新私訳:韓国の民法 その13<第655条~第733条>

    第8節 雇用
 (雇用の意義)0623
第655条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労務を提供することを約し、相手方がこれに対して報酬を支払うことを約することによって、その効力を生じる。
 (報酬及びその支払時期)0624
第656条 報酬又は報酬額の定めがないときは、慣習に従って支払わなければならない。
 報酬は、定めた時期に支払わなければならず、時期の定めがないときは、慣習に従い、慣習がなければ約定した労務を終えた後遅滞なく、支払わなければならない。
 (権利義務の専属性)0625
第657条 使用者は、労働者の同意を得ないで、その権利を第三者に譲り渡すことができない。
 労働者は、使用者の同意を得ないで、自分に代えて第三者労務を提供させることができない。 
 当事者の一方が前2項の規定に違反したときは、相手方は、契約を解約告知することができる。
 (労働の内容と解約告知権)
第658条 使用者が約定しなかった労務の提供を労働者に要求したときは、労働者は、契約を解約告知することができる。
 約定した労務が特殊な技能を要する場合において、労働者がその技能を有さないときは、使用者は、契約を解約告知することができる。
 (3年以上の経過と解約告知申入権)0626
第659条 雇用の約定期間が3年を超え、又は当事者の一方若しくは第三者の終身の間となっているときは、各当事者は、3年を経過した後はいつでも契約の解約告知の申入れをすることができる。
 前項の場合には、相手方が解約告知の申入れを受けた日から3月が経過した時は、解約告知の効力を生じる。
 (期間の定めがない雇用の解約告知の申入れ)0627
第660条 雇用の期間の定めがないときは、当事者は、いつでも契約の解約告知の申入れをすることができる。
 前項の場合において、相手方が解約告知の申入れを受けた日から1月が経過したときは、解約告知の効力を生じる。
 期間によって報酬を定めたときは、相手方が解約告知の申入れを受けた期の次期が経過することによって、解約告知の効力を生じる。
 (やむを得ない事由と解約告知権)0628
第661条 雇用の期間の定めがある場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、契約を解約告知することができる。ただし、その事由が当事者の一方の過失によって生じたときは、相手方に対して損害を賠償しなければならない。
 (黙示の更新)0629
第662条 雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労務を提供する場合において、使用者が相当の期間内に異議を述べなかったときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用したものとみなす。ただし、当事者は、第660条の規定により解約告知の申入れをすることができる。
 前項の場合には、従前の雇用について第三者が供した担保は、期間の満了によって消滅する。
 (使用者の破産と解約の申入れ)0631
第663条 使用者が破産宣告を受けた場合には、雇用の期間の定めがあるときであっても、労働者又は破産管財人は、契約を解約告知することができる。
 前項の場合には、各当事者は、契約の解約告知による損害の賠償を請求することができない。
    第9節 請負
 (請負の意義)0632
第664条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって、その効力を生じる。
 (報酬の支払時期)0633
第665条 報酬は、その完成した目的物の引渡しと同時に支払わなければならない。ただし、目的物の引渡しを要しない場合には、その仕事を完成した後遅滞なく支払わなければならない。
 前項の報酬については、第656条第2項の規定を準用する。
 (目的不動産に対する請負人の抵当権設定請求権)
第666条 不動産工事の請負人は、前条の報酬に係る債権を担保するため、その不動産を目的とする抵当権の設定を請求することができる。
 (請負人の担保責任)
第667条 完成した目的物又は完成前の出来上がった部分に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めてその瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分な費用を要するときは、この限りでない。
 注文者は、瑕疵の修補に代え、又は修補とともに、損害賠償を請求することができる。 
 前項の場合においては、第536条の規定を準用する。
 (請負人の担保責任と注文者の解除権)
第668条 注文者が完成した目的物の瑕疵によって契約の目的を達成することができないときは、契約を解除することができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。
 (瑕疵が注文者の供した材料又は指示に基づく場合の免責)0636
第669条 前2条の規定は、目的物の瑕疵が注文者の供した材料の性質又は注文者の指示によって生じたときは、適用しない。ただし、請負人がその材料又は指示の不適当であることを知りながら注文者に告げなかったときは、この限りでない。
 (担保責任の存続期間)0637
第670条 前3条の規定による瑕疵の修補の請求、損害賠償の請求及び契約の解除は、目的物の引渡しを受けた日から1年内にしなければならない。
 目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した日から起算する。
 (請負人の担保責任の土地及び建物等についての特則)0636
第671条 土地又は建物その他の工作物の請負人は、目的物又は地盤工事の瑕疵について、引渡し後5年間担保の責任を負う。ただし、目的物が石造、石灰造、煉瓦造又は金属その他これに類似する材料で造られたものであるときは、その期間を10年とする。
 前項の瑕疵によって目的物が滅失し、又は毀損したときは、注文者は、その滅失し、又は毀損した日から1年内に第667条の権利を行使しなければならない。
 (担保責任の免除の特約)
第672条 請負人は、第667条又は第668条の担保責任を負わないことを約した場合であっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。
 (完成前の注文者の解除権)0641 
第673条 請負人が仕事を完成するまでは、注文者は、損害を賠償して契約を解除することができる。
 (注文者の破産と解除権)0642
第674条 注文者が破産宣告を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約を解除することができる。 この場合において、請負人は、仕事の完成した部分に対する報酬及び報酬に含まれない費用について、破産財団の配当に加入することができる。
 前項の場合には、各当事者は、相手方に対し、契約の解除による損害の賠償を請求することができない。
    第9節の2 旅行契約
 (旅行契約の意義)
第674条の2 旅行契約は、当事者の一方が相手方に運送、宿泊、観光又はその他の旅行に関連する役務を結合して提供することを約し、相手方がその代金を支払うことを約することによって、効力を生じる。
 (旅行開始前の契約の解除)
第674条の3 旅行者は、旅行を開始するまでは、いつでも契約を解除することができる。 ただし、旅行者は、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。
 (やむを得ない事由による契約の解約告知)
第674条の4 やむを得ない事由がある場合には、各当事者は、契約を解約告知することができる。 ただし、その事由が当事者の一方の過失によって生じた場合には、相手方に損害を賠償しなければならない。
 前項の規定により契約が解約告知された場合であっても、契約上帰還運送の義務がある旅行主催者は、旅行者を帰還運送する義務を負う.
 第1項の規定による解約告知によって生じる追加費用は、その解約告知の事由が、いずれかの当事者の事情に属する場合にはその当事者が負担し、いずれの当事者の事情にも属さない場合には各当事者が等しい割合で負担する。
 (代金の支払時期)
第674条の5 旅行者は、定めた時期に代金を支払わなければならず、また、その時期について定めがないときは、慣習により、慣習がなければ旅行の終了後遅滞なく、支払わなければならない。
 (旅行主催者の担保責任)
第674条の6 旅行に瑕疵がある場合には、旅行者は、旅行主催者に瑕疵の是正又は代金の減額を請求することができる。 ただし、その是正に過分な費用を要する場合又はその他是正を合理的に期待することができない場合は、是正を請求することができない。
 前項の規定による是正の請求は、相当の期間を定めてしなければならない。 ただし、直ちに是正する必要がある場合は、この限りでない。
 旅行者は、是正の請求若しくは減額の請求に代えて損害賠償を請求し、又は是正の請求若しくは減額の請求とともに損害賠償を請求することができる。
 (旅行主催者の担保責任と旅行者の解約告知権)
第674条の7 旅行者は、旅行に重大な瑕疵がある場合において、その是正がなされず、又は契約の内容に従った履行を期待することができないときは、契約を解約告知することができる。
 契約が解約告知された場合には、旅行主催者は、代金の請求権を失う。 ただし、旅行者が実行された旅行によって利益を得た場合には、その利益を旅行主催者に償還しなければならない。
 旅行主催者は、契約の解約告知によって必要になった措置を講じる義務を負い、また、契約上帰還運送の義務を負うときは、旅行者を帰還運送しなければならない。 この場合において、相当の理由があるときは、旅行主催者は、旅行者にその費用の一部を請求することができる。
 (担保責任の存続期間)
第674条の8 第674条の6及び前条の規定による権利は、旅行期間中であっても行使することができ、また、契約で定めた旅行の終了日から6箇月内に行使しなければならない。
 (強行規定
第674条の9 第674条の3、第674条の4又は第674条の6から前条までの規定に違反する約定で旅行者に不利なものは、効力を有しない。 
    第10節 懸賞広告
 (懸賞広告の意義)0529
第675条 懸賞広告は、広告者がある行為をした者に一定の報酬を支払う意思を表示し、これに応じた者がその広告に定めた行為を完了することによって、その効力を生じる。
 (報酬の受領権者)0531
第676条 広告に定めた行為を完了した者が数人ある場合は、先にその行為を完了した者が報酬を受ける権利を有する。
 数人が同時に完了した場合は、それぞれ等しい割合で報酬を受ける権利を有する。ただし、報酬がその性質上分割することができず、又は広告において一人のみが報酬を受ける旨を定めたときは、抽選によって決定する。
 (広告を知らずにした行為)0529
第677条 前条の規定は、広告のあることを知らずに広告に定めた行為を完了した場合について準用する。
 (優等懸賞広告)0532
第678条 広告に定めた行為を完了した者が数人ある場合において、その優等者にのみ報酬を支払う旨を定めているときは、その広告に応募期間を定めたときに限り、その効力を生じる。
 前項の場合において、優等の判定は、広告中に定めた者が行う。 広告中に判定者を定めなかったときは、広告者が判定する。
 優等者がないとする判定は、行うことができない。ただし、広告中に別段の意思表示があり、又は広告の性質上判定の標準が定められているときは、この限りでない。
 応募者は、前2項の判定について異議を述べることができない。
 数人の行為が同等と判定されたときは、第676条第2項の規定を準用する。
 (懸賞広告の撤回)0529の2:0529の3:0530
第679条 広告にその指定した行為の完了期間を定めたときは、その期間の満了前に広告を撤回することができない。
 広告に行為の完了期間を定めなかったときは、その行為を完了した者が現れるまでは、その広告と同一の方法によって広告を撤回することができる。
 従前の広告と同一の方法によって撤回することができないときは、それと類似した方法によって撤回することができる。 この撤回は、撤回した旨を知った者に対してのみ、その効力を有する。
    第11節 委任
 (委任の意義)0643
第680条 委任は、当事者の一方が相手方に事務の処理を委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生じる。
 (受任者の善管義務)0644
第681条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理しなければならない。
 (復任権の制限)0644の2
第682条 受任者は、委任者の承諾又はやむを得ない事由がなければ、自分に代えて第三者に委任事務を処理させることができない。
 受任者が前項の規定により第三者に委任事務を処理させた場合には、第121条及び第123条の規定を準用する。
 (受任者の報告義務)0645
第683条 受任者は、委任者の請求があるときは委任事務の処理状況を報告し、委任が終了したときは遅滞なくその顛末を報告しなければならない。
 (受任者の取得物等の引渡し及び移転の義務)0646
第684条 受任者は、委任事務の処理によって受け取った金銭その他の物及びその収取した果実を委任者に引き渡さなければならない。
 受任者が委任者のために自己の名義で取得した権利は、委任者に移転しなければならない。
 (受任者の金銭消費に対する責任)0647
第685条 受任者が委任者に引き渡すべき金銭又は委任者の利益のために使用すべき金銭を自己のために消費したときは、消費した日以後の利息を支払い、その他に損害があれば賠償しなければならない。
 (受任者の報酬請求権)0648
第686条 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
 受任者が報酬を受けるべき場合は、委任事務を完了した後でなければ、これを請求することができない。 ただし、期間によって報酬を定めたときは、その期間が経過した後に、これを請求することができる。
 受任者が委任事務を処理している中途において、受任者の責めに帰することができない事由によって委任が終了したときは、受任者は、既に処理した事務の割合に応じた報酬を請求することができる。 
 (受任者の費用前払請求権)0649
第687条 委任事務の処理について費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、これを前払しなければならない。
 (受任者の費用償還請求権等)0650
第688条 受任者が委任事務の処理について必要費を支出したときは、委任者に対し、支出した日以後の利息を請求することができる。
 受任者が委任事務の処理に必要な債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってこれを弁済させることができ、その債務が弁済期にないときは、相当の担保を供させることができる。  
 受任者が委任事務の処理のために過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
 (委任の解約告知の自由)0651
第689条 委任契約は、各当事者がいつでも解約告知することができる。
 当事者の一方は、やむを得ない事由がなく相手方の不利な時期に契約を解約告知したときは、その損害を賠償しなければならない。
 (死亡、破産等と委任の終了)0653
第690条 委任は、当事者の一方の死亡又は破産によって終了する。受任者が成年後見開始の審判を受けた場合も、同様とする。
 (委任の終了時の緊急処理)0654
第691条 委任の終了の場合において、急迫な事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるときまで、その事務の処理を継続しなければならない。この場合においては、委任の存続中と同様の効力を有する。
 (委任の終了の対抗要件0655
第692条 委任の終了事由は、これを相手方に通知し、又は相手方がこれを知ったときでなければ、これをもって相手方に対抗することができない。
    第12節 寄託
 (寄託の意義)0657
第693条 寄託は、当事者の一方が相手方に金銭又は有価証券その他の物の保管を委託し、相手方がこれを承諾することによって、効力を生じる。
 (受寄者の寄託物使用の禁止)0658-01
第694条 受寄者は、寄託者の同意を得ないで寄託物を使用することができない。
 (無報酬の受寄者の注意義務)0659(新0659)
第695条 無報酬で寄託を受けた者は、自己の財産と同一の注意をもって寄託物を保管しなければならない。
 (受寄者の通知義務)0660-01
第696条 寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押えをしたときは、受寄者は、遅滞なく寄託者にこれを通知しなければならない。
 (寄託物の性質及び瑕疵に係る寄託者の損害賠償義務)0661
第697条 寄託者は、寄託物の性質又は瑕疵によって生じた損害を受寄者に賠償しなければならない。ただし、受寄者がその性質又は瑕疵を知っていたときは、この限りでない。
 (期間の定めのある寄託の解約告知)0663-02:0662-01
第698条 寄託期間の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなく、その期間の満了前に契約を解約告知することができない。ただし、寄託者は、いつでも契約を解約告知することができる。
 (期間の定めのない寄託の解約告知)0663-01:0662-01
第699条 寄託期間の定めがないときは、各当事者は、いつでも契約を解約告知することができる。
 (寄託物の返還場所)0664
第700条 寄託物は、その保管した場所で返還しなければならない。ただし、受寄者が正当な事由によってその物を移動したときは、現に存する場所で返還することができる。
 (準用規定)0665
第701条 第682条、第684条から第687条まで並びに第688条第1項及び第2項の規定は、寄託について準用する。
 (消費寄託)0666
第702条 受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には、消費貸借に関する規定を準用する。ただし、返還時期の定めがないときは、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。
    第13節 組合
 (組合の意義)0667
第703条 組合は、2人以上の者が互いに出資をして共同の事業を経営することを約することによって、その効力を生じる。
 前項の出資は、金銭その他の財産又は労務によってすることができる。
 (組合財産の合有)0668
第704条 組合員の出資その他の組合財産は、組合員の合有とする。
 (金銭出資の遅滞についての責任)0669
第705条 金銭を出資の目的とした組合員が出資の時期を遅滞したときは、延滞利息を支払うほか、損害を賠償しなければならない。
 (事務執行の方法)0670-01~03.05
第706条 組合契約で業務執行者を定めなかった場合は、組合員の3分の2以上の賛成をもってこれを選任する。
 組合の業務執行は、組合員の過半数をもって決定する。 業務執行者が数人あるときは、その過半数をもって決定する。
 組合の常務は、前項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる。ただし、その事務の完了前に他の組合員又は他の業務執行者の異議があるときは、直ちに中止しなければならない。
 (準用規定)0671
第707条 組合の業務を執行する組合員については、第681条から第688条までの規定を準用する。
 (業務執行者の辞任及び解任)0672
第708条 業務執行者である組合員については、正当な事由がなければ辞任することができず、他の組合員の一致がなければ解任することができない。
 (業務執行者の代理権の推定)0670の2
第709条 組合の業務を執行する組合員は、その業務執行について代理権があるものと推定する。
 (組合員の業務及び財産状態の検査権)0673
第710条 各組合員は、いつでも組合の業務及び財産状態を検査することができる。
 (損益分配の割合)0674
第711条 当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、各組合員の出資の価額に応じてこれを定める。
 利益又は損失について分配の割合を定めたときは、その割合は、利益及び損失に共通なものと推定する。
 (組合員に対する債権者の権利行使)0675-02
第712条 組合の債権者は、その債権の発生の時に組合員の損失負担の割合を知ることができなかったときは、各組合員に対して等しい割合でその権利を行使することができる。
 (無資力の組合員の債務と他の組合員の弁済責任)
第713条 組合員の中に弁済する資力のない者があるときは、その弁済することができない部分は、他の組合員が等しい割合で弁済する責任を負う。
 (持分に対する差押えの効力)
第714条 組合員の持分に対する差押えは、その組合員の将来の利益の配当及び持分の返還を受けるべき権利に対して効力を有する。
 (組合の債務者の相殺禁止)0677
第715条 組合の債務者は、その債務と組合員に対する債権を相殺することができない。
 (任意脱退)0678
第716条 組合契約において、組合の存続期間を定めなかったとき、又は組合員の終身の間存続すべきことを定めたときは、各組合員は、いつでも脱退することができる。ただし、やむを得ない事由がなければ、組合の不利な時期に脱退することができない。
 組合の存続期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、組合員は、脱退することができる。
 (非任意脱退)0679
第717条 前条の場合のほか、組合員は、次に掲げる事由があるときは、脱退となる。
 (1) 死亡
 (2) 破産
 (3) 成年後見の開始
 (4) 除名
 (除名)0680
第718条 組合員の除名は、正当な事由があるときに限り、他の組合員の一致をもって決定する。
 前項の規定による除名の決定は、除名された組合員に通知しなければ、その組合員に対抗することができない。
 (脱退組合員の持分の計算)0681
第719条 脱退した組合員と他の組合員との間の計算は、脱退の時における組合の財産状態によって行う。
 脱退した組合員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で返還することができる。
 脱退の時に完結していない事項については、完結後に計算をすることができる。
 (やむを得ない事由による解散の請求)0683
第720条 やむを得ない事由があるときは、各組合員は、組合の解散を請求することができる。
 (清算人)0685
第721条 組合が解散したときは、清算は、総組合員が共同して、又はそれらの選任した者が、その事務を執行する。
 前項の規定による清算人の選任は、組合員の過半数をもって決定する。
 (清算人の業務執行の方法)0686
第722条 清算人が数人あるときは、第706条第2項後段の規定を準用する。
 (組合員である清算人の辞任及び解任)0687
第723条 組合員の中から清算人を定めたときは、第708条の規定を準用する。
 (清算人の職務及び権限並びに残余財産の分配)0688
第724条 清算人の職務及び権限については、第87条の規定を準用する。
 残余財産は、各組合員の出資の価額に応じてこれを分配する。
    第14節 終身定期金
 (終身定期金契約の意義)0689
第725条 終身定期金契約は、当事者の一方が自己、相手方又は第三者の終身の間定期に金銭その他の物を相手方又は第三者に給付することを約することによって、その効力を生じる。
 (終身定期金の計算)0690
第726条 終身定期金は、日割りで計算する。
 (終身定期金契約の解除)0691
第727条 定期金債務者が定期金債務の元本を受領した場合において、その定期金債務の給付を怠り、又はその他の義務を履行しなかったときは、定期金債権者は、元本の返還を請求することができる。ただし、既に給付を受けた債務の額からその元本の利息を控除した残額は、定期金債務者に返還しなければならない。
 前項の規定は、損害賠償の請求に影響を及ぼさない。
 (解除と同時履行)0692
第728条 第536条の規定は、前条の場合について準用する。
 (債務者の責めに帰すべき事由による死亡と債権の存続宣告)0693
第729条 死亡が定期金債務者の責めに帰すべき事由によるときは、裁判所は、定期金債権者又はその相続人の請求により、相当の期間債権が存続する旨を宣告することができる。
 前項の場合においても、第727条の規定による権利を行使することができる。
 (遺贈による終身定期金)0694
第730条 この節の規定は、遺贈による終身定期金債権について準用する。
    第15節 和解
 (和解の意義)0695
第731条 和解は、当事者が互いに譲歩して当事者間の争いをやめることを約することによって、その効力を生じる。
 (和解の創設的効力)0696
第732条 和解契約は、当事者の一方の譲歩した権利が消滅し、相手方が和解によってその権利を取得する効力を有する。
 (和解の効力と錯誤)
第733条 和解契約は、錯誤を理由として取り消すことができない。ただし、和解の当事者の資格又は和解の目的である紛争以外の事項について錯誤があるときは、この限りでない。

新私訳:韓国の民法 その12<第598条~第654条)

    第5節 消費貸借
 (消費貸借の意義)0587の2-01
第598条 消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の代替物の所有権を相手方に移転することを約し、相手方がそれと同じ種類、品質及び数量の物をもって返還することを約することによって、その効力を生じる。
 (破産と消費貸借の失効)0587の2-03
第599条 貸主が目的物を借主に引き渡す前に当事者の一方が破産宣告を受けたときは、消費貸借は、その効力を失う。
 (利息計算の始期)0589-02
第600条 利息付きの消費貸借は、借主が目的物の引渡しを受けた時から利息を計算しなければならず、借主がその責めに帰すべき事由によって受領を遅滞したときは、貸主が履行の提供をした時から利息を計算しなければならない。
 (無利息の消費貸借と解除権)0587の2-02
第601条 無利息の消費貸借の当事者は、目的物の引渡しがあるまでは、いつでも契約を解除することができる。ただし、相手方に生じた損害があるときは、これを賠償しなければならない。
 (貸主の担保責任)0559(0562~0564):0590
第602条 利息付きの消費貸借の目的物に瑕疵がある場合には、第580条から第582条までの規定を準用する。
 無利息の消費貸借の場合には、借主は、瑕疵がある物の価額を返還することができる。ただし、貸主がその瑕疵を知りながら借主に告げなかったときは、前項と同様とする。
 (返還の時期)0591-01.02
第603条 借主は、約定した時期に借用物と同じ種類、品質及び数量の物を返還しなければならない。
 返還の時期の定めがないときは、貸主は、相当の期間を定めて返還を催告しなければならない。ただし、借主は、いつでも返還することができる。
 (返還不能による時価の償還)0592
第604条 借主が借用物と同じ種類、品質及び数量の物を返還することができないときは、その時の時価を償還しなければならない。ただし、第376条及び第377条第2項の場合は、この限りでない。
 (準消費貸借)0588
第605条 当事者双方が消費貸借によらないで金銭その他の代替物を給付する義務を負う場合において、当事者がその目的物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借の効力を生じる。
 (代物による貸借)
第606条 金銭の貸借の場合において、借主が金銭に代えて有価証券その他の物の引渡しを受けたときは、その引渡しの時の価額を借用額とする。
 (代物による返還の予約)
第607条 借用物の返還について借主が借用物に代えて他の財産権を移転することを予約した場合には、その財産の予約の時の価額は、借用額及びこれに付した利息の合算額を超えることができない。
 (借主に不利益な約定の禁止)
第608条 前2条の規定に違反した当事者の約定で借主に不利なものは、買戻しその他いかなる名目であっても、その効力を有しない。
    第6節 使用貸借
 (使用貸借の意義)0593
第609条 使用貸借は、当事者の一方が相手方に無償で使用及び収益をさせるために目的物を引き渡すことを約し、相手方がその使用及び収益をした後にその物を返還することを約することによって、その効力を生じる。
 (借主の使用及び収益)0594
第610条 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その使用及び収益をしなければならない。
 借主は、貸主の承諾がなければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
 借主が前2項の規定に違反したときは、貸主は、契約を解約告知することができる。
 (費用の負担)0595
第611条 借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
 その他の費用については、第594条第2項の規定を準用する。
 (準用規定)0596:0593の2
第612条 第559条及び第601条の規定は、使用貸借について準用する。
 (借用物の返還の時期)0597-01.02:0598-01.02
第613条 借主は、約定した時期に借用物を返還しなければならない。
 時期の定めがない場合には、借主は、契約又は目的物の性質による使用及び収益が終了したときに返還しなければならない。ただし、使用及び収益に足る期間が経過したときは、貸主は、いつでも契約を解約告知することができる。
 (借主の死亡及び破産と解約告知)0597-03
第614条 借主が死亡し、又は破産宣告を受けたときは、貸主は、契約を解約告知することができる。
 (借主の原状回復義務と収去権)0599
第615条 借主が借用物を返還するときは、これを原状に回復しなければならない。これに附属させた物は、収去することができる。
 (共同借主の連帯義務)
第616条 数人が共同して物を借用したときは、連帯して義務を負う。
 (損害の賠償及び費用の償還の請求期間)0600-01
第617条 契約又は目的物の性質に反する使用及び収益によって生じた損害の賠償の請求及び借主が支出した費用の償還の請求は、貸主が物の返還を受けた日から6月内にしなければならない。
    第7節 賃貸借 
 (賃貸借の意義)0601
第618条 賃貸借は、当事者の一方が相手方に目的物の使用及び収益をさせることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うことを約することによって、その効力を生じる。
 (処分の能力又は権限のない者ができる短期賃貸借)0602
第619条 処分の能力又は権限のない者が賃貸借をする場合には、その賃貸借は、次に定める期間を超えることができない。
 (1) 樹木の栽植、塩の採取又は石造、石灰造、煉瓦造及びこれらに類する構造の建築を目的とする土地の賃貸借は、10年
 (2) その他の土地の賃貸借は、5年
 (3) 建物その他の工作物の賃貸借は、3年
 (4) 動産の賃貸借は、6月
 (短期賃貸借の更新)0603
第620条 前条の期間は、更新することができる。ただし、その期間の満了前、土地については1年内、建物その他工作物については3月内、動産については1月内に、更新しなければならない。
 (賃貸借の登記)0605
第621条 不動産の賃借人は、当事者間に反対の約定がないときは、賃貸人に対し、その賃貸借の登記手続に協力するように請求することができる。
 不動産の賃貸借を登記したときは、その時から第三者に対して効力を生じる。
 (建物の登記のある借地権の対抗力)0616の2:参照:借地借家法10
第622条 建物の所有を目的とした土地の賃貸借は、これを登記しなかった場合においても、賃借人がその土地上にある建物を登記したときは、第三者に対して賃貸借の効力を生じる。
 建物が賃貸借期間の満了前に滅失し、又は朽廃したときは、前項の効力を失う。 
 (賃貸人の義務)0606-01
第623条 賃貸人は、目的物を賃借人に引き渡し、契約の存続中その使用及び収益に必要な状態を維持する義務を負う。
 (賃貸人の保存行為と忍容義務)0606-02
第624条 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をするときは、賃借人は、 これを拒むことができない。
 (賃借人の意思に反する保存行為と解約告知権)0607
第625条 賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をする場合において、賃借人がこれにより賃借の目的を達することができないときは、契約を解約告知することができる。
 (賃借人の償還請求権)0608
第626条 賃借人が賃借物の保存に係る必要費を支出したときは、賃貸人に対し、その償還を請求することができる。
 賃借人が有益費を支出した場合には、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、その価額の増加が現存するときに限り、賃借人の支出した金額又はその増加額を償還しなければならない。この場合において、裁判所は、賃貸人の請求により、相当の償還期間を許与することができる。
 (一部滅失等と減額請求権及び解約告知権)0611
第627条 賃借物の一部が賃借人の過失なく滅失その他の事由により使用及び収益をすることができないときは、賃借人は、その部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
 前項の場合において、その残存部分では賃借の目的を達することができないときは、賃借人は、契約を解約告知することができる。
 (賃料の増減請求権)参照:借地借家法11-01:32-01
第628条 賃貸物に対する公課負担の増減その他経済事情の変動により、約定した賃料が相当でなくなったときは、当事者は、将来に向かって賃料の増減を請求することができる。
 (賃借権の譲渡及び転貸の制限)0612
第629条 賃借人は、賃貸人の同意なく、その権利を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
 賃借人が前項の規定に違反したときは、賃貸人は、契約を解約告知することができる。
 (転貸の効果)0613-01.02
第630条 賃借人が賃貸人の同意を得て賃借物を転貸したときは、転借人は、直接、賃貸人に対して義務を負う。 この場合において、転借人は、転貸人に対する賃料の支払をもって賃貸人に対抗することができない。
 前項の規定は、賃貸人の賃借人に対する権利の行使に影響を及ぼさない。
 (転借人の権利の存続)0613-03
第631条 賃借人が賃貸人の同意を得て賃借物を転貸した場合には、賃貸人と賃借人の合意によって契約が終了したときであっても、転借人の権利は、消滅しない。
 (賃借建物の小部分を他人に使用させる場合)
第632条 前3条の規定は、建物の賃借人がその建物の小部分を他人に使用させる場合には、適用しない。
 (賃料の支払時期)0614
第633条 賃料は、動産、建物又は宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫期があるものについては、その収穫後に遅滞なく支払わなければならない。
 (賃借人の通知義務)0615
第634条 賃借物の修理を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なく賃貸人にこれを通知しなければならない。ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。
 (期間の定めのない賃貸借の解約告知の申入れ)0617-01
第635条 賃貸借の期間の定めがないときは、当事者は、いつでも契約の解約告知の申入れをすることができる。
 相手方が前項の申入れを受けた日から次に定める期間が経過したときは、解約告知の効力を生じる。
 (1) 土地及び建物その他の工作物については、賃貸人が解約告知の申入れをした場合は6月、賃借人が解約告知の申入れをした場合は1月
 (2) 動産については、5月
 (期間の定めのある賃貸借の解約告知の申入れ)0618
第636条 賃貸借の期間の定めがある場合であっても、当事者の一方又は双方がその期間内に解約告知をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
 (賃借人の破産と解約告知の申入れ)
第637条 賃借人が破産宣告を受けた場合には、賃貸借の期間の定めがあるときであっても、賃貸人又は破産管財人は、第635条の規定により契約の解約告知の申入れをすることができる。
 前項の場合において、各当事者は、相手方に対し、契約の解約告知によって生じた損害の賠償を請求することができない。
 (解約告知の申入れの転借人に対する通知)
第638条 賃貸借契約が解約告知の申入れによって終了した場合において、その賃貸物が適法に転貸されていたときは、賃貸人は、転借人に対してその事由を通知しなければ、解約告知をもって転借人に対抗することができない。
 転借人が前項の通知を受けたときは、第635条第2項の規定を準用する。
 (黙示の更新)0619
第639条 賃貸借の期間が満了した後に賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人が相当の期間内に異議を述べなかったときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものとみなす。ただし、当事者は、第635条の規定により解約告知の申入れをすることができる。
 前項の場合において、従前の賃貸借について第三者が供した担保は、期間の満了によって消滅する。
 (賃料の延滞と解約告知)
第640条 建物その他の工作物の賃貸借において、賃借人の賃料の延滞額が2期分の賃料の額に達するときは、賃貸人は、契約を解約告知することができる。
第641条 建物その他の工作物の所有又は樹木の植栽、塩の採取若しくは牧畜を目的とした土地の賃貸借の場合についても、前条の規定を準用する。
 (土地の賃貸借の解約告知と地上建物等の担保物権者への通知)
第642条 前条の場合において、その地上にある建物その他の工作物が担保物権の目的になっていたときは、第288条の規定を準用する。
 (賃借人の更新請求権及び買取請求権)
第643条 建物その他の工作物の所有又は樹木の植栽、塩の採取若しくは牧畜を目的とした土地の賃貸借の期間が満了した場合において、建物、樹木その他の地上施設が現存していたときは、第283条の規定を準用する。
 (転借人の賃貸請求権及び買取請求権)
第644条 建物その他の工作物の所有又は樹木の植栽、塩の採取若しくは牧畜を目的とした土地の賃借人が適法にその土地を転貸した場合において、賃貸借及び転貸借の期間が同時に満了し、かつ、建物、樹木その他の地上施設が現存していたときは、転借人は、賃貸人に対し、従前の転貸借と同一の条件で賃貸するように請求することができる。
 前項の場合において、賃貸人が賃貸することを望まないときは、第283条第2項の規定を準用する。
 (地上権の目的である土地の賃借人の賃貸請求権及び買取請求権)
第645条 前条の規定は、地上権者がその土地を賃貸した場合について準用する。
 (賃借人の附属物買取請求権)参照:借地借家法33-01
第646条 建物その他の工作物の賃借人がその使用の便益のために賃貸人の同意を得てこれに附属した物があるときは、賃貸借の終了の時に、賃貸人に対し、その附属物の買取りを請求することができる。
 賃貸人から買い受けた附属物についても、前項と同様とする。
 (転借人の附属物買取請求権)参照:借地借家法33-02
第647条 建物その他の工作物の賃借人が適法に転貸した場合において、転借人がその使用の便益のために賃貸人の同意を得てこれに附属した物があるときは、転貸借の終了の時に、賃貸人に対し、その附属物の買取りを請求することができる。
 賃貸人から買い受け、又はその同意を得て賃借人から買い受けた附属物についても、前項と同様とする。
 (賃借地の附属物、果実等に対する法定質権)
第648条 土地の賃貸人が、賃貸借に係る債権に基づき、賃借地に附属し、又はその使用の便益に供した賃借人所有の動産及びその土地の果実を差し押えたときは、質権と同一の効力を有する。
 (賃借地上の建物に対する法定抵当権)
第649条 土地の賃貸人が、弁済期を経過した最後の2年分の賃料債権に基づき、その土地にある賃借人所有の建物を差し押えたときは、抵当権と同一の効力を有する。
 (賃借建物等の附属物に対する法定質権)
第650条 建物その他の工作物の賃貸人が、賃貸借に係る債権に基づき、その建物その他の工作物に附属した賃借人所有の動産を差し押えたときは、質権と同一の効力を有する。
第651条 削除
 (強行規定
第652条 第627条、第628条、第631条、第635条、第638条、第640条、第641条及び第643条から第647条までの規定に違反する約定で、賃借人又は転借人に不利なものは、その効力を有しない。
 (一時使用のための賃貸借の特例)
第653条 第628条、第638条、第640条、第646条から第648条まで、第650条及び前条の規定は、一時使用をするための賃貸借又は転貸借であることが明らかな場合には、適用しない。
 (準用規定)0616:0622
第654条 第610条第1項及び第615条から第617条までの規定は、賃貸借について準用する。

新私訳:韓国の民法 その11<第554条~第597条>

    第2節 贈与 
 (贈与の意義)0549
第554条 贈与は、当事者の一方が無償で財産を相手方に与える意思を表示し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生じる。
 (書面によらない贈与と解除)0550
第555条 贈与の意思が書面で表示されなかった場合には、各当事者は、これを解除することができる。
 (受贈者の行為と贈与の解除)
第556条 受贈者が次に掲げる場合に該当するときは、贈与者は、その贈与を解除することができる。
 (1) 贈与者又はその配偶者若しくは直系血族に対する犯罪行為を行ったとき
 (2) 贈与者に対して扶養義務がある場合において、これを履行していないとき
 前項の解除権は、解除の原因があることを知った日から6月を経過し、又は贈与者が受贈者に対して宥恕の意思を表示したときは、消滅する。
 (贈与者の財産状態の変更と贈与の解除)
第557条 贈与契約後に贈与者の財産状態が著しく変化し、その 履行により生計に重大な影響を及ぼす場合には、贈与者は、贈与を解除することができる。
 (解除と履行の完了部分)0550但
第558条 前3条の規定による契約の解除は、既に履行した部分については、影響を及ぼさない。
 (贈与者の担保責任)0551
第559条 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は欠缺について責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は欠缺を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
 相手方負担のある贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じ担保の責任を負う。
 (定期贈与と死亡による失効)0552
第560条 定期の給付を目的とした贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。
 (負担付贈与)0553
第561条 相手方負担のある贈与については、この節の規定のほか、双務契約に関する規定を適用する。
 (死因贈与0554
第562条 贈与者の死亡によって効力を生じる贈与については、遺贈に関する規定を準用する。
    第3節 売買 
     第1款 総則
 (売買の意義)0555
第563条 売買は、当事者の一方が財産権を相手方に移転することを約し、相手方がその代金を支払うことを約することによって、その効力を生じる。
 (売買の一方の予約)0556
第564条 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時に、売買の効力を生じる。
 前項に規定する意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相当の期間を定めて、売買を完結するかどうかの確答を相手方に催告することができる。
 予約者が前項の期間内に確答を受けなかったときは、予約は、効力を失う。
 (手付)0557
第565条 売買の当事者の一方が契約の時に金銭その他の物を契約金、保証金等の名目で相手方に交付したときは、当事者間で別段の定めがない限り、当事者の一方が履行に着手する時まで、交付者はこれを放棄し、受領者はその倍額を償還して、売買契約を解除することができる。
 第551条の規定は、前項の場合について適用しない。
 (売買契約に関する費用の負担)0558
第566条 売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。
 (有償契約への準用)0559
第567条 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
     第2款 売買の効力
 (売買の効力)
第568条 売主は買主に売買の目的となった権利を移転し、買主は売主にその代金を支払わなければならない。
 前項の規定による双方の義務は、特約又は慣習がないときは、同時に履行しなければならない。
 (他人の権利の売買)0561
第569条 売買の目的となった権利が他人に属する場合には、売主は、その権利を取得して買主に移転しなければならない。
 (他人の権利の売買における売主の担保責任)
第570条 前条の場合において、売主がその権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約を解除することができる。ただし、買主が契約の時にその権利の売主に属さないことを知っていたときは、損害賠償を請求することができない。
 (他人の権利の売買における善意の売主の担保責任)
第571条 売主が契約の時に売買の目的となった権利の自己に属さないことを知ることができなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、契約を解除することができる。
 前項の場合において、買主が契約の時に、その権利が売主に属さないことを知っていたときは、売主は、 買主に対してその権利を移転することができないことを通知して、契約を解除することができる。
 (権利の一部が他人に属している場合と売主の担保責任)0565
第572条 売買の目的となった権利の一部が他人に属することにより売主がその権利を取得して、買主に移転することができないときは、買主は、その部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。
 前項の場合において、残存する部分のみでば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の全部を解除することができる。
 善意の買主は、減額の請求又は契約の解除のほか、損害賠償を請求することができる。
 (前条の規定による権利の行使期間)0566
第573条 前条の規定による権利は、買主が善意であった場合には事実を知った日から、悪意である場合には契約した日から1年内に行使しなければならない。
 (数量不足及び一部滅失の場合と売主の担保責任)0565
第574条 前2条の規定は、数量を指定した売買の目的物が不足する場合及び売買の目的物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足又は滅失を知ることができなかったときについて準用する。
 (制限物権のある場合と売主の担保責任)0565:0566
第575条 売買の目的物が地上権、地役権、伝貰権、質権又は留置権の目的となった場合において、買主がこれを知らなかったときは、これによって契約の目的を達成することができない場合に限り、買主は、契約を解除することができる。その他の場合には、損害賠償のみを請求することができる。
 前項の規定は、売買の目的となった不動産のために存在すべき地役権がなく、又はその不動産に登記された賃貸借契約がある場合について準用する。
 前2項の規定による権利は、買主がその事実を知った日から1年内に行使しなければならない。
 (抵当権及び伝貰権の行使と売主の担保責任)0570
第576条 売買の目的となった不動産に設定された抵当権又は伝貰権の行使によって、買主がその所有権を取得することができず、又は取得した所有権を失ったときは、買主は、契約を解除することができる。
 前項の場合において、買主が自己の財産をもってその所有権を保存したときは、売主に対してその償還を請求することができる。
 前2項の場合において、買主が損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。
 (抵当権の目的となっている地上権及び伝貰権の売買と売主の担保責任)
第577条 前条の規定は、抵当権の目的となっている地上権又は伝貰権が売買の目的となっている場合について準用する。
 (競売と売主の担保責任)0568-01~03
第578条 競売の場合には、買受人は、第570条から前条までの規定により、債務者に対し、契約の解除又は代金の減額の請求をすることができる。
 前項の場合において、債務者が資力のないときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。
 前2項の場合において、債務者が物又は権利の存在しないことを知りながら告知せず、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、その存在しないことを知っていた債務者又は債権者に対し、損害賠償を請求することができる。
 (債権の売買と売主の担保責任)0569
第579条 債権の売主が債務者の資力を担保したときは、売買契約の時における資力を担保したものと推定する。
 弁済期に到らない債権の売主が債務者の資力を担保したときは、弁済期における資力を担保したものと推定する。
 (売主の瑕疵担保責任0562~0564:0568-04
第580条 売買の目的物に瑕疵があるときは、第575条第1項の規定を準用する。ただし、買主が瑕疵のあることを知り、又は過失によりこれを知らなかったときは、この限りでない。
 前項の規定は、競売の場合について適用しない。
 (種類売買と売主の担保責任)
第581条 売買の目的物を種類で指定した場合においても、その後に特定された目的物に瑕疵があるときは、前条の規定を準用する。
 前項の場合において、買主は、契約の解除又は損害賠償の請求をせず、瑕疵のない物を請求することができる。
 (前2条の規定による権利の行使期間)0566
第582条 前2条の規定による権利は、買主がその事実を知った日から6月内に行使しなければならない。
 (担保責任と同時履行)
第583条 第536条の規定は、第572条から第575条まで、第580条及び第581条の場合について準用する。
 (担保責任の免除の特約)0572
第584条 売主は、第569条から前条までの規定による担保責任を免れる特約をした場合であっても、売主が知りながら告げなかった事実及び第三者に権利を設定し、又は譲渡した行為については、責任を免れることができない。
 (同一期限の推定)0573
第585条 売買の当事者の一方に対する義務の履行について期限があるときは、相手方の義務の履行についても、同一の期限があるものと推定する。
 (代金の支払場所)0574
第586条 売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべき場合は、その引渡しの場所において、これを支払わなければならない。
 (果実の帰属及び代金の利息)0575
第587条 売買契約をした後も引き渡していない目的物から生じた果実は、売主に属する。 買主は、目的物の引渡しを受けた日から、代金の利息を支払わなければならない。ただし、代金の支払について期限があるときは、この限りでない。
 (権利主張者がある場合と代金の支払拒絶権)0576
第588条 売買の目的物について権利を主張する者がある場合において、買主が買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがあるときは、買主は、その危険の限度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。
 (代金の供託請求権)0578
第589条 前条の場合において、売主は、買主に対して代金の供託を請求することができる。
     第3款 買戻し
 (買戻しの意義)0579
第590条 売主が売買契約と同時に買い戻す権利を留保したときは、その領収した代金及び買主が負担した売買の費用を返還して、その目的物を買い戻すことができる。
 前項に規定する買戻しの代金について特約があるときは、その定めによる。
 前2項の場合において、目的物の果実と代金の利息とは、特約がないときは、相殺したものとみなす。
 (買戻しの期間)0580
第591条 買戻しの期間は、不動産については5年、動産については3年を超えることができない。約定期間がこれを超えるときは、不動産については5年、動産については3年に短縮する。
 買戻しの期間を定めたときは、更にこれを延長することができない。
 買戻しの期間を定めなかったときは、その期間は、不動産については5年、動産については3年とする。
 (買戻しの登記)0581-01
第592条 売買の目的物が不動産である場合において、売買の登記と同時に買戻権の留保を登記したときは、第三者に対して、その効力を有する。
 (買戻権の代位行使と買主の権利)0582
第593条 売主の債権者が売主を代位して買い戻そうとするときは、買主は、裁判所が選定した鑑定人の評価額から売主が返還すべき金額を控除した残額をもって売主の債務を弁済し、余剰額があるときはこれを売主に支払って、買戻権を消滅させることができる。
 (買戻しの実行)0583
第594条 売主は、期間内に代金及び売買の費用を買主に提供しなければ、買い戻す権利を失う。
 買主又は転得者が目的物について費用を支出したときは、売主は、第203条の規定によりこれを償還しなければならない。ただし、有益費については、裁判所は、売主の請求により、相当の償還期間を許与することができる。
 (共有持分の買戻し)0584
第595条 共有者の一人が買い戻す権利を留保して、その持分を売り渡した後に、その目的物の分割又は競売があったときは、売主は、買主が受けた、又は受けるべき部分又は代金について、買戻権を行使することができる。ただし、売主に通知しなかった買主は、その分割又は競売をもって売主に対抗することができない。
    第4節 交換
 (交換の意義)0586-01
第596条 交換は、当事者双方が金銭以外の財産権を互いに移転することを約することによって、その効力を生じる。
 (金銭の補充支払の場合)0586-02
第597条 当事者の一方が前条の財産権の移転及び金銭の補充支払を約したときは、その金銭については、売買の代金に関する規定を準用する。

新私訳:韓国の民法 その10<第527条~第553条>

    第2章 契約
     第1節 総則
      第1款 契約の成立
 (契約の申込みの拘束力)0523-01:0525-01.02
第527条 契約の申込みは、これを撤回することができない。
 (承諾期間を定めた契約の申込み)0523-02
第528条 承諾の期間を定めた契約の申込みは、申込者がその期間内に承諾の通知を受けることができなかったときは、その効力を失う。
 承諾の通知が前項の期間後に到達した場合において、通常その期間内に到達し得る発送であるときは、申込者は、遅滞なく、相手方に対してその延着の通知をしなければならない。ただし、その到達前に遅延の通知を発したときは、この限りでない。
 申込者が前項の通知をしなかったときは、承諾の通知は、延着しなかったものとみなす。
 (承諾期間を定めない契約の申込み)0525-03
第529条 承諾の期間を定めない契約の申込みは、申込者が相当の期間内に承諾の通知を受けることができなかったときは、その効力を失う。
 (延着した承諾の効力)0524
第530条 前2条の場合において、延着した承諾は、申込者がこれを新たな申込みとみなすことができる。
 (隔地者間の契約の成立時期)
第531条 隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。
 (意思実現による契約の成立)0527
第532条 申込者の意思表示又は慣習により承諾の通知が必要でない場合には、契約は、承諾の意思表示と認められる事実があった時に成立する。
 (交叉申込み)
第533条 当事者間において同一の内容の申込みが相互に交叉した場合には、双方の申込みが相手方に到達した時に契約が成立する。
 (変更を加えた承諾)0528
第534条 承諾者が申込みに条件を付し、又は変更を加えて承諾したときは、その申込みの拒絶と同時に新たな申込みをしたものとみなす。
 (契約締結上の過失)
第535条 目的が不能な契約を締結するときに、その不能であることを知り、又は知ることができた者は、相手方がその契約の有効であることを信じたことによって受けた損害を賠償しなければならない。ただし、その賠償額は、契約が有効であることによって生ずべき利益額を超えることができない。
 前項の規定は、相手方がその不能を知り、又は知ることができた場合には、適用しない。
     第2款 契約の効力
 (同時履行の抗弁権)0533
第536条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供する時までは、自己の債務の履行を拒絶することができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
 当事者の一方が相手方に先だって履行しなければならない場合において、相手方の履行の困難なことが明らかである事由のあるときは、前項本文と同様とする。
 (債務者危険負担主義)0536-01
第537条 双務契約の当事者の一方の債務が当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行することができなくなったときは、債務者は、相手方の履行を請求することができない。
 (債権者の帰責事由による履行不能0536-02:0413の2-02
第538条 双務契約の当事者の一方の債務が債権者の責めに帰すべき事由によって履行することができなくなったときは、債務者は、相手方の履行を請求することができる。 債権者の受領遅滞中に当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行することができなくなったときも、同様とする。
 前項の場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
 (第三者のための契約)0537-01.03
第539条 契約により当事者の一方が第三者に履行すべきことを約定したときは、その第三者は、債務者に対して直接その履行を請求することができる。
 前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して契約の利益を受ける意思を表示した時に発生する。
 (債務者の第三者に対する催告権)
第540条 前条第2項の場合において、債務者は、相当の期間を定めて契約の利益を受けるかどうかの確答を第三者に催告することができる。 債務者がその期間内に確答を受けなかったときは、第三者が契約の利益を受けることを拒絶したものとみなす。
 (第三者の権利の確定)0538-01
第541条 第539条の規定により第三者の権利が発生した後においては、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。
 (債務者の抗弁権)0539
第542条 債務者は、第539条の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。
     第3款 契約の解約告知及び解除
 (解約告知権及び解除権)0540
第543条 契約又は法律の規定により当事者の一方又は双方が解約告知又は解除の権利を有するときは、その解約告知又は解除は、相手方に対する意思表示によってする。
 前項の意思表示は、撤回することができない。
 履行遅滞と解除)0541:0542
第544条 当事者の一方がその債務を履行しないときは、相手方は、相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行しないときは、契約を解除することができる。ただし、債務者があらかじめ履行しない意思を表示した場合には、催告を要しない。
 (定期行為と解除)0542
第545条 契約の性質又は当事者の意思表示により一定の日時又は一定の期間内に履行しなければ、契約の目的を達成することができない場合において、当事者の一方がその時期に履行しないときは、相手方は、前条の催告をしないで契約を解除することができる。
 履行不能と解除)0542
第546条 債務者の責めに帰すべき事由により履行が不能になったときは、債権者は、契約を解除することができる。
 (解約告知権及び解除権の不可分性)0544
第547条 当事者の一方又は双方が数人ある場合には、契約の解約告知又は解除は、その全員から又は全員に対してしなければならない。
 前項の場合において、解約告知又は解除の権利が当事者の一人について消滅したときは、他の当事者についても消滅する。
 (解除の効果と原状回復義務)0545-01.02
第548条 当事者の一方が契約を解除したときは、各当事者は、その相手方に対して原状回復の義務を負う。ただし、第三者の権利を害することができない。
 前項の場合において、返還すべき金銭には、その受領した日から利息を付さなければならない。
 (原状回復義務と同時履行)0546
第549条 第536条の規定は、前条の場合について準用する。
 (解約告知の効果)
第550条 当事者の一方が契約を解約告知したときは、契約は、将来に向ってその効力を失う。
 (解約告知及び解除と損害賠償)0545-04
第551条 契約の解約告知又は解除は、損害賠償の請求に影響を及ぼさない。
 (解除権を行使するかどうかの催告権)0547
第552条 解除権の行使の期間を定めなかったときは、相手方は、相当の期間を定めて解除権を行使するかどうかの確答を解除権者に催告することができる。
 前項の期間内に解除の通知を受けなかったときは、解除権は、消滅する。
 (毀損等による解除権の消滅)0548
第553条 解除権者の故意又は過失によって、契約の目的物が著しく毀損し、若しくはこれを返還できなくなったとき、又は加工若しくは改造によって他の種類の物に変更されたときは、 解除権は、消滅する。

新私訳:韓国の民法 その9<第460条~第526条>

    第6節 債権の消滅
     第1款 弁済
 (弁済の提供の方法)0493
第460条 弁済は、債務の内容に従った現実の提供によってしなければならない。ただし、債権者があらかじめ弁済を受領することを拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要する場合は、弁済の準備が完了したことを通知して、その受領を催告すれば足りる。
 (弁済の提供の効果)0492
第461条 弁済の提供は、その時から債務の不履行の責任を免れさせる。
 (特定物の現状引渡し)0483
第462条 特定物の引渡しが債権の目的であるときは、債務者は、履行期の現状のままでその物を引き渡さなければならない。
 (弁済としての他人の物の引渡し)0475
第463条 債務の弁済として他人の物を引き渡した債務者は、更に有効な弁済をしなければ、その物の返還を請求することができない。
 (譲渡能力のない所有者の物の引渡し)
第464条 譲渡する能力のない所有者が債務の弁済として物を引き渡した場合において、その弁済が取り消されたときも、更に有効な弁済をしなければ、その物の返還を請求することができない。
 (債権者の善意の消費及び譲渡と求償権)0476
第465条 前2条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は他人に譲り渡したときは、その弁済は、効力を有する。
 前項の場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、債務者に対して求償権を行使することができる。
 (代物弁済)0482
第466条 債務者が債権者の承諾を得て本来の債務の履行に代えて他の給付をしたときは、弁済と同じ効力を有する。 
 (弁済の場所)0484-01:商法516
第467条 債務の性質又は当事者の意思表示により弁済の場所を定めなかったときは、特定物の引渡しは、債権の成立の時にその物が存在した場所においてしなければならない。
 前項に規定する場合において、特定物の引渡し以外の債務の弁済は、債権者の現在の住所においてしなければならない。ただし、営業に関する債務の弁済は、債権者の現在の営業所においてしなければならない。
 (弁済期前の弁済)
第468条 当事者の別段の意思表示がないときは、弁済期前であっても、 債務者は、弁済をすることができる。ただし、相手方の損害は、賠償しなければならない。
 (第三者の弁済)0474-01.02.04
第469条 債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、債務の性質又は当事者の意思表示により第三者の弁済を許さないときは、この限りでない。
 利害関係がない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。
 (債権の準占有者に対する弁済)0478
第470条 債権の準占有者に対する弁済は、弁済者が善意で、かつ、過失がないときに限り、効力を有する。
 (領収証の所持者に対する弁済)
第471条 領収証を所持した者に対する弁済は、その所持者が弁済を受領する権限を有しない場合においても、効力を有する。ただし、弁済者がその権限のないことを知り、又は知ることができた場合は、この限りでない。
 (権限のない者に対する弁済)0479
第472条 前2条の場合のほか、弁済を受領する権限のない者に対する弁済は、 債権者が利益を受けた限度において、効力を有する。
 (弁済の費用の負担)0485
第473条 弁済の費用は、別段の意思表示がないときは、債務者の負担とする。ただし、債権者の住所の移転その他の行為によって弁済の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。
 (領収証の請求権)0486
第474条 弁済者は、弁済を受領する者に対して領収証を請求することができる。
 (債権証書の返還請求権)0487
第475条 債権証書がある場合において、弁済者が債務の全部を弁済したときは、債権証書の返還を請求することができる。債権が弁済以外の事由によって全部が消滅したときも、同様とする。
 (指定弁済充当)0486-01~03
第476条 債務者が同一の債権者に対して同種のものを目的とした数個の債務を負担した場合において、弁済の提供がその債務の全部を消滅させることができないときは、弁済者は、その時に債務を指定してその弁済に充当することができる。
 弁済者が前項に規定する指定をしないときは、弁済を受領する者は、その時に債務を指定して弁済に充当することができる。ただし、弁済者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
 前2項の規定による弁済の充当は、相手方に対する意思表示によってする。
 (法定弁済充当)0486.04
第477条 当事者が弁済に充当する債務を指定しなかったときは、次に定めるところによる。
 (1) 債務の中に履行期が到来したものと到来していないものがあるときは、履行期が到来した債務の弁済に充当する。
 (2) 債務の全部の履行期が到来しているとき、又は到来していないときは、債務者のために弁済の利益が多い債務の弁済に充当する。
 (3) 債務者のために弁済の利益が同じときは、履行期が先に到来した債務又は先に到来すべき債務の弁済に充当する。
 (4) 前2号に掲げる事項が同じときは、その債務の額に応じて各債務の弁済に充当する。
 (不足弁済の充当)0491
第478条 1個の債務に数個の給付を要する場合において、弁済者がその債務の全部を消滅させることができない給付をしたときは、前2条の規定を準用する。
 (費用、利息及び元本に対する弁済の充当の順序)0489
第479条 債務者が1個又は数個の債務の費用及び利息を支払うべき場合において、弁済者がその全部を消滅させることができない給付をしたときは、費用、利息及び元本の順で弁済に充当しなければならない。
 前項の場合においては、第477条の規定を準用する。
 (弁済者の任意代位)0499:0500
第480条 債務者のために弁済した者は、弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。
 前項の場合において、第450条から第452条までの規定を準用する。
 (弁済者の法定代位)0499
第481条 弁済をする正当な利益を有する者は、弁済により当然に債権者に代位する。
 (弁済者の代位の効果及び代位者間の関係)0501
第482条 前2条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づき求償することができる範囲において、債権及びその担保に関する権利を行使することができる。
 前項の規定による権利の行使は、次に定めるところによらなければならない。
 (1) 保証人は、あらかじめ伝貰権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、伝貰物又は抵当物について権利を取得した第三者に対して債権者に代位することができない。
 (2) 第三取得者は、保証人に対して債権者に代位することができない。
 (3) 第三取得者の一人は、各不動産の価額に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
 (4) 自己の財産を他人の債務の担保として供した者が数人ある場合においては、前号の規定を準用する。
 (5) 自己の財産を他人の債務の担保として供した者と保証人との間においては、その人数に応じて債権者に代位する。ただし、自己の財産を他人の債務の担保として供した者が数人あるときは、保証人の負担部分を除き、その残額について各財産の価額に応じて代位する。 この場合において、その財産が不動産であるときは、第1号の規定を準用する。
 (一部の代位)0502-01.04
第483条 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する。
 前項の場合において、債務の不履行を原因とする契約の解約告知又は解除は、債権者のみがすることができ、債権者は、代位者に対してその弁済をした価額及び利息を償還しなければならない。
 (代位弁済と債権証書及び担保物)0503
第484条 債権の全部の代位弁済を受けた債権者は、その債権に関する証書及び占有する担保物を代位者に交付しなければならない。
 債権の一部について代位弁済があるときは、債権者は、債権証書にその代位を記入し、自己が占有する担保物の保存について、代位者の監督を受けなければならない。
 (債権者の担保の喪失及び減少行為と法定代位者の免責)0504-01
第485条 第481条の規定により代位する者がある場合において、債権者の故意又は過失によって担保が喪失し、又は減少したときは、代位する者は、その喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる。
 (弁済以外の方法による債務の消滅と代位)
第486条 第三者が供託その他自己の財産をもって債務者の債務を免れさせた場合においても、第480条から前条までの規定を準用する。
     第2款 供託
 (弁済供託の要件及び効果)0494
第487条 債権者が弁済を受領せず、又は受領することができないときは、弁済者は、債権者のために弁済の目的物を供託して、その債務を免れることができる。 弁済者が過失なく債権者を知ることができない場合も、同様とする。
 (供託の方法)0495
第488条 供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。
 供託所について法律に特別な定めがないときは、裁判所は、弁済者の請求により、供託所を指定し、供託物の保管者を選任しなければならない。
 供託者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。
 (供託物の取戻し)0496
第489条 債権者が供託を承認し、若しくは供託所に対して供託物を受領する旨を通知し、又は供託有効の判決が確定するまでは、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす。
 前項の規定は、質権又は抵当権が供託によって消滅したときには、適用しない。
 (自助売却金の供託)0497
第490条 弁済の目的物が供託に適さず、若しくは滅失し、若しくは毀損するおそれがあり、又は供託に過分な費用を要する場合においては、弁済者は、裁判所の許可を得て、その物を競売し、又は市価で売却して代金を供託することができる。
 (供託物の受領と反対義務の履行0498-02
第491条 債務者が債権者の反対義務の履行と同時に弁済をすべき場合には、債権者は、その義務の履行をしなければ、供託物を受領することができない。
     第3款 相殺
 (相殺の要件)0505
第492条 双方が互いに同種のものを目的とした債務を負担した場合において、その双方の債務の履行期が到来したときは、各債務者は、対等額について相殺することができる。ただし、債務の性質が相殺を許さないときは、この限りでない。
 前項の規定は、当事者が別段の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示をもって善意の第三者に対抗することができない。
 (相殺の方法及び効果)0506
第493条 相殺は、相手方に対する意思表示をもってする。 この意思表示には、条件又は期限を付することができない。
 相殺の意思表示があるときは、各債務が相殺をすることができる時に対等額について消滅したものとみなす。
 (履行地を異にする債務の相殺)0507
第494条 各債務の履行地が異なる場合であっても、相殺をすることができる。ただし、相殺をする当事者は、相手方に対し、相殺による損害を賠償しなければならない。
 (消滅時効の完成した債権による相殺)0508
第495条 消滅時効が完成した債権がその完成前に相殺をすることができたものであるときは、その債権者は、相殺をすることができる。
 (不法行為債権を受働債権とする相殺の禁止)0509(新0509)
第496条 債務が故意の不法行為によるものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
 (差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)0510
第497条 債権が差押えをすることができないものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
 (支払禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)0511-01
第498条 支払を禁止する命令を受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって、その命令を申し立てた債権者に対抗することができない。
 (準用規定)0512:0512の2
第499条 第476条から第479条までの規定は、相殺について準用する。
     第4款 更改 
 (更改の要件及び効果)0513
第500条 当事者が債務の重要な部分を変更する契約をしたときは、従前の債務は、更改により消滅する。
 (債務者の交替による更改)0514-01
第501条 債務者の交替による更改は、債権者と更新後の債務者との契約によってすることができる。ただし、更新前の債務者の意思に反してすることができない。
 (債権者の交替による更改)0515-02
第502条 債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、これをもって第三者に対抗することができない。
 (債権者の交替による更改と債務者の承諾の効果)
第503条 第451条第1項の規定は、債権者の交替による更改について準用する。
 (従前の債務が消滅しない場合)
第504条 更改による新たな債務が原因の不法又は当事者の知ることができない事由によって成立せず、又は取り消されたときは、従前の債務は、消滅しない。
 (新たな債務への担保の移転)0518-01
第505条 更改の当事者は、従前の債務の担保を、その目的の限度において、新たな債務の担保とすることができる。ただし、第三者が供した担保は、その承諾を得なければならない。
     第5款 免除
 (免除の要件及び効果)0519
第506条 債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、債権は、消滅する。ただし、免除をもって正当な利益を有する第三者に対抗することができない。
     第6款 混同
 (混同の要件及び効果)0520
第507条 債権と債務が同一の主体に帰属したときは、債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
    第7節 指図債権
 (指図債権の譲渡の方式)0520の2
第508条 指図債権は、その証書に裏書をして譲受人に交付する方式によって譲り渡すことができる。
 (戻り裏書)0520の3→手形法11-3
第509条 指図債権は、その債務者に対しても、裏書をして譲り渡すことができる。
 裏書により指図債権を譲り受けた債務者は、更に裏書をしてこれを譲り渡すことができる。
 (裏書の方式)0520の3→手形法13
第510条 裏書は、証書又はその補充紙にその意思を記載し、裏書人が署名若又は記名押印することによってする。
 裏書は、被裏書人を指定しないですることができ、又は裏書人の署名若しくは記名押印のみとすることができる。
 (白地式裏書の処理の方式)0520の3→手形法14-2
第511条 裏書が前条第2項の規定による白地式によるときは、所持人は、次に掲げる方式によって処理することができる。
 (1) 自己又は他人の名称を被裏書人として記載することができる。
 (2) 白地式によって又は他人を被裏書人として表示して、更に証書に裏書をすることができる。
 (3) 被裏書人を記載しないで、裏書のない証書を第三者に交付して譲り渡すことができる。
 (所持人払いの裏書の効力)
第512条 所持人払いの裏書は、白地式裏書と同じ効力を有する。
 (裏書の資格授与力)0520の4:手形法16
第513条 証書の占有者が裏書の連続によりその権利を証明するときは、適法な所持人とみなす。 最後の裏書が白地式である場合も、同じ。
 白地式裏書の次に他の裏書があるときは、その裏書人は、白地式裏書によって証書を取得したものとみなす。
 抹消された裏書は、裏書の連続については、その記載がないものとみなす。
 (同前-善意取得)0520の5
第514条 何人も、証書の適法な所持人に対して、その返還を請求することができない。ただし、所持人が取得した時に譲渡人が権利を有しないことを知り、又は重大な過失により知らなかったときは、この限りでない。
 (移転の裏書と人的抗弁)0520の6
第515条 指図債権の債務者は、所持人の前者に対する人的関係の抗弁をもって、所持人に対抗することができない。ただし、所持人がその債務者を害することを知って指図債権を取得したときは、この限りでない。
 (弁済の場所)0520の8
第516条 証書に弁済の場所を定めなかったときは、債務者の現在の営業所を弁済の場所とする。 営業所がないときは、現在の住所を弁済の場所とする。
 (証書の提示と履行遅滞0520の9
第517条 証書に弁済の期限の記載がある場合であっても、その期限が到来した後に所持人が証書を提示して履行を請求した時から、債務者は、遅滞の責任を負う。
 (債務者の調査の権利義務)0520の10
第518条 債務者は、裏書の連続の存否を調査すべき義務があるとともに、裏書人の署名又は押印の真偽及び所持人の真偽を調査する権利はあるが、義務はない。ただし、債務者が弁済する時に、所持人が権利者でないことを知り、又は重大な過失によって知ることができなかったときは、その弁済は、無効とする。
 (弁済と証書の交付)
第519条 債務者は、証書と交換してのみ弁済すべき義務を負う. 
 (領収の記載の請求権)
第520条 債務者は、弁済する時に、所持人に対して、証書に領収を証明する記載をすることを請求することができる。
 一部の弁済の場合において、債務者の請求があったときは、債権者は、証書にその旨を記載しなければならない。
 (公示催告手続による証書の失効)0520の11
第521条 滅失した証書又は所持人の占有を離れた証書は、公示催告の手続によって無効とすることができる。
 (公示催告手続による供託及び弁済)0520の12
第522条 公示催告の申立てがあったときは、債務者に債務の目的物を供託させることができ、又は所持人が相当な担保を供して弁済をさせることができる。
    第8節 無記名債権
 (無記名債権の譲渡の方式)0520の20
第523条 無記名債権は、譲受人にその証書を交付することによって、譲渡の効力を有する。
 (準用規定)0520の15:0520の16:0520の18:0520の20
第524条 第514条から第522条までの規定は、無記名債権について準用する。
 (記名式所持人払債権)
第525条 債権者を指定して、所持人に対しても弁済すべきことを付記した証書は、無記名債権と同じ効力を有する。
 (免責証書)
第526条 第516条、第517条及び第520条の規定は、債務者が証書の所持人に弁済して、その責任を免れる目的で発行した証書について準用する。

新私訳:韓国の民法 その8<第373条~第459条>

  第3編 債権
   第1章 総則  
    第1節 債権の目的  
 (債権の目的)0399
第373条 金銭で価額を算定することができないものであっても、 債権の目的とすることができる。  
 (特定物の引渡しの債務者の善管義務)0400
第374条 特定物の引渡しが債権の目的であるときは、債務者は、その物を引き渡すまで、善良な管理者の注意をもって保存しなければならない。 
 (種類債権)0401
第375条 債権の目的を種類でのみ指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によって品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質の物で履行しなければならない。
 前項の場合において、債務者が履行に必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得て履行する物を指定したときは、その時からその物を債権の目的物とする。   
 (金銭債権)0402-02
第376条 債権の目的がある種類の通貨で支払うべきものである場合において、その通貨が弁済期に强制通用力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済しなければならない。
 (外貨債権)0402-03→0402-01.02
第377条 債権の目的が外国の通貨で支払うべきものである場合には、債務者は、自己が選択したその国の各種の通貨で弁済することができる。
 債権の目的がある種類の外国の通貨で支払うべきものである場合において、その通貨が弁済期に强制通用力を失っているときは、その国の他の通貨で弁済しなければならない。  
       0403
第378条 債権額が外国の通貨で指定されたときは、債務者は、支払うべき時における履行地の為替相場により、我が国の通貨で弁済することができる。  
 (法定利率)0404
第379条 利息付の債権の利率は、他の法律の規定又は当事者の約定がないときは、年5分とする。   
 (選択債権)0406
第380条 債権の目的が数個の行為の中から選択によって定まる場合において、他の法律の規定又は当事者の約定がないときは、選択権は、債務者に属する。 
 (選択権の移転)0408
第381条 選択権の行使期間がある場合において、選択権者がその期間内に選択権を行使しないときは、相手方は相当の期間を定めてその選択を催告することができ、選択権者がその期間内に選択をしないときは、選択権は、相手方に移転する。
 選択権の行使期間がない場合において、債権の期限が到来した後に相手方が相当の期間を定めてその選択を催告しても、選択権者がその期間内に選択をしないときは、前項と同様とする。
 (当事者の選択権の行使)0407
第382条 債権者又は債務者が選択をする場合には、その選択は、相手方に対する意思表示によって行使する。
 前項の意思表示は、相手方の同意がなければ、撤回することができない。  
 (第三者の選択権の行使)0409-01
第383条 第三者が選択をする場合には、その選択は、債務者及び債権者に対する意思表示によって行使する。
 前項の意思表示は、債権者及び債務者の同意がなければ、撤回することができない。
 (第三者の選択権の移転)0409-02
第384条 選択をすべき第三者が選択をすることができない場合には、選択権は、債務者に移転する。
 第三者が選択をしない場合には、債権者又は債務者は、相当の期間を定めてその選択を催告することができ、第三者がその期間内に選択しないときは、選択権は、債務者に移転する。
 (不能による選択債権の特定)0410
第385条 債権の目的として選択すべき数個の行為の中に当初から不能のもの又は後に履行が不能となったものがあるときは、債権の目的は、残存するものについて存在する。
 選択権のない当事者の過失により履行が不能となったときは、前項の規定を適用しない。  
 (選択の遡及効0411
第386条 選択の効力は、その債権が発生した時に遡及する。 ただし、第三者の権利を害することはできない。
    第2節 債権の効力 
 (履行期と履行遅滞0412
第387条 債務の履行について確定期限がある場合には、債務者は、期限の到来した時から遅滞の責任を負う。 債務の履行について不確定期限がある場合には、債務者は、期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
 債務の履行について期限がない場合には、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
 (期限の利益の喪失)0137
第388条 債務者は、次に掲げる場合には、期限の利益を主張することができない。
 (1) 債務者が担保を損傷させ、減少させ、又は滅失させたとき。
 (2) 債務者が担保の供与の義務を履行しないとき。  
 (強制履行)0414
第389条 債務者が任意に債務を履行しないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質が強制履行を許さないものであるときは、この限りでない。
 前項の債務が法律行為を目的とするときは債務者の意思表示に代わるべき裁判を請求することができ、債務者の一身に専属しない作為を目的とするときは債務者の費用で第三者にこれを行わせることを裁判所に請求することができる。
 その債務が不作為を目的とする場合において、債務者がこれに違反したときは、債務者の費用で、その違反したものの除却及び将来のための適当な処分を裁判所に請求することができる。
 前3項の規定は、損害賠償の請求に影響を及ぼさない。 
 (債務不履行と損害賠償)0415-01
第390条 債務者が債務の内容に従った履行をしないときは、債権者は、損害の賠償を請求することができる。ただし、債務者の故意及び過失なく履行することができなくなったときは、この限りでない。  
 (履行補助者の故意及び過失) 
第391条 債務者の法定代理人が債務者のために履行し、又は債務者が他人を使用して履行する場合には、法定代理人又は被用者の故意又は過失は、債務者の故意又は過失とみなす。
 (履行遅滞中の損害の賠償)413の2-01 
第392条 債務者は、自己に過失がない場合であっても、その履行の遅滞中に生じた損害を賠償しなければならない。ただし、債務者が履行期に履行しても損害を免れられない場合は、この限りでない。
 (損害賠償の範囲)0416
第393条 債務の不履行による損害賠償は、通常の損害をその限度とする。
 特別な事情による損害は、債務者がその事情を知り、又は知ることができたときに限り、賠償の責任を負う。 
 (損害賠償の方法)0417
第394条 別段の意思表示がないときは、損害は、金銭をもって賠償する。  
 (履行遅滞と填補賠償)
第395条 債務者が債務の履行を遅滞した場合において、債権者が相当の期間を定めて履行を催告してもその期間内に履行せず、又は遅滞後の履行が債権者にとって利益のないときは、債権者は、受領を拒絶し、又は履行に代わる損害賠償を請求することができる。
 (過失相殺)0418
第396条 債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定める際に、これを考慮しなければならない。  
 (金銭債務の不履行についての特則)0419 
第397条 金銭債務の不履行の損害賠償の額は、法定利率による。ただし、法令の制限に反しない約定利率があるときは、その利率による。
 前項の損害賠償については、債権者は損害の証明を要しないし、債務者は過失がないことを抗弁とすることができない。
 (賠償額の予定)0420:0421
第398条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
 損害賠償の予定額が不当に過大な場合には、裁判所は、適当な額に減額することができる。
 損害賠償額の予定は、履行の請求又は契約の解除に影響を及ぼさない。
 違約金の定めは、損害賠償の額の予定と推定する。
 当事者が金銭でないものを損害の賠償に充当するべき旨を予定した場合についても、前各項の規定を準用する。 
 (損害賠償者の代位)0422
第399条 債権者がその債権の目的である物又は権利の価額の全部を損害賠償として受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。 
 (受領遅滞) 
第400条 債権者は、履行を受けることができず、又は受けることを拒むときは、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う。
 (受領遅滞と債務者の責任)
第401条 受領遅滞中においては、債務者は、故意又は重大な過失がなければ、不履行によるすべての責任を負わない。 
第402条 受領遅滞中においては、利息を生じる債権であっても、 債務者は、利息を支払う義務を負わない。 
 (受領遅滞と債権者の責任)0413
第403条 受領遅滞によってその目的物の保管又は弁済の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。  
 (債権者代位権0423-01.02
第404条 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、一身に専属する権利は、この限りでない。
 債権者は、その債権の期限が到来する前においては、裁判所の許可なく、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
 (債権者代位権の行使の通知)
第405条 債権者が前条第1項の規定により保存行為以外の権利を行使したときは、債務者に通知しなければならない。
 債務者が前項に規定する通知を受けた後にその権利を処分しても、これをもって債権者に対抗することができない。 
 (詐害行為取消権)0424:0424の5:0426
第406条 債務者が債権者を害することを知って財産権を目的とする法律行為をしたときは、債権者は、その取消し及び原状の回復を裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得した者がその行為又は転得の時に債権者を害することを知ることができなかった場合は、この限りでない。
 前項の規定による訴えは、債権者が取消の原因を知った日から1年内、法律行為があった日から5年内に提起しなければならない。
 (詐害行為の取消しの効力0425
第407条 前条の規定による取消し及び原状の回復は、全ての債権者の利益のためにその効力を有する。
    第3節 数人の債権者及び債務者
     第1款 総則
 (分割債権関係)0427
第408条 債権者又は債務者が数人ある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
     第2款 不可分債権及び不可分債務
 (不可分債権)0428→432
第409条 債権の目的がその性質又は当事者の意思表示により不可分である場合において、債権者が数人あるときは、各債権者は全ての債権者のために履行を請求することができ、債務者は全ての債権者のために各債権者に対して履行することができる。
 (一人の債権者に生じた事由の効力)0428→0435の2:0429
第410条 前条の規定によりすべての債権者に効力を有する事由を除き、不可分債権者の一人の行為又は一人に関する事由は、他の債権者に対して効力を有しない。
 不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合において、債務の全部の履行を受けた他の債権者は、その一人が権利を失なわなければその者に分与すべき利益を債務者に償還しなければならない。
 (不可分債務と準用規定)0430
第411条 数人が不可分債務を負担した場合については、前条、第413条から第415条まで、第422条及び第424条から第427条までの規定を準用する。
 (可分債権又は可分債務への変更)0431
第412条 不可分債権又は不可分債務が可分債権又は可分債務に変更されたときは、各債権者は自己の部分のみの履行を請求する権利を有し、各債務者は自己の負担部分のみを履行する義務を負う.
     第3款 連帯債務
 (連帯債務の内容)
第413条 数人の債務者が債務の全部を各自履行すべき義務を負い、債務者の一人の履行によって他の債務者もその義務を免れるときは、その債務は、連帯債務とする。
 (一人の連帯債務者に対する履行の請求)0436
第414条 債権者は、一人の連帯債務者に対し、又は同時に若しくは 順次に全ての連帯債務者に対し、債務の全部又は一部の履行を請求することができる。
 (債務者に生じた無効及び取消し)0437
第415条 一人の連帯債務者についての法律行為の無効又は取消しの原因は、他の連帯債務者の債務に影響を及ぼさない。
 (履行の請求の絶対的効力)
第416条 一人の連帯債務者に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、効力を有する。
 (更改の絶対的効力)0438
第417条 一人の連帯債務者と債権者との間に債務の更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
 (相殺の絶対的効力)0439
第418条 一人の連帯債務者が債権者に対して債権を有する場合において、その債務者が相殺したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
 相殺する債権を有する連帯債務者が相殺をしていないときは、その債務者の負担部分に限り、他の連帯債務者は、相殺することができる。
 (免除の絶対的効力)
第419条 一人の連帯債務者に対する債務の免除は、その債務者の負担部分に限り、他の連帯債務者の利益のために効力を有する。
 (混同の絶対的効力)0440
第420条 一人の連帯債務者と債権者との間に混同があったときは、その債務者の負担部分に限り、他の連帯債務者も、義務を免れる。
 (消滅時効の絶対的効力)
第421条 一人の連帯債務者について消滅時効が完成したときは、その負担部分に限り、他の連帯債務者も、義務を免れる。
 (受領遅滞の絶対的効力)
第422条 一人の連帯債務者に対する受領遅滞は、他の連帯債務者に対しても、効力を有する。
 (効力の相対性の原則)0441
第423条 第416条から前条までに規定する事由を除き、一人の連帯債務者に関する事由は、他の連帯債務者に対して効力を有しない。
 (負担部分の平等)
第424条 連帯債務者の負担部分は、平等なものと推定する。
 (出捐債務者の求償権)0442
第425条 一人の連帯債務者が弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、他の連帯債務者の負担部分について求償権を行使することができる。
 前項の求償権は、免責された日以後の法定利息及び避けることができない費用その他の損害の賠償を含む。
 (求償要件としての通知)0443
第426条 一人の連帯債務者が他の連帯債務者に通知しないで弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者が債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分に限り、この事由をもって免責行為をした連帯債務者に対抗することができ、その対抗事由が相殺であるときは、相殺によって消滅すべき債権は、その連帯債務者に移転する。
 一人の連帯債務者が弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得たことを他の連帯債務者に通知しない場合において、他の連帯債務者が善意で債権者に弁済その他の有償の免責行為をしたときは、その連帯債務者は、自己の免責行為の有効であることを主張することができる。
 (償還をする資力のない者の負担部分)0444
第427条 連帯債務者の中に償還する資力のない者があるときは、その債務者の負担部分は、求償権者及び他の資力のある債務者がその負担部分に応じて分担する。ただし、求償権者に過失があるときは、他の連帯債務者に分担を請求することができない。
 前項の場合において、償還する資力のない債務者の負担部分を分担する他の債務者が債権者から連帯の免除を受けたときは、その債務者の分担すべき部分は、債権者の負担とする。
     第4款 保証債務
 (保証債務の内容)0446-01
第428条 保証人は、主たる債務者が履行しない債務を履行する義務を負う.
 保証は、将来の債務についても、することができる。
 (保証の方式)0446-02.03
第428条の2 保証は、その意思が保証人の記名押印又は署名のある書面で表示されることによって、効力を生じる。 ただし、保証の意思が電子的形態によって表示された場合は、効力を有しない。
 保証債務を保証人に不利に変更する場合も、前項と同様とする。
 保証人が保証債務を履行した場合は、その限度において、第1項及び前項の規定による方式の瑕疵を理由として、保証の無効を主張することができない。
 (根保証)0465の2
第428条の3 保証は、不確定な多数の債務についても、することができる。 この場合において、保証する債務の極度額を書面によって定めなければならない。
 前項の場合において、債務の極度額を前条第1項本文の規定による書面によって定めない保証契約は、 効力を有しない。
 (保証債務の範囲)0447
第429条 保証債務は、主たる債務の利息、違約金、損害賠償その他主たる債務に従たる債務を包含する。
 保証人は、その保証債務に関する違約金その他損害賠償の額を予定することができる。
 (目的又は態様上の付従性)0448-01
第430条 保証人の負担が主たる債務の目的又は態様より重いときは、主たる債務の限度に減縮する。
 (保証人の条件)0450
第431条 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、行為能力及び弁済の資力を有する者でなければならない。
 保証人が弁済の資力を欠くに至ったときは、債権者は、保証人の変更を請求することができる。
 債権者が保証人を指名した場合には、前2項の規定は、適用しない。
 (他の担保の供与)0451
第432条 債務者は、他の相当の担保を供することをもって、保証人を立てる義務を免れることができる。
 (保証人と主たる債務者の抗弁権)0457-02
第433条 保証人は、主たる債務者の抗弁をもって、債権者に対抗することができる。
2 主たる債務者の抗弁の放棄は、保証人に対して効力を生じない。
 (保証人と主たる債務者の相殺権)0457-03
第434条 保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって、債権者に対抗することができる。
 (保証人と主たる債務者の取消権等)0457-03
第435条 主たる債務者が債権者に対して取消権又は解除権若しくは解約告知権を有する間は、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
第436条 削除
 (債権者の情報提供義務及び通知義務等)0458の2:0458の3
第436条の2 債権者は、保証契約を締結する場合において、保証契約を締結するかどうか又はその内容に影響を及ぼし得る主たる債務者の債務に関連する信用情報を保有し、又は知っているときは、保証人にその情報を知らせなければならない。 保証契約を更新するときも、また同じ。
 債権者は、保証契約を締結した後に次に掲げる事由がある場合には、遅滞なく、保証人にその事実を知らせなければならない。
 (1) 主たる債務者が元本、利息、違約金、損害賠償又はその他主たる債務に従たる債務を3箇月以上履行しない場合
 (2) 主たる債務者が履行期に履行することができないことをあらかじめ知った場合
 (3) 主たる債務者の債務関連信用情報に重大な変化が生じたことを知った場合
 債権者は、保証人の請求があるときは、主たる債務の内容及びその履行の有無を知らせなければならない。
 債権者が前項の規定による義務に違反して、保証人に損害を負わせた場合には、裁判所は、その内容及び程度等を考慮し、保証債務を軽減し、又は免除することができる。
 (保証人の催告の抗弁及び検索の抗弁)0452~0454
第437条 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、主たる債務者が弁済の資力を有する事実及びその執行が容易であることを証明して、まず主たる債務者に請求すべき旨及びその財産について執行すべき旨を抗弁することができる。ただし、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、この限りでない。
 (催告及び検索の懈怠の効果)0455
第438条 前条の規定による保証人の抗弁にかかわらず、債権者が怠ったために債務者から全部又は一部の弁済を受けることができなかった場合は、債権者が怠らなければ弁済を受けることができた限度において、保証人は、その義務を免れる。
 (共同保証の分別の利益)0456
第439条 数人の保証人が各別の行為により保証債務を負担した場合であっても、第408条の規定を適用する。
 (時効の完成猶予等の保証人に対する効力)0457-01
第440条 主たる債務者に対する時効の完成猶予及び更新は、保証人に対して、その効力を有する。
 (委託を受けた保証人の求償権)0459
第441条 主たる債務者の委託を受けて保証人となった者が過失なく弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務を消滅させたときは、主たる債務者に対して求償権を有する。
 第425条第2項の規定は、前項の場合について準用する。
 (委託を受けた保証人の事前求償権)0460
第442条 主たる債務者の委託を受けて保証人となった者は、次に掲げる場合には、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。
 (1) 保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判を受けたとき。
 (2) 主たる債務者が破産宣告を受けた場合において、債権者が破産財団に加入しないとき。
 (3) 債務の履行期が確定せず、その最長期も確定することができない場合において、保証契約後5年を経過したとき。
 (4) 債務の履行期が到来したとき。
 前項第4号の場合には、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限をもって、保証人に対抗することができない。
 (主たる債務者の免責請求)0461
第443条 前条の規定により主たる債務者が保証人に対して賠償する場合において、主たる債務者は、自己を免責させ、若しくは自己に担保を供すべきことを保証人に請求することができ、又は賠償すべき金額を供託し、担保を供し、若しくは保証人を免責させることによって、その賠償義務を免れることができる。
 (委託を受けない保証人の求償権)0462-01.02
第444条 主たる債務者の委託を受けないで保証人となった者が弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務を消滅させたときは、主たる債務者は、その当時利益を受けた限度において賠償しなければならない。
 主たる債務者の意思に反して保証人となった者が弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務を消滅させたときは、主たる債務者は、現に利益を受けている限度において賠償しなければならない。
 前項の場合において、主たる債務者が求償した日以前に相殺の原因を有していたことを主張したときは、その相殺によって消滅すべき債権は、保証人に移転する。
 (求償要件としての通知)0463-01.03
第445条 保証人が主たる債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務を消滅させた場合において、主たる債務者が債権者に対抗することができる事由を有していたときは、この事由をもって保証人に対抗することができ、その対抗事由が相殺であるときは、相殺によって消滅すべき債権は、保証人に移転する。
 保証人が弁済をし、その他自己の財産をもって免責したことを主たる債務者に通知しない場合において、主たる債務者が善意で債権者に弁済その他有償の免責行為をしたときは、主たる債務者は、自己の免責行為が有効であることを主張することができる。
 (主たる債務者の保証人に対する免責の通知義務)0463-02
第446条 主たる債務者が自己の行為により免責したことをその委託を受けて保証人となった者に通知していない場合において、保証人が善意で債権者に弁済その他有償の免責行為をしたときは、保証人は、自己の免責行為が有効であることを主張することができる。
 (連帯債務又は不可分債務の保証人の求償権)0464
第447条 連帯債務者又は不可分債務者の一人のために保証人となった者は、他の連帯債務者又は他の不可分債務者に対し、その負担部分に限り、求償権を有する。
 (共同保証人間の求償権)0465
第448条 数人の保証人がある場合において、一人の保証人が自己の負担部分を超える弁済をしたときは、第444条の規定を準用する。
 主たる債務が不可分であり、又は各保証人が相互に連帯し、若しくは主たる債務者と連帯して債務を負担した場合において、一人の保証人が自己の負担部分を超える弁済をしたときは、第425条から第427条までの規定を準用する。
    第4節 債権の譲渡
 (債権の譲渡性)0466-01.02
第449条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、債権の性質が譲渡を許さないときは、この限りでない。
 債権は、当事者が反対の意思を表示した場合には、譲渡をすることができない。ただし、その意思表示をもって善意の第三者に対抗することができない。
 (指名債権の譲渡の対抗要件0467
第450条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
 前項の通知及び承諾は、確定日付のある証書によらないときは、債務者以外の第三者に対抗することができない。
 (承諾及び通知の効果)0468
第451条 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由をもって譲受人に対抗することができない。ただし、債務者が債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻すことができ、譲渡人に対して負担した債務があるときはそれが成立しないことを主張することができる。
 譲渡人が譲渡の通知のみをしたときは、債務者は、その通知を受ける時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
 (譲渡の通知と禁反言)
第452条 譲渡人が債務者に債権の譲渡の通知をした場合において、まだ譲渡をしていなかったとき又はその譲渡が無効なときであっても、善意の債務者は、譲受人に対抗することができる事由をもって譲渡人に対抗することができる。
 前項の通知は、譲受人の同意がなければ、撤回することができない。
    第5節 債務の引受け
 (債権者との契約による債務の引受け)0472-01.02
第453条 第三者は、債権者との契約によって債務を引き受けて、債務者の債務を免れさせることができる。ただし、債務の性質が引受けを許さないときは、この限りでない。
 利害関係がない第三者は、債務者の意思に反して債務を引き受けることができない。
 (債務者との契約による債務引受)0472-03
第454条 第三者が債務者との契約によって債務を引き受けた場合は、債権者の承諾によって、その効力を生じる。
 債権者の承諾又は拒絶の相手方は、 債務者又は第三者とする。
 (諾否の催告)
第455条 前条の場合において、第三者又は債務者は、相当な期間を定めて諾否についての確答を債権者に催告することができる。
 債権者がその期間内に確答を発しないときは、拒絶したものとみなす。
 (債務引受の撤回及び変更)
第456条 第三者と債務者との間の契約による債務引受は、債権者の承諾がある時まで、当事者は、これを撤回し、又は変更することができる。
 (債務引受の遡及効
第457条 債権者の債務引受に対する承諾は、別段の意思表示がなければ、債務を引き受けた時に遡及してその効力を生じる。 ただし、第三者の権利を侵害することができない。
 (従前の債務者の抗弁事由)0472の2-01
第458条 引受人は、従前の債務者が抗弁をすることができる事由をもって債権者に対抗することができる。
 (債務引受と保証及び担保の消滅)0472の4-01.03
第459条 従前の債務者の債務に対する保証又は第三者の供した担保は、債務引受により消滅する。ただし、保証人又は第三者が債務引受に同意した場合は、この限りでない。

新私訳:韓国の民法 その7<第279条~第372条>

    第4章 地上権  
 (地上権の内容)0265
第279条 地上権者は、他人の土地において建物その他の工作物又は樹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。  
 (存続期間を定めた地上権)参照:借地借家法03
第280条 契約で地上権の存続期間を定める場合には、その期間は、次に定める期間より短縮することができない。 
 (1) 石造、石灰造、煉瓦造若しくはこれらと類似する堅固な建物又は樹木の所有を目的とするときは、30年
 (2) 前号以外の建物の所有を目的とするときは、15年
 (3) 建物以外の工作物の所有を目的とするときは、5年
 前項各号に定める期間より短い期間を定めたときは、同項各号に定める期間まで延長する 
 (存続期間を定めなかった地上権)0268、参照:借地借家法03
第281条 契約で地上権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、前条第1項各号に定める最短存続期間とする。
 地上権の設定時に工作物の種類及び構造を定めなかったときは、地上権は、前条第1項第2号の建物の所有を目的としたものとみなす。  
 (地上権の譲渡及び土地の賃貸)
第282条 地上権者は、他人にその権利を譲渡し、又はその権利の存続期間内においてその土地を賃貸することができる。   
 (地上権者の更新請求権及び買取請求権)参照:借地借家法05:13
第283条 地上権が消滅した場合において、建物その他の工作物又は樹木が現存していたときは、地上権者は、契約の更新を請求することができる。
 地上権設定者が契約の更新を望まないときは、地上権者は、相当な価額で前項の工作物又は樹木の買取りを請求することができる。 
 (更新と存続期間)参照:借地借家法04
第284条 当事者が契約を更新する場合においては、地上権の存続期間は、更新した日から第280条第1項各号に定める最短存続期間より短縮することができない。ただし、当事者は、これより長い期間を定めることができる。  
 (収去義務及び買受請求権)0269
第285条 地上権が消滅したときは、地上権者は、建物その他の工作物又は樹木を収去して、土地を原状に回復しなければならない。
 前項の場合において、地上権設定者が相当な価額を提供してその工作物又は樹木の買受けを請求したときは、地上権者は、正当な理由なく、これを拒むことができない。
 (地代増減請求権)参照:借地借家法11
第286条 地代が土地に対する租税その他の負担の増減又は地価の変動により相当でなくなったときは、当事者は、その増減を請求することができる。  
 (地上権の消滅請求権)0266→0276
第287条 地上権者が2年以上の地代を支払わないときは、地上権設定者は、地上権の消滅を請求することができる。 
 (地上権の消滅請求と抵当権者に対する通知)
第288条 地上権が抵当権の目的であるとき又はその土地にある建物及び樹木が抵当権の目的になっているときは、前条の規定による請求は、抵当権者に通知した後相当な期間が経過することによって、その効力を生じる。  
 (強行規定参照:借地借家法09:16
第289条 第280条から第287条までの規定に反する契約で地上権者に不利なものは、その効力を生じない。  
 (区分地上権)0269の2
第289条の2 地下又は地上の空間は、上下の範囲を定めて、建物その他の工作物を所有するための地上権の目的とすることができる。この場合において、設定行為で、地上権の行使のために土地の使用を制限することができる。
 前項の規定による区分地上権は、第三者が土地を使用し、又は収益する権利を有する場合であっても、その権利者及びその権利を目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地を使用し、又は収益する権利を有する第三者は、その地上権の行使を妨げてはならない。  
 (準用規定)0267 
第290条 第213条、第214条及び第216条から第244条までの規定は、地上権者間又は地上権者と隣地の所有者との間について準用する。
 第280条から第289条まで及び前項の規定は、第289条の2の規定による区分地上権について準用する。
   第5章 地役権  
 (地役権の内容)0280
第291条 地役権者は、一定の目的のため、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。 
 (付従性)0281
第292条 地役権は、要役地の所有権に付従して移転し、又は要役地についての所有権以外の権利の目的となる。ただし、別段の定めがあるときは、その定めによる。
 地役権は、要役地と分離して譲渡し、又は他の権利の目的とすることができない。 
 (共有関係及び一部譲渡と不可分性)0282 
第293条 土地の共有者の一人は、持分について、その土地のための地役権又はその土地に存する地役権を消滅させることができない。
 土地の分割又は土地の一部の譲渡の場合には、地役権は、要役地の各部のために又はその承役地の各部について存続する。ただし、地役権が土地の一部のみ関するものであるときは、 他の部分については、この限りでない。  
 (地役権の取得時効)0283
第294条 地役権は、継続され、かつ、表現されているものに限り、第245条の規定を準用する。  
 (地役権の取得と不可分性)0284
第295条 共有者の一人が地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。
2 占有による地役権の取得時効の完成猶予は、地役権を行使するすべての共有者についてその事由がなければ、その効力を生じない。  
 (消滅時効の完成猶予及び更新と不可分性)0292
第296条 要役地が数人の共有である場合において、その一人による地役権の消滅時効の完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも効力を有する。  
 (用水地役権)0285
第297条 用水地役権の承役地における水量が要役地及び承役地の需要に比し不足するときは、その需要の程度に応じて、まず家用に供給してから、他の用途に供給しなければならない。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、その定めによる。
 承役地に数個の用水地役権が設定されたときは、後順位の地役権者は、先順位の地役権者の用水を妨げることができない。
 (承役地の所有者の義務及びその承継)0286 
第298条 契約により承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物の設置又は修繕の義務を負担したときは、承役地の所有者の特別承継人も、その義務を負担する。 
 (所有権の委棄による負担の免除)0287
第299条 承役地の所有者は、地役権に必要な部分の土地の所有権を地役権者に委棄し、前条の負担を免れることができる。  
 (工作物の共同使用)0288
第300条 承役地の所有者は、地役権の行使を妨げない範囲内において、地役権者が地役権の行使のために承役地に設置した工作物を使用することができる。
 前項の場合には、承役地の所有者は、受益の程度に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。  
 (準用規定)
第301条 第214条の規定は、地役権について準用する。 
 (特殊の地役権)0294
第302条 ある地域の住民が社団を組織して、各自が他人の土地において草木、野生物及び土砂を採取し、放牧し、又はその他の方法により収益をする権利を有する場合には、慣習によるほか、この章の規定を準用する。  
   第6章 伝貰権 
 (伝貰権の内容) 
第303条 伝貰権者は、伝貰金を支払って他人の不動産を占有してその不動産の用途に従い使用及び収益をし、その不動産の全部について後順位の権利者その他の債権者より優先して伝貰金の弁済を受ける権利を有する。
 農耕地は、伝貰権の目的とすることができない。
 (建物の伝貰権の地上権及び賃借権に対する効力)
第304条 他人の土地にある建物に伝貰権を設定したときは、その伝貰権の効力は、その建物の所有を目的とした地上権又は賃借権に及ぶ。
 前項の場合において、伝貰権設定者は、伝貰権者の同意なく、地上権又は賃借権を消滅させる行為をすることができない。 
 (建物の伝貰権と法定地上権
第305条 敷地及び建物が同一の所有者に属する場合において、建物に伝貰権を設定したときは、その敷地の所有権の特別承継人は、伝貰権設定者に対して地上権を設定したものとみなす。ただし、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
 前項の場合において、敷地の所有者は、他人にその敷地を賃貸し、又はこれを目的とする地上権若しくは伝貰権を設定することができない。  
 (伝貰権の譲渡、賃貸等) 
第306条 伝貰権者は、伝貰権を他人に譲渡し、又は担保に供することができ、その存続期間内においてその目的物を他人に転伝貰し、又は賃貸することができる。ただし、設定行為でこれを禁止したときは、この限りでない。
 (伝貰権の譲渡の効力)
第307条 伝貰権の譲受人は、伝貰権設定者に対して伝貰権の譲渡人と同一の権利義務を有する。 
 (転伝貰等の場合の責任)
第308条 伝貰権の目的物を転伝貰し、又は賃貸した場合においては、伝貰権者は、転伝貰し、又は賃貸しなければ免れることができた不可抗力による損害についても、責任を負担する。 
 (伝貰権者の維持及び修繕の義務)
第309条 伝貰権者は、目的物の現状を維持し、その通常の管理に属する修繕をしなければならない。 
 (伝貰権者の償還請求権)
第310条 伝貰権者が目的物を改良するために支出した金額その他の有益費については、その価額の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出額又は増加額の償還を請求することができる。 
 前項の場合において、裁判所は、所有者の請求により、相当な償還期間を許与することができる。
 (伝貰権の消滅請求)
第311条 伝貰権者が伝貰権設定契約又はその目的物の性質により定まった用法に従い、これを使用し、又は収益しない場合には、伝貰権設定者は、伝貰権の消滅を請求することができる。
 前項の場合においては、伝貰権設定者は、伝貰権者に対して原状の回復又は損害の賠償を請求することができる。 
 (伝貰権の存続期間)
第312条 伝貰権の存続期間は、10年を超えることができない。当事者の約定期間が10年を超えるときは、これを10年に短縮する。
 建物の伝貰権の存続期間を1年未満と定めたときは、これを1年とする。 
 伝貰権の設定は、更新することができる。その期間は、更新した日から 10年を超えることができない。
 建物の伝貰権設定者が、伝貰権の存続期間の満了前6月から1月までの間に伝貰権者に対して更新の拒絶の通知又は条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなかった場合には、その期間が満了した時に従前の伝貰権と同一の条件で更に伝貰権を設定したものとみなす。 この場合において、伝貰権の存続期間ついては、定めがないものとみなす。 
 (伝貰金増減請求権) 
第312条の2 伝貰金が目的不動産に関する租税、公課金その他の負担の増減又は経済事情の変動により相当でなくなったときは、当事者は、将来について、その増減を請求することができる。ただし、増額の場合には、大統領令が定める基準による割合を超えることができない。 
 (伝貰権の消滅通告)
第313条 伝貰権の存続期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも相手方に対して伝貰権の消滅を通告することができ、相手方がこの通告を受けた日から6月を経過した時は、伝貰権は、消滅する。
 (不可抗力による滅失) 
第314条 伝貰権の目的物の全部又は一部が不可抗力により滅失したときは、その滅失した部分の伝貰権は、消滅する。
 前項に規定する一部の滅失の場合において、伝貰権者は、その残存部分では伝貰権の目的を達することができないときは、伝貰権設定者に伝貰権の全部の消滅を通告して、伝貰金の返還を請求することができる。 
 (伝貰権者の損害賠償責任) 
第315条 伝貰権の目的物の全部又は一部が伝貰権者の責めに帰すべき事由により滅失したときは、伝貰権者は、損害を賠償する責任を負う。
 前項の場合において、伝貰権設定者は、伝貰権が消滅した後に伝貰金を損害の賠償に充当し、剰余があるときは返還しなければならず、不足があるときは更に請求することができる。
 (原状回復義務及び買受請求権)
第316条 伝貰権がその存続期間の満了により消滅したときは、伝貰権者は、その目的物を原状に回復しなければならず、その目的物に附属させた物を収去することができる。ただし、伝貰権設定者がその附属物の買受けを請求したときは、伝貰権者は、正当な理由なく拒むことができない。
 前項の場合において、その附属物が伝貰権設定者の同意を得て附属させたものであるときは、 伝貰権者は、伝貰権設定者にその附属物の買受けを請求することができる。その附属物が伝貰権設定者から買い受けたものであるときも、同様とする。  
 (伝貰権の消滅と同時履行) 
第317条 伝貰権が消滅したときは、伝貰権設定者は、伝貰権者からその目的物の引渡し及び伝貰権設定登記の抹消登記に必要な書類の交付を受ける時に、伝貰金を返還しなければならない。
 (伝貰権者の競売請求権) 
第318条 伝貰権設定者が伝貰金の返還を遅滞したときは、伝貰権者は、民事執行法の定めるところにより、伝貰権の目的物の競売を請求することができる。
 (準用規定) 
第319条 第213条、第214条及び第216条から第244条までの規定は、伝貰権者間又は伝貰権者と隣地の所有者及び地上権者との間について準用する。 

    第7章 留置権  
 (留置権の内容)0295
第320条 他人の物又は有価証券を占有している者は、その物又は有価証券に関して生じた債権が弁済期にある場合には、その債権の弁済を受ける時まで、その物又は有価証券を留置する権利を有する。
 前項の規定は、その占有が不法行為による場合には、適用しない。  
 (留置権の不可分性)0296
第321条 留置権者は、債権の全部の弁済を受ける時まで、留置物の全部についてその権利を行使することができる。  
 (競売及び簡易弁済充当)
第322条 留置権者は、債権の弁済を受けるため、留置物を競売することができる。
 正当な理由があるときは、留置権者は、鑑定人の評価により留置物をもって直ちに弁済に充当することを裁判所に請求することができる。この場合において、留置権者は、あらかじめ債務者にその旨を通知しなければならない。  
 (果実収取権)0297
第323条 留置権者は、留置物の果実を収取し、他の債権に先立って、その債権の弁済に充当することができる。ただし、その果実が金銭でないときは、競売しなければならない。 
 前項の果実は、まず債権の利息に充当し、剰余があるときは元本に充当する。 
 (留置権者の善管義務)0298
第324条 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
 留置権者は、債務者の承諾なしに、留置物の使用、貸与又は担保供与をすることができない。ただし、留置物の保存に必要な使用については、この限りでない。
 留置権者が前2項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。 
 (留置権者の償還請求権)0299
第325条 留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還を請求することができる。
 留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、その価額の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増加額の償還を請求することができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、相当の償還期間を許与することができる。  
 (被担保債権の消滅時効0300
第326条 留置権の行使は、債権の消滅時効の進行に影響を及ぼさない。  
 (他の担保の供与による留置権の消滅)0301
第327条 債務者は、相当の担保を供与して、留置権の消滅を請求することができる。  
 (占有の喪失と留置権の消滅)0302
第328条 留置権は、占有の喪失により消滅する。  
   第8章 質権  
    第1節 動産質権  
 (動産質権の内容)0342
第329条 動産質権者は、債権の担保として債務者又は第三者が供与した動産を占有し、かつ、その動産について他の債権者より優先して自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 
 (設定契約の要物性)0344 
第330条 質権の設定は、質権者に目的物を引き渡すことにより、その効力を生じる。 
 (質権の目的物)0343
第331条 質権は、譲渡することができない物を目的とすることができない。 
 (設定者による代理占有の禁止)0345
第332条 質権者は、設定者に質物の占有をさせることができない。
 (動産質権の順位)0355
第333条 数個の債権を担保するために同一の動産について数個の質権を設定したときは、その順位は、設定の先後による。
 (被担保債権の範囲)0346
第334条 質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の瑕疵による損害の賠償の債権を担保する。ただし、別段の定めがあるときは、その定めによる。  
 (留置的効力)0347
第335条 質権者は、前条の債権の弁済を受ける時までは、質物を留置することができる。ただし、自己より優先権を有する債権者に対抗することができない。  
 (転質権)0348
第336条 質権者は、その権利の範囲内において、自己の責任で、質物を転質することができる。この場合においては、転質をしなければ免れることができた不可抗力による損害についても、責任を負担する。  
 (転質の対抗要件
第337条 前条の場合において、質権者が債務者に転質の事実を通知せず、又は債務者がこれを承諾しなければ、転質をもって債務者、保証人、質権設定者及びその承継人に対抗することができない。
 債務者が前項の通知を受け、又は承諾をしたときは、転質権者の同意なく、質権者に債務を弁済しても、これをもって転質権者に対抗することができない。 
 (競売及び簡易弁済充当)0354
第338条 質権者は、債権の弁済を受けるため、質物を競売することができる。
 正当な理由があるときは、質権者は、鑑定人の評価により質物をもって直ちに弁済に充当することを裁判所に請求することができる。この場合においては、質権者は、あらかじめ債務者及び質権設定者に通知しなければならない。  
 (流質契約の禁止)0349
第339条 質権設定者は、債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済に代えて質物の所有権を取得させ、又は法律で定める方法によらないで質物を処分することを約することができない。  
 (質物以外の財産からの弁済)
第340条 質権者は、質物により弁済を受けることができない部分の債権に限り、債務者の他の財産から弁済を受けることができる。
 前項の規定は、質物より先に他の財産について配当を実施すべき場合には、適用しない。ただし、他の債権者は、質権者にその配当金額の供託を請求することができる。 
 (物上保証人の求償権)0351
第341条 他人の債務を担保するための質権の設定者は、その債務を弁済し、又は質権の実行により質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定により、債務者に対する求償権を有する。  
 (物上代位)0350→0304
第342条 質権は、質物の滅失、毀損又は公用徴収により質権設定者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。この場合においては、その支払い又は引渡しの前に差し押えなければならない。 
 (準用規定)0350→0256~0299:0163:0192~0194
第343条 第249条から第251条まで及び第321条から第325条までの規定は、動産質権について準用する。  
 (他の法律による動産質権)
第344条 この節の規定は、他の法律の規定により設定された質権について準用する。  
     第2節 権利質権  
 (権利質権の目的)0362
第345条 質権は、財産権をその目的とすることができる。ただし、不動産の使用又は収益を目的とする権利については、この限りでない。 
 (権利質権の設定方法)
第346条 権利質権の設定は、法律に別段の定めがないときは、その権利の譲渡に係る方法によらなければならない。  
 (設定契約の要物性)0520の17→0520の13
第347条 債権を質権の目的とする場合において、債権証書があるときは、質権の設定は、その証書を質権者に交付することにより、その効力を生じる。 
 (抵当債権に対する質権の付記登記)
第348条 抵当権で担保した債権を質権の目的としたときは、その抵当権の登記に質権の付記登記をすることにより、その効力が抵当権に及ぶ。  
 (指名債権に対する質権の対抗要件0364
第349条 指名債権を目的とする質権の設定は、設定者が第450条の規定により、第三債務者に質権の設定の事実を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。
 第451条の規定は、前項の場合について準用する。  
 (指図債権に対する質権の設定方法)0520の7→0520の2
第350条 指図債権を質権の目的とする質権の設定は、証書に裏書して質権者に交付することにより、その効力を生じる。 
 (無記名債権に対する質権の設定方法)0520の20→0520の13
第351条 無記名債権を目的とする質権の設定は、証書を質権者に交付することにより、その効力を生じる。 
 (質権設定者の権利の処分制限)
第352条 質権設定者は、質権者の同意なく、質権の目的とされる権利を消滅させ、又は質権者の利益を害する変更をすることができない。 
 (質権の目的となった債権の実行方法)0366
第353条 質権者は、質権の目的となった債権を直接に請求することができる。
 債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権の限度において、直接に請求することができる。
 前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期より前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済金額の供託を請求することができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
 債権の目的物が金銭以外の物であるときは、質権者は、その弁済を受けた物について質権を行使することができる。
 (同前)
第354条 質権者は、前条の規定によるほか、民事執行法に定める執行方法により、質権を実行することができる。 
 (準用規定)0362-02→0342_0355
第355条 権利質権については、この節の規定のほか、動産質権に関する規定を準用する。  
   第9章 抵当権 
 (抵当権の内容)0369-01
第356条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者より優先して自己の債権の弁済を受ける権利を有する。   
 (根抵当)0398の2-01:0398の3-01 
第357条 抵当権は、その担保する債務の極度額のみを定めて、債務の確定を将来に保留し、設定することができる。この場合においては、その確定される時までの債務の消滅又は移転は、抵当権に影響を及ぼさない。
 前項の場合においては、債務の利息は、極度額に含まれるものとみなす。
 (抵当権の効力の範囲)0370
第358条 抵当権の効力は、抵当不動産に付合された物及び従物に及ぶ。ただし、法律に特別な規定又は設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。  
 (果実に対する効力)0371
第359条 抵当権の効力は、抵当不動産について差押えがあった後に、抵当権設定者がその不動産から収取した果実又は収取することができる果実に及ぶ。ただし、抵当権者がその不動産に対する所有権、 地上権又は伝貰権を取得した第三者に対して差し押えた事実を通知した後でなければ、これをもって対抗することができない。  
 (被担保債権の範囲)0375
第360条 抵当権は、元本、利息、違約金、債務不履行による損害賠償及び抵当権の実行費用を担保する。ただし、遅延賠償については、元本の履行期日を経過した後の1年分に限り、抵当権を行使することができる。  
 (抵当権の処分の制限)0376
第361条 抵当権は、その担保した債権と分離して、他人に譲渡し、又は他の債権の担保とすることができない。 
 (抵当不動産の補充)
第362条 抵当権設定者の責めに帰すべき事由により抵当物の価額が著しく減少したときは、抵当権者は、抵当権設定者に対し、その原状の回復又は相当の担保の供与を請求することができる。  
 (抵当権者の競売請求権及び買受人)0390
第363条 抵当権者は、その債権の弁済を受けるために、抵当物の競売を請求することができる。
 抵当物の所有権を取得した第三者も、買受人となることができる。
 (第三取得者の弁済)0379
第364条 抵当不動産について所有権、地上権又は伝貰権を取得した第三者は、抵当権者にその不動産で担保された債権を弁済して、抵当権の消滅を請求することができる。
 (抵当地上の建物の競売請求権)0389-01 
第365条 土地を目的に抵当権を設定した後にその設定者がその土地に建物を築造したときは、抵当権者は、土地とともにその建物も競売を請求することができる。ただし、その建物の競売代価については、優先弁済を受ける権利を有しない。
 (法定地上権0388
第366条 抵当物の競売により、土地とその地上の建物が異なる所有者に属した場合には、土地の所有者は、建物の所有者に対して地上権を設定したものとみなす。ただし、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。  
 (第三取得者の費用の償還請求権)0391
第367条 抵当物の第三取得者がその不動産の保存又は改良のために必要費又は有益費を支出したときは、第203条第1項及び第2項の規定により、抵当物の競売代価から優先して償還を受けることができる。 
 (共同抵当と代価の配当及び次順位者の代位)0392 
第368条 同一の債権の担保として数個の不動産に抵当権を設定した場合において、その不動産の競売代価を同時に配当するときは、各不動産の競売代価に応じて、その債権の分担を定める。
 前項の抵当不動産のうち一部の競売代価を先に配当する場合は、その代価からその債権全部の弁済を受けることができる。この場合において、その競売した不動産の次順位の抵当権者は、先順位の抵当権者が同項の規定により他の不動産の競売代価から弁済を受けることができる金額の限度で、先順位者に代位して抵当権を行使することができる。 
 (付従性) 
第369条 抵当権で担保された債権が時効の完成その他の事由により消滅したときは、抵当権も消滅する。  
 (準用規定)0372
第370条 第214条、第321条、第333条、第340条、第341条及び第342条の規定は、抵当権について準用する。  
 (地上権又は伝貰権を目的とする抵当権)0369-02:0398 
第371条 この章の規定は、地上権又は伝貰権を抵当権の目的とする場合について準用する。
 地上権又は伝貰権を目的に抵当権を設定した者は、抵当権者の同意なく、地上権又は伝貰権を消滅させる行為をすることができない。
 (他の法律による抵当権)
第372条 この章の規定は、他の法律により設定された抵当権について準用する。