新私訳:韓国の民法 その5<第185条~第210条>

  第2編 物権
   第1章 総則  
 (物権の種類)0175
第185条 物権は、法律又は慣習法によらないで任意に創設することができない。
 (不動産物権変動の効力)0176:0177 
第186条 不動産に関する法律行為による物権の得喪変更は、登記することにより、効力を生じる。
 (登記を要しない不動産物権の取得)
第187条 相続、公用徴収、判決、競売その他法律の規定による不動産に関する物権の取得は、登記を要しない。ただし、登記をしなければ、これを処分することができない。 
 (動産物権譲渡の効力及び簡易の引渡し)0176:0178 
第188条 動産に関する物権の譲渡は、その動産を引き渡すことにより、効力を生じる。
 譲受人が既にその動産を占有しているときは、当事者の意思表示のみにより、その効力を生じる。
 (占有改定)0183
第189条 動産に関する物権を譲渡する場合において、当事者の契約により譲渡人がその動産の占有を継続するときは、譲受人が引渡しを受けたものとみなす。
 (目的物返還請求権の譲渡)0184 
第190条 第三者が占有している動産に関する物権を譲渡する場合は、譲渡人がその第三者に対する返還請求権を譲受人に譲渡することをもって、動産を引き渡したものとみなす。 
 (混同による物権の消滅)0179
第191条 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、他の物権は、消滅する。ただし、その物権が第三者の権利の目的になっているときは、消滅しない。
 前項の規定は、所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属した場合について準用する。
 占有権については、前2項の規定は、適用しない。
   第2章 占有権 
 (占有権の取得及び消滅)0180:0203
第192条 物を事実上支配する者は、占有権を有する。
 占有者が物に対する事実上の支配を喪失したときは、占有権は、消滅する。ただし、第204条の規定により占有を回収したときは、この限りでない。
 (相続による占有権の移転)
第193条 占有権は、相続人に移転する。 
 (間接占有)0181
第194条 地上権、伝貰権、質権、使用貸借、賃貸借、寄託その他の関係により他人に物を占有させた者は、間接的に占有権を有する。  
 (占有補助者)
第195条 家事上、営業上その他これらに類する関係により他人の指示を受けて物に対する事実上の支配をするときは、その他人のみを占有者とする。   
 (占有権の譲渡)0182:0183:184
第196条 占有権の譲渡は、占有物の引渡しにより、その効力を生じる。
 前項の占有権の譲渡については、第188条第2項、第189条及び第190条の規定を準用する。 
 (占有の態様)0186-01:0189-02
第197条 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有するものと推定する。
 善意の占有者であっても、 本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えが提起された時から悪意の占有者とみなす。
 (占有継続の推定)0186-02
第198条 前後の両時点において占有した事実があるときは、その占有は、継続したものと推定する。
 (占有の承継の主張及びその効果)0187
第199条 占有者の承継人は、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有と前の占有者の占有を併せて主張することができる。
 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵も承継する。
 (権利の適法の推定)0188
第200条 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。
 (占有者と果実)0189-01:0190
第201条 善意の占有者は、占有物の果実を取得する。
 悪意の占有者は、収取した果実を返還し、かつ、消費し、過失により毀損し、又は収取することができなかった場合にはその果実の代価を補償しなければならない。
 前項の規定は、暴力又は隠秘による占有者について準用する。
 (占有者の回復者に対する責任)0191
第202条 占有物が占有者の責めに帰すべき事由により滅失し、又は毀損したときは、悪意の占有者はその損害の全部を賠償し、善意の占有者は現に利益を受けている限度において賠償しなければならない。 所有の意思のない占有者は、善意である場合であっても、損害の全部を賠償しなければならない。
 (占有者の償還請求権)0196
第203条 占有者が占有物を返還するときは、回復者に対して、占有物を保存するために支出した金額その他の必要費の償還を請求することができる。ただし、占有者が果実を取得した場合には、通常の必要費は、請求することができない。
2 占有者が占有物を改良するために支出した金額その他の有益費については、その価額の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出金額又は増加額の償還を請求することができる。
3 前項の場合において、裁判所は、回復者の請求により、相当な償還期間を許与することができる。
 (占有の回収)0200:0201-03
第204条 占有者が占有の侵奪を受けたときは、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 前項の規定による請求権は、侵奪者の特別承継人に対して行使することができない。ただし、承継人が悪意であるときは、この限りでない。
3 第1項の規定による請求権は、侵奪を受けた日から1年内に行使しなければならない。
 (占有の保持)0198:0201-01
第205条 占有者が占有の妨害を受けたときは、その妨害の除去及び損害の賠償を請求することができる。
2 前項の規定による請求権は、妨害が終了した日から1年内に行使しなければならない。
3 工事により占有の妨害を受けた場合において、工事着手後1年を経過し、又はその工事が完成したときは、妨害の除去を請求することができない。
 (占有の保全0199:0201-02
第206条 占有者が占有の妨害を受けるおそれがあるときは、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。
2 工事により占有の妨害を受けるおそれがある場合には、前条第3項の規定を準用する。
 (間接占有の保護)
第207条 前3条の規定による請求権は、第194条の規定による間接占有者も、これを行使することができる。
 占有者が占有の侵奪を受けた場合において、間接占有者は、その物を占有者に返還することを請求することができ、占有者がその物の返還を受けることができないとき又はこれを望まないときは自己に返還することを請求することができる。 
 (占有の訴えと本権の訴えとの関係)0202
第208条 占有の訴えと本権の訴えは、互いに影響を及ぼさない。
 占有の訴えについては、本権に関する理由をもって裁判することができない。 
 (自力救済)
第209条 占有者は、その占有を不正に侵奪し、又は妨害する行為に対して、自力をもってこれを防衛することができる。
 占有物が侵奪された場合において、占有者は、不動産であるときは侵奪後直ちに加害者を排除してこれを奪還することができ、動産であるときは現場で又は追跡して加害者からこれを奪還することができる。
 (準占有)0205
第210条 この章の規定は、財産権を事実上行使する場合について準用する。