、社員の地位を取得し、又は喪失することにより、取得し、又は喪失する。  
 (準共同所有)0263
第278条 この節の規定は、所有権以外の財産権について準用する。ただし、他の法律に特別の定めがあるときは、それによる。   

新私訳:韓国の民法 その5<第185条~第210条>

  第2編 物権
   第1章 総則  
 (物権の種類)0175
第185条 物権は、法律又は慣習法によらないで任意に創設することができない。
 (不動産物権変動の効力)0176:0177 
第186条 不動産に関する法律行為による物権の得喪変更は、登記することにより、効力を生じる。
 (登記を要しない不動産物権の取得)
第187条 相続、公用徴収、判決、競売その他法律の規定による不動産に関する物権の取得は、登記を要しない。ただし、登記をしなければ、これを処分することができない。 
 (動産物権譲渡の効力及び簡易の引渡し)0176:0178 
第188条 動産に関する物権の譲渡は、その動産を引き渡すことにより、効力を生じる。
 譲受人が既にその動産を占有しているときは、当事者の意思表示のみにより、その効力を生じる。
 (占有改定)0183
第189条 動産に関する物権を譲渡する場合において、当事者の契約により譲渡人がその動産の占有を継続するときは、譲受人が引渡しを受けたものとみなす。
 (目的物返還請求権の譲渡)0184 
第190条 第三者が占有している動産に関する物権を譲渡する場合は、譲渡人がその第三者に対する返還請求権を譲受人に譲渡することをもって、動産を引き渡したものとみなす。 
 (混同による物権の消滅)0179
第191条 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、他の物権は、消滅する。ただし、その物権が第三者の権利の目的になっているときは、消滅しない。
 前項の規定は、所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属した場合について準用する。
 占有権については、前2項の規定は、適用しない。
   第2章 占有権 
 (占有権の取得及び消滅)0180:0203
第192条 物を事実上支配する者は、占有権を有する。
 占有者が物に対する事実上の支配を喪失したときは、占有権は、消滅する。ただし、第204条の規定により占有を回収したときは、この限りでない。
 (相続による占有権の移転)
第193条 占有権は、相続人に移転する。 
 (間接占有)0181
第194条 地上権、伝貰権、質権、使用貸借、賃貸借、寄託その他の関係により他人に物を占有させた者は、間接的に占有権を有する。  
 (占有補助者)
第195条 家事上、営業上その他これらに類する関係により他人の指示を受けて物に対する事実上の支配をするときは、その他人のみを占有者とする。   
 (占有権の譲渡)0182:0183:184
第196条 占有権の譲渡は、占有物の引渡しにより、その効力を生じる。
 前項の占有権の譲渡については、第188条第2項、第189条及び第190条の規定を準用する。 
 (占有の態様)0186-01:0189-02
第197条 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有するものと推定する。
 善意の占有者であっても、 本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えが提起された時から悪意の占有者とみなす。
 (占有継続の推定)0186-02
第198条 前後の両時点において占有した事実があるときは、その占有は、継続したものと推定する。
 (占有の承継の主張及びその効果)0187
第199条 占有者の承継人は、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有と前の占有者の占有を併せて主張することができる。
 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵も承継する。
 (権利の適法の推定)0188
第200条 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。
 (占有者と果実)0189-01:0190
第201条 善意の占有者は、占有物の果実を取得する。
 悪意の占有者は、収取した果実を返還し、かつ、消費し、過失により毀損し、又は収取することができなかった場合にはその果実の代価を補償しなければならない。
 前項の規定は、暴力又は隠秘による占有者について準用する。
 (占有者の回復者に対する責任)0191
第202条 占有物が占有者の責めに帰すべき事由により滅失し、又は毀損したときは、悪意の占有者はその損害の全部を賠償し、善意の占有者は現に利益を受けている限度において賠償しなければならない。 所有の意思のない占有者は、善意である場合であっても、損害の全部を賠償しなければならない。
 (占有者の償還請求権)0196
第203条 占有者が占有物を返還するときは、回復者に対して、占有物を保存するために支出した金額その他の必要費の償還を請求することができる。ただし、占有者が果実を取得した場合には、通常の必要費は、請求することができない。
2 占有者が占有物を改良するために支出した金額その他の有益費については、その価額の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出金額又は増加額の償還を請求することができる。
3 前項の場合において、裁判所は、回復者の請求により、相当な償還期間を許与することができる。
 (占有の回収)0200:0201-03
第204条 占有者が占有の侵奪を受けたときは、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 前項の規定による請求権は、侵奪者の特別承継人に対して行使することができない。ただし、承継人が悪意であるときは、この限りでない。
3 第1項の規定による請求権は、侵奪を受けた日から1年内に行使しなければならない。
 (占有の保持)0198:0201-01
第205条 占有者が占有の妨害を受けたときは、その妨害の除去及び損害の賠償を請求することができる。
2 前項の規定による請求権は、妨害が終了した日から1年内に行使しなければならない。
3 工事により占有の妨害を受けた場合において、工事着手後1年を経過し、又はその工事が完成したときは、妨害の除去を請求することができない。
 (占有の保全0199:0201-02
第206条 占有者が占有の妨害を受けるおそれがあるときは、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。
2 工事により占有の妨害を受けるおそれがある場合には、前条第3項の規定を準用する。
 (間接占有の保護)
第207条 前3条の規定による請求権は、第194条の規定による間接占有者も、これを行使することができる。
 占有者が占有の侵奪を受けた場合において、間接占有者は、その物を占有者に返還することを請求することができ、占有者がその物の返還を受けることができないとき又はこれを望まないときは自己に返還することを請求することができる。 
 (占有の訴えと本権の訴えとの関係)0202
第208条 占有の訴えと本権の訴えは、互いに影響を及ぼさない。
 占有の訴えについては、本権に関する理由をもって裁判することができない。 
 (自力救済)
第209条 占有者は、その占有を不正に侵奪し、又は妨害する行為に対して、自力をもってこれを防衛することができる。
 占有物が侵奪された場合において、占有者は、不動産であるときは侵奪後直ちに加害者を排除してこれを奪還することができ、動産であるときは現場で又は追跡して加害者からこれを奪還することができる。
 (準占有)0205
第210条 この章の規定は、財産権を事実上行使する場合について準用する。

新私訳:韓国の民法 その4<第162条~第184条>

    第7章 消滅時効
 (債権及び財産権の消滅時効0166:0167:0168-01
第162条 債権は、10年間行使しないときは、消滅時効が完成する。
 債権及び所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅時効が完成する。
 (3年の短期消滅時効
第163条 次に掲げる債権は、3年間行使しないときは、消滅時効が完成する。
 (1) 利息、扶養料、給料、使用料その他1年以内の期間により定めた金銭又は物の給付を目的とした債権
 (2) 医師、助産師、看護師又は薬剤師の治療、助産、看護又は調剤に関する債権
 (3) 請負人、技師その他工事の設計又は監督に従事する者の工事に関する債権
 (4) 弁護士、弁理士、公証人、公認会計士又は司法書士に対する職務上保管している書類の返還を請求する債権
 (5) 弁護士、弁理士、公証人、公認会計士又は司法書士の職務に関する債権
 (6) 生産者又は商人が販売した生産物又は商品の代価
 (7) 手工業者又は製造者の業務に関する債権
 (1年の短期消滅時効
第164条 次に掲げる債権は、1年間行使しないときは、消滅時効が完成する。
 (1) 旅館、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、貸席料、入場料、消費物の代価又は立替金の債権
 (2) 衣服、寝具、葬具その他の動産の使用料の債権
 (3) 労役人又は演芸人の賃金又はこれに加えて供給した物の代金債権
 (4) 学生又は修業者の教育、衣食又は寄宿に関する校主、塾主又は教師の債権
 (判決等により確定した債権の消滅時効0169
第165条 判決により確定した債権は、短期の消滅時効に該当するものであっても、その消滅時効の期間は、10年とする。
 破産手続により確定した債権及び裁判上の和解、調停その他の判決と同一の効力を有するものにより確定した債権も、前項と同様とする。
 前2項の規定は、判決の確定の時に弁済期が到来していない債権については、適用しない。
 (消滅時効の起算点)0166:0168
第166条 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
 不作為を目的とする債権の消滅時効は、違反行為をした時から進行する。
 (消滅時効遡及効0144
第167条 消滅時効は、その起算日にさかのぼって効力を生じる。
 (消滅時効の完成猶予事由)0147-01:0148-01:0149:150:152-01
第168条 消滅時効は、次に掲げる事由がある場合には、完成しない。
 (1) 請求
 (2) 差押え、仮差押え又は仮処分
 (3) 承認
 (消滅時効の完成猶予の効力)0153:0154
第169条 消滅時効の完成猶予は、当事者及びその承継人の間においてのみ、効力を有する。
 (裁判上の請求と消滅時効の完成猶予)
第170条 裁判上の請求は、訴えの却下、請求の棄却又は訴えの取下げがあった場合には、消滅時効の完成猶予の効力を有さない。
 前項の場合において、6箇月内に裁判上の請求、破産手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしたときは、最初の裁判上の請求により消滅時効の完成猶予があったものとみなす。
 (破産手続参加と消滅時効の完成猶予)0147
第171条 破産手続参加は、債権者がこれを取り下げ、又はその請求が却下されたときには、消滅時効の完成猶予の効力を有さない。
 (支払督促と消滅時効の完成猶予)
第172条 支払督促は、債権者が法定期間内に仮執行の申請をしないことによりその効力を失ったときには、消滅時効の完成猶予の効力を有さない。
 (和解のための召喚及び任意出頭と消滅時効の完成猶予)
第173条 和解のための召喚は、相手方が出席せず、又は和解が成立しなかったときには、1箇月内に訴えを提起しなければ、消滅時効の完成猶予の効力を有さない。 任意出席の場合において和解が成立しなかったときも、同様とする。
 (催告と消滅時効の完成猶予)0150
第174条 催告は、6箇月内に裁判上の請求、破産手続参加、和解のための召喚、任意出席、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、消滅時効の完成猶予の効力を有さない。
 (差押え、仮差押え及び仮処分と消滅時効の完成猶予)0148-02-但
第175条 差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときには、消滅時効の完成猶予の効力を有さない。
 (差押え、仮差押え及び仮処分と消滅時効の完成猶予)0154
第176条 差押え、仮差押え及び仮処分は、消滅時効の利益を受ける者に対して行わなかったときには、これをその者に通知した後でなければ、消滅時効の完成猶予の効力を有さない。
 (承認と消滅時効の完成猶予)0152-02
第177条 消滅時効の完成猶予の効力を有する承認には、相手方の権利に関する処分の能力又は権限があることを要しない。
 (完成猶予後の消滅時効の更新)0147-02:148-02:152-01
第178条 消滅時効の完成猶予があったときは、完成猶予までに経過した消滅時効の期間は算入せずに、完成猶予の事由が終了した時から消滅時効が新たに進行する。
2 裁判上の請求による完成猶予があった消滅時効は、裁判が確定した時から、前項の規定により新たに進行する。
 (制限行為能力者消滅時効の完成猶予)0158-1
第179条 消滅時効の期間の満了前6箇月内において制限行為能力者法定代理人がない場合には、その者が行為能力者となり、又は法定代理人が就任した時から6箇月内は、消滅時効が完成しない。
 (財産管理者に対する制限行為能力者の権利及び夫婦間の権利と消滅時効の完成猶予)0158-02:0159
第180条
 財産を管理する父、母又は後見人に対する制限行為能力者の権利については、その者が行為能力者となり、又は後任の法定代理人が就任した時から6箇月内は、消滅時効が完成しない。
 夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻関係が解消した時から6箇月内は、消滅時効が完成しない。
 (相続財産に関する権利と消滅時効の完成猶予)0160
第181条 相続財産に属する権利又は相続財産に対する権利については、 相続人の確定、管理人の選任又は破産宣告があった時から6箇月内は、消滅時効が完成しない。
 (天災その他の事変と消滅時効の完成猶予)0161
第182条 天災その他の事変により消滅時効の完成猶予の手続を行うことができないときは、その事由が終了した時から1箇月内は、消滅時効が完成しない。
 (従属した権利に対する消滅時効の効力)
第183条 主たる権利の消滅時効が完成したときは、従たる権利にその効力が及ぶ。
 (消滅時効の利益の放棄等)0146
第184条 消滅時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
 消滅時効は、法律行為により、これを排除し、延長し、又は加重することができないが、これを短縮し、又は軽減することができる。

新私訳:韓国の民法 その3<第98条~第161条>

   第4章 物
 (物の定義)0085
第98条 この法律において「物」とは、有体物及び電気その他の管理することができる自然力をいう。
 (不動産及び動産)0086
第99条 土地及びその定着物は、不動産とする。
 不動産以外の物は、動産とする。
 (主物及び従物)0087
第100条 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物は、従物とする。
 従物は、主物の処分に従う。
 天然果実及び法定果実0088
第101条  物の用法に従い収取する産出物は、天然果実とする。
 物の使用の対価として受ける金銭その他の物は、法定果実とする。
 (果実の取得)0089
第102条 天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に属する。
 法定果実は、これを収取する権利の存続期間の日数の割合に応じて、取得する。
   第5章 法律行為
    第1節 総則
 (公の秩序に反する法律行為0090
第103条 善良な風俗その他公の秩序に反する事項を内容とする法律行為は、無効とする。 
 (不公正な法律行為)
第104条 当事者の窮迫、軽率又は無経験により著しく公正を欠く法律行為は、無効とする。
 (任意規定0091
第105条 法律行為の当事者が法令中の善良な風俗その他公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思による。
 (事実たる慣習)0092
第106条 法律行為の当事者が法令中の善良な風俗その他公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、当事者の意思が明らかでないときは、その慣習による。
    第2節 意思表示
 (心裡留保0093
第107条 意思表示は、表意者が真意でないことを知ってしたものであっても、その効力を有する。ただし、相手方が表意者の真意でないことを知り、又は知ることができた場合は、無効とする。
 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
 (虚偽表示)0094
第108条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
 (錯誤による意思表示)0095
第109条 意思表示は、法律行為の内容の重要な部分に錯誤があるときは、取り消すことができる。ただし、その錯誤が表意者の重大な過失によるときは、取り消すことができない。
 前項の規定による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。
 (詐欺又は強迫による意思表示)0096
第110条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
 相手方のある意思表示について第三者が詐欺又は強迫を行った場合において、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
 前2項の規定による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。
 (意思表示の効力発生時期)0097
第111条 相手方のある意思表示は、相手方に到達した時にその効力を生じる。
 表意者がその通知を発した後に死亡し、又は制限行為能力者になっても、意思表示の効力に影響を及ぼさない。
 (制限行為能力者に対する意思表示の効力)0098の2
第112条 意思表示の相手方が意思表示を受けた時に制限行為能力者であった場合には、表意者は、その意思表示をもって対抗することができない。 ただし、その相手方の法定代理人が意思表示の到達した事実を知った後は、この限りでない。
 (意思表示の公示送達)0098
第113条 表意者が過失なく 相手方を知ることができず、又は相手方の所在を知ることができない場合には、意思表示は、民事訴訟法の公示送達の規定により送達することができる。
    第3節 代理
 (代理行為の効力)0099
第114条 代理人がその権限内において本人のためである旨を示してした意思表示は、直接本人に対して効力を生じる。
 前項の規定は、代理人に対する第三者の意思表示について準用する。
 (本人のためである旨を示さなかった行為)0100
第115条 代理人が本人のためである旨を示さなかったときには、その意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が代理人としてしたものであることを知り、又は知ることができたときは、前条第1項の規定を準用する。
 (代理行為の瑕疵)0101
第116条 意思表示の効力が意思の欠缺、詐欺、強迫又はある事情を知り、若しくは過失により知らなかったことにより影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人を基準にして決定する。
 特定の法律行為を委任した場合において、代理人が本人の指示に従いその行為をしたときには、本人は、自己が知っていた事情又は過失により知らなかった事情について、代理人が知らなかったことを主張することができない。
 (代理人の行為能力)0102
第117条 代理人は、行為能力者であることを要しない。
 (代理権の範囲)0103
第118条 権限の定めのない代理人は、 次に掲げる行為のみをすることができる。
 (1) 保存行為
 (2) 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲において、それの利用又は改良をする行為
 (各自代理)
第119条 代理人が数人あるときは、各自が本人を代理する。ただし、法律又は授権行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
 (任意代理人の復任権)0104
第120条 代理権が法律行為により授与された場合には、代理人は、本人の承諾があり、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
 (任意代理人の復代理人の選任に伴う責任)
第121条 前条の規定により代理人が復代理人を選任したときは、本人に対して、その選任及び監督についての責任を負う。
 代理人が本人の指名により復代理人を選任した場合においては、その不適任であること又は不誠実であることを知りながら 本人に対する通知又はその解任を怠ったときでなければ、責任を負わない。
 (法定代理人の復任権及びその責任)0105
第122条 法定代理人は、その責任で復代理人を選任することができる。ただし、やむを得ない事由によるときは、前条第1項に規定する責任のみを負う。
 (復代理人の権限)0106
第123条 復代理人は、その権限内において、本人を代理する。
 復代理人は、本人又は第三者に対して、代理人と同一の権利義務を有する。
 (自己契約及び双方代理)0108
第124条 代理人は、本人の許諾がなければ、本人のために自己と法律行為をし、又は同一の法律行為について当事者双方を代理することができない。ただし、債務の履行については、これをすることができる。
 (代理権授与の表示による表見代理0109
第125条 第三者に対して他人に代理権を授与する旨を表示した者は、その 代理権の範囲内においてしたその他人とその第三者との間の法律行為について、責任を負う。ただし、第三者が、代理権を有しないことを知り、又は知ることができたときは、この限りでない。
 (権限外の表見代理0110
第126条 代理人がその権限外の法律行為をした場合において、第三者がその権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人は、その行為について、責任を負う。
 (代理権の消滅事由)0111-01
第127条 代理権は、次に掲げる事由があるときに、消滅する。
 (1) 本人の死亡
 (2) 代理人の死亡、成年後見の開始又は破産

 (任意代理の終了)0111-02
第128条 法律行為により授与された代理権は、前条の場合のほか、その原因となる法律関係の終了により消滅する。 法律関係の終了前に本人が授権行為を撤回した場合も、同様とする。
 (代理権消滅後の表見代理0112
第129条 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。 ただし、第三者が過失によりその事実を知らなかったときは、この限りでない。
 (無権代理0113-01
第130条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人が追認しなければ、本人に対して効力を生じない。
 (相手方の催告権)0114
第131条 代理権を有しない者が他人の代理人として契約をした場合において、相手方は、相当の期間を定めて、本人に対し、その追認をするかどうかの確答を催告することができる。 本人がその期間内に確答を発しないときは、追認を拒絶したものとみなす。
 (追認及び拒絶の相手方)0113-02
第132条 追認又は拒絶の意思表示は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
 (追認の効力)0116
第133条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生じる。 ただし、第三者の権利を害することはできない。
 (相手方の撤回権)0115
第134条 代理権を有しない者がした契約については、本人の追認があるまでは、相手方は、本人又はその代理人に対して撤回することができる。ただし、契約の時に相手方が代理権を有しないことを知っていたときは、この限りでない。
 (相手方に対する無権代理人の責任)0117
第135条 他人の代理人として契約を締結した者は、その代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができない場合は、相手方の選択に従い、契約を履行する責任又は損害を賠償する責任を負う。
 代理人として契約を締結した者に代理権がない事実を相手方が知り、若しくは知ることができたとき又は代理人として契約を締結した者が制限行為能力者であるときは、前項の規定を適用しない。
 (単独行為と無権代理0118
第136条 単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者の代理権を有しない行為に同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第130条から前条までの規定を準用する。 代理権を有しない者に対してその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。
    第4節 無効及び取消し
 (法律行為の一部の無効)
第137条 法律行為の一部分が無効であるときは、その全部を無効とする。ただし、その無効な部分がなくても法律行為をしたものと認められるときは、残余の部分は、無効とならない。
 (無効な法律行為の転換)
第138条 無効な法律行為が他の法律行為の要件を備え、かつ、当事者がその無効であることを知っていたとすれば他の法律行為をすることを欲したと認められるときは、他の法律行為として効力を有する。
 (無効な法律行為の追認)0119
第139条 無効な法律行為は、追認しても、その効力を生じない。ただし、当事者がその無効であることを知って追認したときは、新たな法律行為とみなす。
 (法律行為の取消権者)0120
第140条 取り消すことができる法律行為は、制限行為能力者、錯誤により若しくは詐欺若しくは強迫により意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
 (取消しの効果)0121:0121の2-03
第141条 取り消された法律行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為により受けた利益が現存している限度において、償還する責任を負う。
 (取消しの相手方)0123
第142条 取り消すことができる法律行為の相手方が確定している場合には、その取消しは、その相手方に対する意思表示によりしなければならない。
 (追認の方法及び効果)0122:0123
第143条 取り消すことができる法律行為は、第140条に規定する者が追認することができ、追認後には取り消すことができない。
 前条の規定は、前項の場合について準用する。
 (追認の要件)0124
第144条 追認は、取消しの原因が消滅した後にすることによって、その効力を生じる。
2 前項の規定は、法定代理人又は後見人<訳注:保佐人及び補助人を含む。>が追認する場合については、適用しない。
 (法定追認)0125
第145条 取り消すことができる法律行為について、前条の規定により追認することができる時以後に、次に掲げる事由があったときは、追認したものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
 (1) 全部又は一部の履行
 (2) 履行の請求
 (3) 更改
 (4) 担保の供与
 (5) 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡 
 (6) 強制執行
 (取消権の消滅)0126
第146条 取消権は、追認することができる日から3年内に、法律行為をした日から10年内に 行使しなければならない。
    第5節 条件及び期限
 (条件の成就の効果)0127
第147条 停止条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力を生じる。
 解除条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力を失う。
 当事者が条件成就の効力をその成就前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思による。
 (条件付権利の侵害の禁止)0128
第148条 条件付法律行為の当事者は、条件の成否が未定な間に、条件の成就により生ずべき相手方の利益を害することができない。
 (条件付権利の処分等)0129
第149条 条件の成就が未定な権利義務は、一般の規定により、処分し、相続し、保存し、又は担保とすることができる。
 (条件の成就及び不成就に対する信義に反する行為)0130
第150条 条件の成就により不利益を受ける当事者が信義誠實に反して条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものと主張することができる。
 条件の成就により利益を受けるべき当事者が信義誠實に反して条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就していないものと主張することができる。
 (不法条件及び既成条件)0132:0131
第151条 条件が善良な風俗その他公の秩序に反したものであるときは、その法律行為は、無効とする。
 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときは無条件の法律行為とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
 条件が法律行為の時に既に成就することができないものであった場合において、その条件が解除条件であるときは無条件の法律行為とし、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とする。
 (期限の到来の効果)0135
第152条 始期付法律行為は、期限が到来した時から効力を生じる。
 終期付法律行為は、期限が到来した時から効力を失う。
 (期限の利益とその放棄)0136
第153条 期限は、債務者の利益のためのものと推定する。
 期限の利益は、これを放棄することができる。ただし、相手方の利益を害することができない。
 (期限付権利と準用規定)
第154条 148条及び第149条の規定は、期限付法律行為について準用する。
   第6章 期間
 (この章の規定の適用範囲)0138
第155条 期間の計算は、法令、裁判上の処分又は法律行為に別段の定めがないときは、この章の規定による。
 (期間の起算点)0139
第156条 期間を時、分、秒によって定めたときは、即時から起算する。
 (期間の起算点)0140
第157条 期間を日、週、月又は年によって定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
 (年齢の計算及び表示)年齢計算に関する法律
第158条 年齢は、出生日を算入して満年齢で計算して、年数で表示する。ただし、1歳に達しない場合は、月数で表示することができる。
 (期間の満了点)0141
第159条 期間を日、週、月又は年によって定めたときは、期間の末日の終了をもって期間が満了する。
 (暦による計算)0143
第160条 期間を週、月又は年によって定めたときは、暦により計算する。
 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に期間が満了する。
 月又は年によって定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に期間が満了する。
 (公休日等と期間の満了点)0142
第161条 期間の末日が土曜日又は公休日に当たるときは、その期間は、その末日の翌日をもって満了する。

新私訳:韓国の民法 その2<第31条~第97条>

    第3章 法人
     第1節 総則
 (法人の成立の準則)0033-01
第31条 法人は、法律の規定によらなければ、成立しない。
 (非営利法人の設立及びその許可)0033-02
32条 学術、宗教、慈善、技芸、社交その他の営利でない事業を目的とする社団又は財団は、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる。
 (法人の設立の登記)法人法022:163
第33条 法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立する。
 (法人の権利能力)0034
第34条 法人は、法律の規定に従い、 定款で定めた目的の範囲内において、権利及び義務の主体となる。
 (法人の不法行為能力)法人法078:197
第35条 法人は、理事その他の代表者がその職務について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。 理事その他の代表者は、これにより自己の損害賠償責任を免れることができない。
 法人の目的の範囲外の行為により第三者に損害を加えたときは、その事項に関する議決に賛成し、又はその議決を執行した社員並びに理事及びその他の代表者は、連帯して賠償しなければならない。
 (法人の住所)法人法004
第36条 法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。
 (法人の事務の検査及び監督)
第37条 法人の事務は、主務官庁が検査し、及び監督する。
 (法人の設立の許可の取消し)
第38条 法人が目的外の事業を行い、設立の許可の条件に違反し、又はその他公益を害する行為をしたときは、主務官庁は、その許可を取り消すことができる。
 (営利法人)0033-02
第39条 営利を目的とする社団は、商事会社の設立の条件に従い、法人とすることができる。
 前項に規定する社団法人については、すべて商事会社に関する規定を準用する。
     第2節 設立
 (社団法人の定款)法人法010:011
第40条 社団法人の設立者は、次に掲げる事項を記載した定款を作成し、記名押印しなければならない。
 (1)  目的
 (2)  名称
 (3)  事務所の所在地
 (4)  資産に関する規定
 (5)  理事の任免に関する規定
 (6)  社員資格の得喪に関する規定
 (7)  存立時期又は解散事由を定めるときは、その時期又は事由
 (理事の代表権に加えた制限)法人法077-05:197
第41条 理事の代表権に加えた制限は、定款に記載しなければ、効力を生じない。
 (社団法人の定款の変更)法人法0146:049-02
第42条 社団法人の定款は、総社員の3分の2以上の同意があるときに限り、変更することができる。ただし、定数について定款に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
 定款の変更は、主務官庁の許可を得なければ、その効力を生じない。
 (財団法人の定款)法人法152:153:157
第43条 財団法人の設立者は、一定の財産を拠出して、第40条第1号から第5号までの規定に掲げる事項を記載した定款を作成し、記名押印しなければならない。
 (財団法人の定款の補充)
第44条 財団法人の設立者がその財団法人の名称、事務所の所在地又は理事の任免の方法を定めないで死亡したときは、利害関係人又は検事の請求により、裁判所がこれを定める。
 (財団法人の定款の変更)法人法200
第45条 財団法人の定款は、その変更の方法を定款に定めたときに限り、変更することができる。
 財団法人の目的の達成又は財産の保全のために適当なときは、前項の規定にかかわらず、名称又は事務所の所在地を変更することができる。
 第42条第2項の規定は、前2項の場合について準用する。
 (財団法人の目的その他の変更)法人法200-03
第46条 財団法人の目的を達成することができないときは、設立者又は理事は、主務官庁の許可を得て、設立の趣旨を考慮し、目的その他の定款の規定を変更することができる。
 (贈与又は遺贈に関する規定の準用)法人法158
第47条 生前の処分で財団法人を設立するときは、贈与に関する規定を準用する。
 遺言で財団法人を設立するときは、遺贈に関する規定を準用する。
 (拠出財産の帰属時期)法人法164
第48条 生前の処分で財団法人を設立するときは、拠出した財産は、法人が成立した時から法人の財産となる。
 遺言で財団法人を設立するときは、拠出した財産は、遺言の効力が発生した時から法人に帰属したものとみなす。
 (法人の登記事項)0036 法人法301:302
第49条 法人の設立の許可があったときは、3週間内に、主たる事務所の所在地において、設立の登記をしなければならない。
 前項の登記の登記事項は、次のとおりとする。
 (1)  目的
 (2)  名称
 (3)  事務所
 (4)  設立許可の年月日
 (5)  存立時期又は解散事由を定めたときは、その時期又は事由
 (6)  資産の総額
 (7)  出資の方法を定めたときは、その方法
 (8)  理事の姓名及び住所
 (9)  理事の代表権を制限したときは、その制限
 (従たる事務所の設置の登記)法人法303:312
第50条 法人が従たる事務所を設置したときは、主たる事務所の所在地においては3週間内に従たる事務所を設置したことを登記し、その従たる事務所の所在地においては同期間内に前条第2項各号に掲げる事項を登記し、他の従たる事務所の所在地においては同期間内にその従たる事務所を設置したことを登記しなければならない。
 主たる事務所又は従たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内に従たる事務所を設置したときは、前項の期間内にその事務所を設置したことを登記すれば足りる。
 (事務所の移転の登記)法人法304:313:303:312-04
第51条
 法人がその事務所を移転したときは、旧所在地においては3週間内に移転の登記をし、新所在地においては同期間内に第49条第2項各号に掲げる事項を登記しなければならない。
 同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転したことを登記すれば足りる。
 (変更の登記)法人法303:312-04
第52条 第49条第2項各号に掲げる事項に変更があったときは、3週間内に変更登記をしなければならない。
 (職務執行停止等の仮処分の登記)法人法305
第52条の2 理事の職務執行を停止し、若しくは職務代行者を選任する仮処分をし、又はその仮処分を変更し、若しくは取り消す場合は、主たる事務所及び従たる事務所が所在する地の登記所において、これを登記しなければならない。
 (登記期間の起算)法人法300
第53条 第50条から前条までの規定により登記すべき事項で官庁の許可を要するものは、その許可書が到達した日から登記の期間を起算する。
 (設立の登記以外の登記の効力及び登記事項の公告)法人法299
第54条 設立の登記以外のこの節の登記の登記事項は、その登記後でなければ、第三者に対抗することができない。
 登記した事項については、裁判所は、遅滞なく公告しなければならない。
 (財産目録及び社員名簿)法人法123:129:199:031:032
第55条 法人は、成立した時及び毎年3月内に財産目録を作成し、事務所に備え置かなければならない。 事業年度を定めた法人は、成立した時及びその年度末に作成しなければならない。
 社団法人は、社員名簿を備え置き、社員の変更があったときは、これを記載しなければならない。 
 (社員権の譲渡及び相続の禁止)
第56条 社団法人の社員の地位は、譲渡し、又は相続することができない。
     第3節 機関
 (理事)法人法060:170
第57条 法人は、理事を置かなければならない。
 (理事の事務の執行)法人法076
第58条 理事は、法人の事務を執行する。
 理事が数人ある場合において定款に別段の定めがないときは、法人の事務の執行は、理事の過半数をもって決定する。
 (理事の代表権)法人法077
第59条 理事は、法人の事務について、各自、法人を代表する。ただし、定款に定める趣旨に違反することができず、かつ、社団法人においては、総会の議決に従わなければならない。
 法人の代表については、代理に関する規定を準用する。
 (理事の代表権に加えた制限の対抗要件
第60条 理事の代表権に加えた制限は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
 (職務代行者の権限)法人法080:197
第60条の2 第52条の2の職務代行者は、仮処分命令に別段の定めがある場合を除き、法人の常務に属さない行為をすることができない。ただし、裁判所の許可を得た場合は、この限りでない。
 職務代行者が前項の規定に違反する行為をした場合であっても、法人は、善意の第三者に対して責任を負う。
 (理事の注意義務)
第61条 理事は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない。
 (理事の代理人の選任)
第62条 理事は、定款又は総会の決議で禁止していない事項に限り、第三者に特定の行為を代理させることができる。
 (臨時理事の選任)法人法079-02:197
第63条 理事が欠け、又は欠員がある場合において、これにより損害が生じるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検事の請求により、臨時理事を選任しなければならない。
 (特別代理人の選任)法人法084:197
第64条 法人と理事との利益が相反する事項については、理事は、代表権を有しない。この場合においては、前条の規定の例により、特別代理人を選任しなければならない。
 (理事の任務懈怠)法人法111:198
第65条 理事がその任務を怠ったときは、その理事は、法人に対し、連帯して損害賠償の責任を負う。
 (監事)法人法060-02:061:170-02
第66条 法人は、定款又は総会の決議により、監事を置くことができる。
 (監事の職務)法人法099:102:197
第67条 監事の職務は、次のとおりとする。
 (1)  法人の財産状況を監査すること。
 (2)  理事の業務の執行の状況を監査すること。
 (3)  財産の状況又は業務の執行について不正又は不備があることを発見したときは、これを総会又は主務官庁に報告すること。
 (4)  前号に規定する報告をするために必要があるときは、総会を招集すること。
 (総会の権限)法人法035
第68条 社団法人の事務は、定款で理事又はその他の役員に委任した事項を除き、総会の決議によらなければならない。
 通常総会法人法036-01.03
第69条 社団法人の理事は、毎年1回以上、通常総会を招集しなければならない。
 (臨時総会)法人法036-02.03:037
第70条 社団法人の理事は、必要と認めたときは、臨時総会を招集することができる。
 総社員の5分の1以上の者が会議の目的事項を示して請求したときは、理事は、臨時総会を招集しなければならない。この定数は、定款で増減することができる。
 前項の規定による請求があった後2週間内に理事が総会の招集の手続を行わないときは、請求した社員は、裁判所の許可を得て、これを招集することができる。
 (総会の招集)法人法039
第71条 総会の招集は、1週間前までにその会議の目的事項を記載した通知を発し、その他定款で定めた方法により行わなければならない。
 (総会の決議事項)法人法049-03
第72条 総会は、前条の規定により通知した事項に限り、決議することができる。ただし、定款に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
 (社員の決議権)法人法048:038:050
第73条
 各社員の決議権は、平等とする。
 社員は、書面又は代理人により、決議権を行使することができる。
 前2項の規定は、定款に別段の定めがあるときは、適用しない。
 (社員が決議権を有しない場合)
第74条 社団法人とある社員との間に関係する事項を議決する場合には、その社員は、決議権を有しない。
 (総会の決議方法)法人法049:051
第75条 総会の決議は、本法又は定款に別段の定めがないときには、社員の過半数の出席及び出席社員の決議権の過半数をもって行う。
 第73条第2項の場合には、当該社員は、出席したものとみなす。
 (総会の議事録)法人法057
第76条 総会の議事については、議事録を作成しなければならない。
 議事録には、議事の経過、要領及び結果を記載して、議長及び出席した理事が記名押印しなければならない。
 理事は、議事録を主たる事務所に備え置かなければならない。
     第4節 解散
 (解散事由)法人法148:202
第77条 法人は、存続期間の満了、法人の目的の達成若しくは達成不能、定款に定めた解散事由の発生、破産又は設立許可の取消しにより解散する。
2 社団法人は、社員が欠けることになり、又は総会で決議することによっても、解散する。
 (社団法人の解散の決議)法人法049
第78条 社団法人は、総社員の4分の3以上の者の同意がなければ、解散を決議することができない。ただし、定款に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
 (破産の申請)
第79条 法人が債務を完済できなくなったときは、理事は、遅滞なく破産の申請をしなければならない。
 (残余財産の帰属)法人法239
第80条 解散した法人の財産は、定款で指定した者に帰属する。
 定款で帰属権利者を指定せず、かつ、これを指定する方法を定めなかったときは、理事又は清算人は、主務官庁の許可を得て、その法人の目的に類似した目的のために、その財産を処分することができる。ただし、社団法人においては、総会の決議がなければならない。
 前2項の規定により処分されなかった財産は、国庫に帰属する。
 清算法人)法人法207
第81条 解散した法人は、清算の目的の範囲内においてのみ、権利を有し、義務を負う。
 清算人)法人法209-01
第82条 法人が解散したときは、破産の場合を除き、理事が清算人となる。ただし、定款又は総会の決議により別段の定めをしたときは、その定めるところによる。
 (裁判所による清算人の選任)法人法209-02.03.04
第83条 前条の規定により清算人となる者がなく、又は清算人の欠員により損害が生じるおそれがあるときは、裁判所は、職権で又は利害関係人若しくは検事の請求により、清算人を選任することができる。
 (裁判所による清算人の解任)法人法210-03
第84条 重要な事由があるときは、裁判所は、職権で又は利害関係人若しくは検事の請求により、清算人を解任することができる。
 (解散の登記)法人法308:310
第85条 清算人は、破産の場合を除き、その就任後3週間内に、解散の事由及び年月日、清算人の姓名及び住所並びに清算人の代表権を制限したときはその制限を、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、登記しなければならない。
 第52条の規定は、前項に規定する登記について準用する。
 (解散の報告)
第86条 清算人は、破産の場合を除き、その就任後3週間内に、前条第1項に規定する事項を主務官庁に報告しなければならない。
 清算中に就任した清算人は、その姓名及び住所を届け出れば足りる。
 清算人の職務)法人法212:213
第87条 清算人の職務は、次のとおりとする。
 (1)  現務の結了
 (2)  債権の取立て及び債務の弁済
 (3)  残余財産の引渡し
 清算人は、前項の職務を行うために必要なすべての行為をすることができる。
 (債権の届出の公告)法人法233
第88条 清算人は、就任した日から2月内に3回以上の公告をもって、債権者に対して一定の期間内にその債権を届け出るべき旨を催告しなければならない。 その期間は、2月以上でなければならない。
 前項の公告には、債権者が期間内に届け出なければ清算から除斥される旨を表示しなければならない。
 第1項の公告は、裁判所による登記事項の公告と同一の方法により行わなければならない。
 (債権の届出の催告)法人法233
第89条 清算人は、知れている債権者には、各別にその債権の届出を催告しなければならない。 知れている債権者は、清算から除斥することができない。
 (債権の届出期間内の弁済禁止)法人法234
第90条 清算人は、第88条第1項に規定する債権の届出の期間内は、債権者に弁済することができない。ただし、法人は、債権者に対する遅延損害賠償の義務を免れることができない。
 (債権の弁済の特例)法人法235
第91条 清算中の法人は、弁済期にない債権についても、弁済することができる。
 前項の場合において、条件付債権、存続期間が不確定な債権その他価額が不確定な債権については、裁判所が選任した鑑定人の評価により弁済しなければならない。
 清算から除斥された債権)法人法238-02
第92条 清算から除斥された債権者は、法人の債務を完済した後に帰属権利者に引き渡していない財産に対してのみ、弁済を請求することができる。
 清算中の破産)法人法215
第93条 清算中の法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、遅滞なく破産宣告を申請して、これを公告しなければならない。
 清算人は、破産管財人にその事務を引き継ぐことをもって、その任務が終了する。
 第88条第3項の規定は、第1項に規定する公告について準用する。
 清算結了の登記及び報告)法人法311:314
第94条 清算が結了したときは、 清算人は、3週間内に、これを登記し、主務官庁に報告しなければならない。
 (解散及び清算の検査及び監督)
第95条 法人の解散及び清算は、裁判所が検査し、及び監督する。
 (準用規定)法人法213-02:214-01:080:084:197:111:198:036:037
第96条 第58条第2項、第59条から第62条まで、第64条、第65条及び第70条の規定は、清算人について準用する。
     第5節 罰則
 (罰則)法人法342
第97条 法人の理事、監事又は清算人は、次のいずれかに該当する場合には、500万ウォン以下の過料に処する。
 (1)  この章に規定している登記を怠ったとき。
 (2)  第55条の規定に違反し、又は財産目録若しくは社員名簿に不正な記載をしたとき。
 (3)  第37条又は第95条の規定による検査又は監督を妨害したとき。
 (4)  主務官庁又は総会に対して、事実と異なる報告をし、又は事実を隠蔽したとき。
 (5)  第76条又は第90条の規定に違反したとき。
 (6)  第79条又は第93条の規定に違反して破産宣告の申請を怠ったとき。
 (7)  第88条又は第93条の規定による公告を怠り、又は不正な公告をしたとき。

 

新私訳:韓国の民法 その1<第1条~第30条>

   民法
  第1編 総則
   第1章  通則
 法源参照:明治8年太政官布告第103号(裁判事務心得)3条
第1条 民事について、法律に規定がないときは慣習法により、慣習法がないときは条理による。
 (信義誠実)0001-02.03
第2条
 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い、誠実に行わなければならない。
 権利は、濫用することができない。
   第2章 人
    第1節 能力
 (権利能力の存続期間)0003-01
第3条 人は、生きている間、権利及び義務の主体となる。
 (成年)0004
第4条 人は、19歳をもって成年となる。
 (未成年者の行為能力)0005-01.02
第5条 未成年者が法律行為をするには、法定代理人の同意を得なければならない。ただし、権利のみを得、又は義務のみを免れる法律行為については、この限りでない。
 前項の規定に違反する法律行為は、取り消すことができる。
 (処分を許諾した財産)0005-03
第6条 法定代理人が範囲を定めて処分を許諾した財産は、未成年者が自由に処分することができる。
 (同意及び許諾の撤回)
第7条 法定代理人は、未成年者がまだ法律行為をしていない間は、第5条第1項の同意及び前条に規定する許諾を撤回することができる。
 (営業の許諾)0006
第8条 未成年者は、法定代理人から許諾を得た特定の営業については、成年者と同一の行為能力を有する。
 法定代理人は、前項の許諾を撤回し、又は制限することができる。ただし、善意の第三者に対抗することができない。
 成年後見開始の審判)0007
第9条 家庭裁判所は、疾病、障害、老齢その他の事由による精神的制約により事務を処理する能力が持続的に欠けている人について、本人、配偶者、4親等以内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検事又は地方自治団体の長の請求により、成年後見開始の審判をする。
 家庭裁判所は、成年後見開始の審判をするときは、本人の意思を考慮しなければならない。
 成年被後見人の法律行為及びその取消し)0009
第10条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。
 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、取り消すことができない成年被後見人の法律行為の範囲を定めることができる。
 家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等以内の親族、成年後見人、成年後見監督人、 検事又は地方自治団体の長の請求により、前項の範囲を変更することができる。
 第1項の規定にかかわらず、日用品の購入等日常生活に必要でその代価が過分でない法律行為については、成年後見人は、取り消すことができない。
 成年後見終了の審判)0010
第11条 成年後見開始の原因が消滅した場合は、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等以内の親族、成年後見人, 成年後見監督人, 検事又は地方自治団体の長の請求により、成年後見終了の審判をする。
 (保佐開始の審判)0011
第12条 家庭裁判所は、疾病、障害、老齢その他の事由による精神的制約により事務を処理する能力が不足する人について、本人、配偶者、4親等以内の親族、未成年後見人、 未成年後見監督人、成年後見人、成年後見監督人、補助人、補助監督人、検事又は地方自治団体の長の請求により、保佐開始の審判をする。
 保佐開始の場合については、第9条第2項の規定を準用する。
 被保佐人の法律行為及びその同意)0013
第13条 家庭裁判所は、被保佐人が保佐人の同意を得なければならない法律行為の範囲を定めることができる。
 家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等以内の親族、保佐人、保佐監督人、検事又は地方自治団体の長の請求により、前項の規定による保佐人の同意を得てすることができる法律行為の範囲を変更することができる。
 保佐人の同意を必要とする法律行為について、保佐人が被保佐人の利益が害されるおそれがあるにもかかわらずその同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可をすることができる。
 保佐人の同意が必要な法律行為を被保佐人が保佐人の同意を得ないでしたときは、その法律行為を取り消すことができる。 ただし、日用品の購入等日常生活に必要でその代価が過分でない法律行為については、この限りでない。
 (保佐終了の審判)0014
第14条 保佐開始の原因が消滅した場合は、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等以内の親族、保佐人、保佐監督人、検事又は地方自治団体の長の請求により、保佐終了の審判をする。
 (補助の審判)0015
第14条の2 家庭裁判所は、疾病、障害、老齢その他の事由による精神的制約により一時的な後援又は特定の事務に関する後援が必要な人について、本人、配偶者、4親等以内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、検事又は地方自治団体の長の請求により、補助の審判をする。
 補助の審判は、本人の意思に反してすることができない。
 補助の審判をする場合は、補助の期間又は事務の範囲を定めなければならない。
 (審判間の関係)0019
第14条の3 家庭裁判所は、被保佐人又は被補助人について成年後見開始の審判をするときは、従前の保佐又は補助の終了の審判をする。
 家庭裁判所は、成年被後見人又は被補助人について保佐開始の審判をするときは、従前の成年後見又は補助の終了の審判をする。
 制限行為能力者の相手方が確答を催告する権利)0020
第15条 制限行為能力者の相手方は、制限行為能力者が行為能力者となった後に、その者に、1箇月以上の期間を定めて、その取り消すことができる行為を追認するかどうかの確答を催告することができる。 行為能力者となった人がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
 制限行為能力者がまだ行為能力者となっていない場合には、その法定代理人に前項の催告をすることができる。法定代理人がその定められた期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
 特別な手続が必要な行為は、その定められた期間内に、その手続を終えた確答を発しないときは、 取り消したものとみなす。
 制限行為能力者の相手方の撤回権及び拒絶権)
第16条  制限行為能力者が締結した契約は、追認があるときまで、相手方は、その意思表示を撤回することができる。 ただし、相手方が契約の当時に制限行為能力者であることを知っていた場合は、この限りでない。
 制限行為能力者の単独行為は、追認があるときまで、相手方は、拒絶することができる。
 第1項に規定する撤回及び前項に規定する拒絶の意思表示は、制限行為能力者に対してもすることができる。
 制限行為能力者の詐術)0021
第17条  制限行為能力者が詐術を用いて自己を行為能力者と信じさせた場合は、その行為を取り消すことができない。
2 未成年者及び被保佐人が詐術を用いて法定代理人の同意があるものと信じさせた場合も、前項と同様とする。
    第2節 住所
 (住所)0022 
第18条 生活の本拠になる場所を住所とする。
 住所は、同時に2箇所以上有することができる。
 (居所)0023-01
第19条 住所を知ることができないときは、居所を住所とみなす。
 (居所)0023-02
第20条 国内に住所を有しない者については、国内における居所を住所とみなす。
 (仮住所)0024
第21条 ある行為について仮住所を定めたときは、その行為については、これを住所とみなす。
    第3節 不在及び失踪
 (不在者の財産の管理)0025
第22条 従来の住所又は居所を去った者が財産管理人を定めなかったときは、裁判所は、利害関係人又は検事の請求により、財産管理について必要な処分を命じなければならない。 本人の不在中に財産管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
 本人がその後に財産管理人を定めたときは、裁判所は、本人、財産管理人、利害関係人又は検事の請求により、前項の規定による命令を取り消さなければならない。
 (財産管理人の改任)0026
第23条 不在者が財産管理人を定めた場合において、不在者の生死が明らかでないときは、裁判所は、財産管理人、利害関係人又は検事の請求により、財産管理人を改任することができる。
 (財産管理人の職務)0027
第24条 裁判所が選任した財産管理人は、管理すべき財産の目録を作成しなければならない。
 裁判所は、その選任した財産管理人に対して、不在者の財産を保存するために必要な処分を命じることができる。
 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検事の請求があるときは、裁判所は、不在者が定めた財産管理人に対して、前2項に規定する処分を命じることができる。
 前3項の場合において、その費用は、不在者の財産から支払う。
 (財産管理人の権限)0028
第25条 裁判所の選任した財産管理人が第118条に規定する権限を超える行為をするときは、 裁判所の許可を得なければならない。 不在者の生死が明らかでない場合において、不在者が定めた財産管理人が権限を超える行為をするときも、同様とする。
 (財産管理人の担保供与及び報酬)0029
第26条 裁判所は、その選任した財産管理人に財産の管理及び返還について相当な担保を供させることができる。
 裁判所は、その選任した財産管理人に不在者の財産から相当な報酬を支払うことができる。
 前2項の規定は、不在者の生死が明らかでない場合において、不在者が定めた財産管理人について準用する。
 (失踪宣告)0030
第27条 不在者の生死が5年間明らかでないときは、裁判所は、利害関係人又は検事の請求により、失踪宣告をしなければならない。
 戦地に臨んだ者又は沈没した船舶の中に在った者、墜落した航空機の中に在った者若しくはその他の死亡の原因となるべき危難に遭った者の生死が終戦後又は船舶の沈没、航空機の墜落若しくはその他の危難が終わった後1年間明らかでないときも、前項と同様とする。 
 (失踪宣告の効果)0031
第28条 失踪宣告を受けた者は、前条の期間が満了した時に死亡したものとみなす。
 (失踪宣告の取消し)0032
第29条 失踪者が生存している事実又は前条の規定による時と異なる時に死亡した事実の証明があったときは、裁判所は、本人、利害関係人又は検事の請求により、失踪宣告を取り消さなければならない。ただし、失踪宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
 失踪宣告が取り消された場合において、失踪宣告を直接の原因として財産を取得した者は、善意であるときはその受けた利益が現存する限度で返還する義務を負い、悪意であるときはその受けた利益に利息を付して返還するとともに損害があればこれを賠償しなければならない。
 (同時死亡)0032の2
第30条 二人以上の者が同一の危難で死亡した場合は、同時に死亡したものと推定する。

韓国民法の私訳19(第997条~第1059条)

 今回から韓国の民法の最終編「第5編 相続」の私訳になります。

今回は、その「第1章 相続」を対象とします。本章は、「第1節総則、第2節相続人、第3節相続の効力(第1款一般的効力・第2款相続分・第3款相続財産の分割)、第4節相続の承認及び放棄(第1款総則・第2款単純承認・第3款限定承認・第4款放棄)、第5節財産の分離及び第6節相続人の不存在」の節・款で構成され、条文としては第997条から第1059条までです。

 

   第5編 相続
    第1章 相続
     第1節 総則
 (相続開始の原因)0882
第997条 相続は、死亡によって開始する。
 (相続開始の場所)0883
第998条 相続は、被相続人の住所地において開始する。
 (相続の費用)0885
第998条の2 相続に関する費用は、相続財産の中から支払う。
 (相続回復請求権)0884
第999条 相続権が僭称相続権者により侵害されたときは、相続権者又はその法定代理人は、相続回復の訴えを提起することができる。
2 前項の規定による相続回復請求権は、その侵害を知った日から3年、相続権の侵害行為があった日から10年を経過した時に消滅する。

     第2節 相続人

 (相続の順位)0887-01:0889-01:0886
第1000条 相続においては、次の順位で相続人となる。
 (1)被相続人直系卑属
 (2)被相続人直系尊属
 (3)被相続人の兄弟姉妹
 (4)被相続人の4親等以内の傍系血族
2 前項の場合において、同順位の相続人が数人あるときは最も近い親等の者を先順位とし、同親等の相続人が数人あるときは共同相続人となる。
3 胎児は、相続の順位については、既に出生したものとみなす。
 (代襲相続0887-02.03:0889-02
第1001条 前条第1項第1号及び第3号の規定により相続人となるべき直系卑属又は兄弟姉妹が相続の開始前に死亡し、又は欠格者となった場合においてその直系卑属があるときは、その直系卑属は、死亡し、又は欠格した者の順位に代わって相続人になる。
第1002条 削除
 (配偶者の相続の順位)0890
第1003条 被相続人の配偶者は、第1000条第1項第1号及び第2号の規定による相続人がある場合はその相続人と同順位で共同相続人となり、その相続人がない場合は単独の相続人となる。
2 第1001条の場合において、相続の開始前に死亡し、又は欠格した者の配偶者は、同条の規定による相続人と同順位で共同相続人となり、その相続人がないときは、、単独の相続人となる。
 (相続人の欠格事由)0891
第1004条 次のいずれかに該当する者は、相続人となることができない。
 (1)故意に直系尊属被相続人、その配偶者又は相続の先順位若しくは同順位である者を殺害し、又は殺害しようとした者
 (2)故意に直系尊属被相続人及びその配偶者に傷害を加えて死亡に至らせた者
 (3)詐欺又は強迫により被相続人の相続に関する遺言又は遺言の撤回を妨害した者
 (4)詐欺又は強迫により被相続人の相続に関する遺言をさせた者
 (5)被相続人の相続に関する遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

     第3節 相続の効力

      第1款 一般的効力

 (相続と包括的な権利義務の承継)0896
第1005条 相続人は、相続が開始した時から、被相続人の財産に関する包括的な権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属するものは、この限りでない。
 (共同相続と財産の共有)0898
第1006条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有とする。
 (共同相続人の権利義務の承継)0899
第1007条 共同相続人は、各自の相続分に応じ、被相続人の権利義務を承継する。
 (特別受益者の相続分)0903
第1008条 共同相続人中に被相続人から財産の贈与又は遺贈を受けた者がある場合において、その者の受贈財産が自己の相続分に達しないときは、その不足する部分の限度において相続分を有する。
 (寄与分0904の2
第1008条の2 共同相続人中に、相当な期間にわたり同居及び看護その他の方法により被相続人を特別に扶養し、又は被相続人の財産の維持若しくは増加につき特別に寄与した者があるときは、相続開始の当時の被相続人の財産の価額から共同相続人の協議により定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第1009条及び第1010条の規定により算定した相続分に寄与分を加算した額をもって、その者の相続分とする。
2 前項の協議が調わず、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定にされた寄与者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他の事情を参酌して寄与分を定める。
3 寄与分は、相続が開始した時の被相続人の財産の価額から遺贈の価額を控除した額を超えることができない。
4 第2項の請求は、第1013条第2項の規定による請求があった場合又は第1014条に規定する場合において、することができる。
 (墳墓等の承継)0897
第1008条の3 墳墓に属する1町歩以内の禁養林野及び600坪以内の墓地である農地、族譜並びに祭具の所有権は、祭祀を主宰する者が承継する。

      第2款 相続分

 (法定相続分0900
第1009条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、均分とする。
2 被相続人の配偶者の相続分は、直系卑属と共同で相続するときは直系卑属の相続分の5割を加算し、直系尊属と共同で相続するときは直系尊属の相続分の5割を加算する。
 (代襲相続分)0901
第1010条 第1001条の規定により死亡し、又は欠格した者に代わて相続人になった者の相続分は、死亡し、又は欠格した者の相続分による。
2 前項の場合において、死亡し、又は欠格した者の直系卑属が数人あるときは、その相続分は、死亡し、又は欠格した者の相続分を限度とし、前条の規定により定める。第1003条第2項の場合においても、また同じ。
 (共同相続分の譲受け)0905
第1011条 共同相続人の中にその相続分を第三者に譲渡した者があるときは、他の共同相続人は、その価額及び譲渡費用を償還し、その相続分を譲り受けることができる。
2 前項の権利は、その事由を知った日から3月、その事由があった日から1年内に行使しなければならない。

      第3款 相続財産の分割

 (遺言による分割の方法の指定及び分割の禁止)0908
第1012条 被相続人は、遺言により、相続財産の分割の方法を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができ、また、相続開始の日から5年を超えない期間内でその分割を禁止することができる。
 (協議による分割)0907-01
第1013条 前条の場合を除き、共同相続人は、いつでもその協議により相続財産を分割することができる。
2 第269条の規定は、前項の相続財産の分割について準用する。
 (分割後の被認知者等の請求権)0910
第1014条 相続の開始後の認知又は裁判の確定により共同相続人となった者は、相続財産の分割を請求する場合において他の共同相続人が既に分割その他の処分をしたときは、その相続分に相当する価額の支払いを請求する権利を有する。
 (分割の遡及効0909
第1015条 相続財産の分割は、相続が開始された時に遡及してその効力が生じる。ただし、第三者の権利を害することができない。
 (共同相続人の担保責任)0911
第1016条 共同相続人は、他の共同相続人が分割により取得した財産について、その相続分に応じ、売主と同様の担保責任を負う。
 (相続債務者の資力に対する担保責任)0912
第1017条 共同相続人は、他の相続人が分割により取得した債権について、分割の当時における債務者の資力を担保する。
2 弁済期未到来の債権又は停止条件付きの債権については、弁済を請求することができる時における債務者の資力を担保する。
 (無資力の共同相続人の担保責任の分担)0913
第1018条 担保責任を負う共同相続人の中に償還の資力のない者があるときは、その負担部分については、求償権者及び資力のある他の共同相続人が、その相続分に応じて分担する。ただし、求償権者の過失により償還を受けることができなかったときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。

     第4節 相続の承認及び放棄

      第1款 総則

 (承認及び放棄の期間)0915
第1019条 相続人は、相続の開始があったことを知った日から3月内に単純承認若しくは限定承認又は放棄をすることができる。ただし、その期間は、利害関係人又は検察官の請求により、家庭裁判所において延長することができる。
2 相続人は、前項の承認又は放棄をする前に、相続財産を調査することができる。
3 第1項の規定にかかわらず、相続人は、相続債務が相続財産を超過する事実を重大な過失なく第1項に規定する期間内に知ることができずに単純承認(第1026条第1号及び第2号の規定により単純承認したものとみなす場合を含む。)をした場合は、その事実を知った日から3月内に限定承認をすることができる。
 (制限能力者の承認及び放棄の期間)0917
第1020条 相続人が制限能力者である場合は、前条第1項に規定する期間については、その親権者又は後見人が相続の開始されたことを知った日から起算する。
 (承認及び放棄の期間の計算に関する特則)0916
第1021条 相続人が承認又は放棄をしないで、第1019条第1項に規定する期間内に死亡したときは、その相続人が自己のために相続の開始があったことを知った日から同項に規定する期間を起算する。
 (相続財産の管理)0918-01
第1022条 相続人は、その固有財産におけると同一の注意をもって相続財産を管理しなければならない。ただし、単純承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
 (相続財産の保存に必要な処分)0918-02.03
第1023条 裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、相続財産の保存に必要な処分を命じることができる。
2 裁判所が財産管理人を選任した場合については、第24条から第26条までの規定を準用する。
 (承認及び放棄の取消しの禁止)0919-01.02.03
第1024条 相続の承認又は放棄は、第1019条第1項に規定する期間内であっても取り消すことができない。
2 前項の規定は、総則編の規定による取消しに影響を及ぼさない。ただし、その取消権は、追認することができる日から3月内、承認又は放棄した日から1年内に行使しなければ、時効により消滅する。

      第2款 単純承認

 (単純承認の効果)0920
第1025条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
 (法定単純承認)0921
第1026条 次の事由がある場合は、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
 (1)相続人が相続財産に対する処分行為をしたとき。
 (2)相続人が第1019条第1項に規定する期間内に限定承認又は放棄をしなかったとき。
 (3)相続人が、限定承認又は放棄をした後に、相続財産を隠匿し、不正に消費し、又は故意に財産の目録に記入しなかったとき。
 (法定単純承認の例外)
第1027条 相続人が相続を放棄したことにより次順位の相続人が相続を承認したときは、前条第3号の事由は、相続の承認とみなさない。

      第3款 限定承認

 (限定承認の効果)0922
第1028条 相続人は、相続により取得すべき財産の限度において被相続人の債務及び遺贈を弁済することを条件として、相続を承認することができる。
 (共同相続人の限定承認)0923
第1029条 相続人が数人あるときは、各相続人は、その相続分に応じて取得すべき財産の限度においてその相続分に応じた被相続人の債務及び遺贈を弁済することを条件として、相続を承認することができる。
 (限定承認の方式)0924
第1030条 相続人は、限定承認をするときは、第1019条第1項又は第3項に規定する期間内に相続財産の目録を添えて裁判所に限定承認の申告をしなければならない。
2 第1019条第3項の規定により限定承認をした場合において、相続財産の中に既に処分した財産があるときは、その目録及び価額を共に提出しなければならない。
 (限定承認と財産上の権利義務の不消滅)0925
第1031条 相続人が限定承認をしたときは、被相続人に対する相続人の財産上の権利義務は、消滅しない。
 (債権者に対する公告及び催告)0927
第1032条 限定承認者は、限定承認をした日から5日内に、一般相続債権者及び受遺者に対して限定承認の事実及び一定の期間内にその債権又は受贈を申告すべき旨を公告しなければならない。
2 第88条第2項及び第3項並びに第89条の規定は、前項の場合について準用する。
 (催告期間中の弁済の拒絶)0928
第1033条 限定承認者は、前条第1項の一定の期間の満了前においては、相続債権の弁済を拒むことができる。
 (配当弁済)0929
第1034条 限定承認者は、第1032条第1項の一定の期間の満了後は、相続財産をもって、その期間内に申告した債権者及び限定承認者に知れている債権者に対し、各々の債権額の割合に応じて弁済しなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。
2 第1019条第3項の規定により限定承認をした場合は、その相続人は、相続財産中に残った相続財産と既に処分した財産の価額を合わせ、前項の弁済をしなければならない。ただし、限定承認をする前に相続債権者又は受贈者に対して弁済した価額は、既に処分した財産の価額から除外する。
 (弁済期前の債務等の弁済)0930
第1035条 限定承認者は、弁済期に到らない債権であっても、前条の規定により弁済しなければならない。
2 条件付きの債権又は存続期間の不確定な債権については、裁判所の選任した鑑定人の評価により弁済しなければならない。
 (受遺者への弁済)0931
第1036条 限定承認者は、前2条の規定により相続債権者に対する弁済を完了した後でなければ、受遺者に弁済することができない。
 (相続財産の競売)0932
第1037条 前3条の規定による弁済をするために相続財産の全部又は一部を売却する必要があるときは、民事執行法により競売しなければならない。
 (不当弁済等による責任)0934
第1038条 限定承認者が第1032条の規定による公告又は催告を怠り、又は第1033条から第1036条までの規定に違反してある相続債権者又は受遺者に弁済することにより、他の相続債権者又は受遺者に対して弁済できなくなったときは、限定承認者は、その損害を賠償しなければならない。第1019条第3項の規定により限定承認をした場合において、それ以前に相続債務が相続財産を超過することを知ることができなかったことにつき過失のある相続人が相続債権者又は受遺者に弁済したときも、また同じ。
2 前項前段の場合において、弁済を受けることができなかった相続債権者又は受遺者は、その事情を知って弁済を受けた相続債権者又は受遺者に対して求償権を行使することができる。第1019条第3項の規定により限定承認をした場合において、それ以前に相続債務が相続財産を超過することを知って弁済を受けた相続債権者又は受遺者がいるときも、また同じ。
3 第766条の規定は、前2項の場合について準用する。
 (申告しなかった債権者等)0935
第1039条 第1032条第1項の一定の期間内に申告しなかった相続債権者及び受遺者で限定承認者が知り得なかったものは、相続財産の残余がある場合に限り、その弁済を受けることができる。ただし、相続財産について特別担保権のあるときは、この限りでない。
 (共同相続財産とその管理人の選任)0936
第1040条 相続人が数人ある場合は、裁判所は、各相続人その他の利害関係人の請求により、共同相続人の中から相続財産の管理人を選任することができる。
2 裁判所が選任した管理人は、共同相続人を代表して相続財産の管理及び債務の弁済に関する一切の行為をする権利義務を有する。 
3 第1022条及び第1032条から前条までの規定は、前項の管理人について準用する。ただし、第1032条の規定により公告する5日の期間は、管理人がその選任を知った日から起算する。

      第4款 放棄

 (放棄の方式)0938
第1041条 相続人は、相続を放棄するときは、第1019条第1項に規定する期間内に家庭裁判所に放棄の申告をしなければならない。
 (放棄の遡及効0939
第1042条 相続の放棄は、相続が開始した時に遡及して効力を生じる。
 (放棄した相続財産の帰属)
第1043条 相続人が数人ある場合において、ある相続人が相続を放棄したときは、その相続分は、他の相続人の相続分の割合に応じ、他の相続人に帰属する。
 (放棄した相続財産の管理の継続義務)0940
第1044条 相続を放棄した者は、その放棄により相続人となった者が相続財産を管理できるときまで、その財産の管理を継続しなければならない。
2 第1022条及び第1023条の規定は、前項の財産の管理について準用する。

      第5節 財産の分離

 (相続財産の分離請求権)0941-01:0950-01
第1045条 相続債権者、受遺者又は相続人の債権者は、相続が開始された日から3月内に相続財産と相続人の固有財産の分離を裁判所に請求することができる。
2 相続人が相続の承認又は放棄をしない間は、前項に規定する期間の経過後であっても、財産の分離を裁判所に請求することができる。
 (分離命令と債権者等に対する公告及び催告)0941-02.03
第1046条 裁判所が前条の規定による請求によって財産の分離を命じるときは、その請求者は、5日内に一般相続債権者及び受遺者に対して財産の分離の命令があった事実及び一定の期間内にその債権又は受贈を申告すべき旨を公告しなければならない。その期間は、2月以上でなければならない。
2 第88条第2項及び第3項並びに第89条の規定は、前項の場合について準用する。
 (分離後の相続財産の管理)0943
第1047条 裁判所が財産の分離を命じたときは、相続財産の管理に関して必要な処分を命じることができる。
2 裁判所が財産管理人を選任した場合については、第24条から第26条までの規定を準用する。
 (分離後の相続人の管理義務)0944
第1048条 相続人は、単純承認をした後であっても、財産の分離の命令があったときは、相続財産について自己の固有財産におけると同一の注意をもって管理しなければならない。 
2 第683条から第685条まで並びに第688条第1項及び第2項の規定は、前項の規定による財産の管理について準用する。
 (財産の分離の対抗要件0945
第1049条 財産の分離は、相続財産である不動産については、これを登記しなければ、第三者に対抗することができない。
 (財産の分離と権利義務の不消滅)
第1050条 財産の分離の命令があっても、被相続人に対する相続人の財産上の権利義務は、消滅しない。
 (弁済の拒絶と配当弁済)0947
第1051条 相続人は、第1045条に規定する期間及び第1046条の一定の期間の満了前においては、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
2 前項の期間の満了後において、相続人は、相続財産をもって財産の分離の請求又はその期間内に申告した相続債権者及び受遺者並びに相続人に知れている相続債権者及び受遺者に対し、各債権額又は受贈額の割合に応じて弁済しなければならない。
3 第1035条から第1038条までの規定は、前項の場合について準用する。
 (固有財産からの弁済)0948
第1052条 前条の規定による相続債権者及び受遺者は、相続財産をもって全額の弁済を受けることができなかった場合に限り、相続人の固有財産からその弁済を受けることができる。
2 前項の場合において、相続人の債権者は、相続人の固有財産から優先弁済を受ける権利を有する。

     第6節 相続人の不存在

 (相続人のない財産の管理人)0951:0952:0953
第1053条 相続人の存否が明らかでないときは、裁判所は、第777条の規定による被相続人の親族その他の利害関係人又は検察官の請求により、相続財産の管理人を選任し、遅滞なくこれを公告しなければならない。
2 第24条から第26条の規定は、前項の財産の管理人について準用する。
 (財産目録の提示及び状況の報告)0954
第1054条 管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、いつでも相続財産の目録を提示し、その状況を報告しなければならない。
 (相続人の存在が明らかになった場合)0956
第1055条 管理人の任務は、その相続人が相続の承認をした時に終了する。
2 前項の場合において、管理人は、遅滞なくその相続人に対して管理の計算をしなければならない。
 (相続人のない財産の清算0957
第1056条 第1053条第1項の規定による公告があった日から3月内に相続人の存否を知ることができないときは、管理人は、遅滞なく一般相続債権者及び受遺者に対して一定の期間内にその債権又は受贈を申告すべき旨を公告しなければならない。その期間は、2月以上でなければならない。
2 第88条第2項及び第3項、第89条並びに第1033条から第1039条の規定は、前項の場合について準用する。
 (相続人捜索の公告)0958
第1057条 前条第1項の一定の期間が経過しても相続人の存否が知れないときは、裁判所は、管理人の請求により、相続人があるときは一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。その期間は、1年以上でなければならない。
 (特別縁故者に対する分与)0958の2:0958の3
第1057条の2 前条の規定による期間内に相続権を主張する者がないときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を共にしていた者、被相続人の療養看護をした者その他の被相続人と特別な縁故があった者の請求により、相続財産の全部又は一部を分与することができる。
2 前項の請求は、前条の期間後2月以内にしなければならない。
 (相続財産の国への帰属)0959
第1058条 前条の規定により分与されなかったときは、相続財産は、国に帰属する。
2 第1055条第2項の規定は、前項の場合について準用する。
 (国に帰属した財産に対する弁済の請求の禁止)
第1059条 前条第1項の場合において、相続財産から弁済を受けることができなかった相続債権者又は受遺者があるときであっても、国に対してその弁済を請求することはできない。