新私訳:韓国の民法 その11<第554条~第597条>

    第2節 贈与 
 (贈与の意義)0549
第554条 贈与は、当事者の一方が無償で財産を相手方に与える意思を表示し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生じる。
 (書面によらない贈与と解除)0550
第555条 贈与の意思が書面で表示されなかった場合には、各当事者は、これを解除することができる。
 (受贈者の行為と贈与の解除)
第556条 受贈者が次に掲げる場合に該当するときは、贈与者は、その贈与を解除することができる。
 (1) 贈与者又はその配偶者若しくは直系血族に対する犯罪行為を行ったとき
 (2) 贈与者に対して扶養義務がある場合において、これを履行していないとき
 前項の解除権は、解除の原因があることを知った日から6月を経過し、又は贈与者が受贈者に対して宥恕の意思を表示したときは、消滅する。
 (贈与者の財産状態の変更と贈与の解除)
第557条 贈与契約後に贈与者の財産状態が著しく変化し、その 履行により生計に重大な影響を及ぼす場合には、贈与者は、贈与を解除することができる。
 (解除と履行の完了部分)0550但
第558条 前3条の規定による契約の解除は、既に履行した部分については、影響を及ぼさない。
 (贈与者の担保責任)0551
第559条 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は欠缺について責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は欠缺を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
 相手方負担のある贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じ担保の責任を負う。
 (定期贈与と死亡による失効)0552
第560条 定期の給付を目的とした贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。
 (負担付贈与)0553
第561条 相手方負担のある贈与については、この節の規定のほか、双務契約に関する規定を適用する。
 (死因贈与0554
第562条 贈与者の死亡によって効力を生じる贈与については、遺贈に関する規定を準用する。
    第3節 売買 
     第1款 総則
 (売買の意義)0555
第563条 売買は、当事者の一方が財産権を相手方に移転することを約し、相手方がその代金を支払うことを約することによって、その効力を生じる。
 (売買の一方の予約)0556
第564条 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時に、売買の効力を生じる。
 前項に規定する意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相当の期間を定めて、売買を完結するかどうかの確答を相手方に催告することができる。
 予約者が前項の期間内に確答を受けなかったときは、予約は、効力を失う。
 (手付)0557
第565条 売買の当事者の一方が契約の時に金銭その他の物を契約金、保証金等の名目で相手方に交付したときは、当事者間で別段の定めがない限り、当事者の一方が履行に着手する時まで、交付者はこれを放棄し、受領者はその倍額を償還して、売買契約を解除することができる。
 第551条の規定は、前項の場合について適用しない。
 (売買契約に関する費用の負担)0558
第566条 売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。
 (有償契約への準用)0559
第567条 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
     第2款 売買の効力
 (売買の効力)
第568条 売主は買主に売買の目的となった権利を移転し、買主は売主にその代金を支払わなければならない。
 前項の規定による双方の義務は、特約又は慣習がないときは、同時に履行しなければならない。
 (他人の権利の売買)0561
第569条 売買の目的となった権利が他人に属する場合には、売主は、その権利を取得して買主に移転しなければならない。
 (他人の権利の売買における売主の担保責任)
第570条 前条の場合において、売主がその権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約を解除することができる。ただし、買主が契約の時にその権利の売主に属さないことを知っていたときは、損害賠償を請求することができない。
 (他人の権利の売買における善意の売主の担保責任)
第571条 売主が契約の時に売買の目的となった権利の自己に属さないことを知ることができなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、契約を解除することができる。
 前項の場合において、買主が契約の時に、その権利が売主に属さないことを知っていたときは、売主は、 買主に対してその権利を移転することができないことを通知して、契約を解除することができる。
 (権利の一部が他人に属している場合と売主の担保責任)0565
第572条 売買の目的となった権利の一部が他人に属することにより売主がその権利を取得して、買主に移転することができないときは、買主は、その部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。
 前項の場合において、残存する部分のみでば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の全部を解除することができる。
 善意の買主は、減額の請求又は契約の解除のほか、損害賠償を請求することができる。
 (前条の規定による権利の行使期間)0566
第573条 前条の規定による権利は、買主が善意であった場合には事実を知った日から、悪意である場合には契約した日から1年内に行使しなければならない。
 (数量不足及び一部滅失の場合と売主の担保責任)0565
第574条 前2条の規定は、数量を指定した売買の目的物が不足する場合及び売買の目的物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足又は滅失を知ることができなかったときについて準用する。
 (制限物権のある場合と売主の担保責任)0565:0566
第575条 売買の目的物が地上権、地役権、伝貰権、質権又は留置権の目的となった場合において、買主がこれを知らなかったときは、これによって契約の目的を達成することができない場合に限り、買主は、契約を解除することができる。その他の場合には、損害賠償のみを請求することができる。
 前項の規定は、売買の目的となった不動産のために存在すべき地役権がなく、又はその不動産に登記された賃貸借契約がある場合について準用する。
 前2項の規定による権利は、買主がその事実を知った日から1年内に行使しなければならない。
 (抵当権及び伝貰権の行使と売主の担保責任)0570
第576条 売買の目的となった不動産に設定された抵当権又は伝貰権の行使によって、買主がその所有権を取得することができず、又は取得した所有権を失ったときは、買主は、契約を解除することができる。
 前項の場合において、買主が自己の財産をもってその所有権を保存したときは、売主に対してその償還を請求することができる。
 前2項の場合において、買主が損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。
 (抵当権の目的となっている地上権及び伝貰権の売買と売主の担保責任)
第577条 前条の規定は、抵当権の目的となっている地上権又は伝貰権が売買の目的となっている場合について準用する。
 (競売と売主の担保責任)0568-01~03
第578条 競売の場合には、買受人は、第570条から前条までの規定により、債務者に対し、契約の解除又は代金の減額の請求をすることができる。
 前項の場合において、債務者が資力のないときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。
 前2項の場合において、債務者が物又は権利の存在しないことを知りながら告知せず、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、その存在しないことを知っていた債務者又は債権者に対し、損害賠償を請求することができる。
 (債権の売買と売主の担保責任)0569
第579条 債権の売主が債務者の資力を担保したときは、売買契約の時における資力を担保したものと推定する。
 弁済期に到らない債権の売主が債務者の資力を担保したときは、弁済期における資力を担保したものと推定する。
 (売主の瑕疵担保責任0562~0564:0568-04
第580条 売買の目的物に瑕疵があるときは、第575条第1項の規定を準用する。ただし、買主が瑕疵のあることを知り、又は過失によりこれを知らなかったときは、この限りでない。
 前項の規定は、競売の場合について適用しない。
 (種類売買と売主の担保責任)
第581条 売買の目的物を種類で指定した場合においても、その後に特定された目的物に瑕疵があるときは、前条の規定を準用する。
 前項の場合において、買主は、契約の解除又は損害賠償の請求をせず、瑕疵のない物を請求することができる。
 (前2条の規定による権利の行使期間)0566
第582条 前2条の規定による権利は、買主がその事実を知った日から6月内に行使しなければならない。
 (担保責任と同時履行)
第583条 第536条の規定は、第572条から第575条まで、第580条及び第581条の場合について準用する。
 (担保責任の免除の特約)0572
第584条 売主は、第569条から前条までの規定による担保責任を免れる特約をした場合であっても、売主が知りながら告げなかった事実及び第三者に権利を設定し、又は譲渡した行為については、責任を免れることができない。
 (同一期限の推定)0573
第585条 売買の当事者の一方に対する義務の履行について期限があるときは、相手方の義務の履行についても、同一の期限があるものと推定する。
 (代金の支払場所)0574
第586条 売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべき場合は、その引渡しの場所において、これを支払わなければならない。
 (果実の帰属及び代金の利息)0575
第587条 売買契約をした後も引き渡していない目的物から生じた果実は、売主に属する。 買主は、目的物の引渡しを受けた日から、代金の利息を支払わなければならない。ただし、代金の支払について期限があるときは、この限りでない。
 (権利主張者がある場合と代金の支払拒絶権)0576
第588条 売買の目的物について権利を主張する者がある場合において、買主が買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがあるときは、買主は、その危険の限度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。
 (代金の供託請求権)0578
第589条 前条の場合において、売主は、買主に対して代金の供託を請求することができる。
     第3款 買戻し
 (買戻しの意義)0579
第590条 売主が売買契約と同時に買い戻す権利を留保したときは、その領収した代金及び買主が負担した売買の費用を返還して、その目的物を買い戻すことができる。
 前項に規定する買戻しの代金について特約があるときは、その定めによる。
 前2項の場合において、目的物の果実と代金の利息とは、特約がないときは、相殺したものとみなす。
 (買戻しの期間)0580
第591条 買戻しの期間は、不動産については5年、動産については3年を超えることができない。約定期間がこれを超えるときは、不動産については5年、動産については3年に短縮する。
 買戻しの期間を定めたときは、更にこれを延長することができない。
 買戻しの期間を定めなかったときは、その期間は、不動産については5年、動産については3年とする。
 (買戻しの登記)0581-01
第592条 売買の目的物が不動産である場合において、売買の登記と同時に買戻権の留保を登記したときは、第三者に対して、その効力を有する。
 (買戻権の代位行使と買主の権利)0582
第593条 売主の債権者が売主を代位して買い戻そうとするときは、買主は、裁判所が選定した鑑定人の評価額から売主が返還すべき金額を控除した残額をもって売主の債務を弁済し、余剰額があるときはこれを売主に支払って、買戻権を消滅させることができる。
 (買戻しの実行)0583
第594条 売主は、期間内に代金及び売買の費用を買主に提供しなければ、買い戻す権利を失う。
 買主又は転得者が目的物について費用を支出したときは、売主は、第203条の規定によりこれを償還しなければならない。ただし、有益費については、裁判所は、売主の請求により、相当の償還期間を許与することができる。
 (共有持分の買戻し)0584
第595条 共有者の一人が買い戻す権利を留保して、その持分を売り渡した後に、その目的物の分割又は競売があったときは、売主は、買主が受けた、又は受けるべき部分又は代金について、買戻権を行使することができる。ただし、売主に通知しなかった買主は、その分割又は競売をもって売主に対抗することができない。
    第4節 交換
 (交換の意義)0586-01
第596条 交換は、当事者双方が金銭以外の財産権を互いに移転することを約することによって、その効力を生じる。
 (金銭の補充支払の場合)0586-02
第597条 当事者の一方が前条の財産権の移転及び金銭の補充支払を約したときは、その金銭については、売買の代金に関する規定を準用する。